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1Q(1-3月期)決算速報(現地4/22引け後発表)
イーロン・マスク氏が率いるEV自動車の世界大手。同社は、自動車の製造販売を行う「自動車事業」、自動車に関連する「サービス/その他事業」および蓄電などを手がける「エネルギー/バッテリー事業」を有する。
AI開発でも存在感を発揮。フル・セルフ・ドライビング(FSD:自動運転サポート)では世界の注目を集め、ロボタクシーの事業化を目指す。マスク氏が革命的プロダクツとする人型ロボットの「オプティマス」の発売に期待が高まる。
決算発表後の時間外取引(日本時間9:00時点):250.93ドル(+5.45%)
売上高:193.4億ドル、前年同期比-9.2%(予想213.7億ドル)×市場予想を大幅に下回った
調整後EPS:0.27ドル、前年同期は0.45ドル(予想0.43ドル)×市場予想を大幅に下回った
フリーキャッシュフロー:6.6億ドル、前年同期は-2.53億ドル、前四半期は20.3億ドル(予想10.8億ドル)×市場予想を大幅に下回った
粗利益率:16.3%、前年同期は+17.4%(予想16.1%)×市場予想を下回った
CAPEX(資本的支出):14.9億ドル、前年同期比-46%(予想24.9億ドル)市場予想を大幅に下回った
1Q決算の実績値は売上、調整後EPSともに市場予想を大幅に下回りました。しかし意外にも、引け後の取引で株価は大きく上昇。マスク氏がテスラの経営に再び注力するとのコメントを好感
引け後の時間外取引のチャート

決算のポイント
◆自動車事業
自動車事業売上高:139.7億ドル、前年同期比-20%(予想157.6億ドル)×市場予想を大幅に下回った
自動車販売台数:336,681台、前年同期比-13%(予想370,573台)×市場予想を大幅に下回った
◆サービス・その他事業
同事業売上高:26.4億ドル、前年同期比+15%(予想27.3億ドル)×市場予想を下回った
◆エネルギー事業(Energy Generation & Storage)
同事業売上高:27.3億ドル、前年同期比+67%(予想30.7億ドル)×市場予想を下回った
総電力販売量:10.4ギガ・ワット・アワー、前年同期比154%(予想10.2ギガ・ワット・アワー)〇市場予想をわずかに上回った
◆財務
現金・現金同等物:369.96億ドル、前年同期比+38%(予想166.6億ドル)〇市場予想を大きく上回った
経営陣の主なコメント
(マスクCEO)おそらく5月から、DOGE(政府効率化省)に関わる時間は大幅に減るだろう。トランプ大統領の残りの任期中はコスト削減、不正再発防止に取組むが、週に1〜2日程度になろう。しかし、DOGE設立という主要ミッションが完了した今は、テスラとそれに費やす時間を大幅に増やすつもりだ
テスラは幾度となく危機に陥った。12回ほど債務危機の瀬戸際に立たされたこともある。しかし今回は債務危機に瀕しているわけではない。それに近づいているわけでもない。当社の将来について非常に楽観的だ
テスラの未来は大規模な自動運転(FSD)と、自律型ヒューマノイドロボットにかかっている。テスラはそれらを大規模かつ低コストで製造する能力を有している。実現すればテスラは世界で最も価値のある企業になると信じている
(自動運転に関して)テスラが目指すのは都市固有のソリューションではなく、自動運転の一般的なソリューションだ。いくつかの都市で動作すれば、基本的にその区域内のすべての都市で動作可能だろう。つまり、アメリカのある都市で動作すればアメリカ中で動作可能。同様に、中国でもヨーロッパでも、規制当局の承認があれば動作させることができよう。
テスラは高価なセンサーや特定地域の高精度地図ではなく、テスラが設計した人工知能プログラムとAIチップの活用で実現できる汎用的なソリューションであることがメリットだ
(人型ロボット:オプティマスに関して)開発は順調に進んでいる。年末までに数千台規模でテスラ工場で稼働すると見込んでいる。オプティマスを歴史上どの製品よりも速いペースで拡張することを目指し、5年以内、早ければ4年以内に年間100万台に到達できると確信している
(エネルギー事業に関して)非常に好調。メガ・パックは電力会社が通常よりもはるかに多くのエネルギーを発電することを可能にする。
送電網のエネルギー供給能力を考えると、年間総エネルギー出力は発電所が夜間に30分、あるいは1/4の電力で稼働するのではなく、24時間継続してピーク電力で稼働するほうが発電所のエネルギー出力を倍増可能だ。しかし、そのためには夜間にバッテリーパックなどで充電し、日中に送電網に放電できるようエネルギーをバッファリングする必要がある。
電力網の総発電量を大幅に向上させる可能性に電力会社は気づき始めており、当社のメガパックを大量に購入している。
エネルギー事業、特に定置型エネルギー貯蔵事業は、最終的には年間テラワット規模にまで拡大すると予想している。非常にエキサイティングな数字だ
25年12月期通期の会社計画は2Q決算発表時に再検討する
※メガ・パックは大型蓄電システム テスラ社HP:https://www.tesla.com/ja_jp/megapack
決算を受けたマーケットの反応
マスクCEOが第二次トランプ政権に本格関与してから実質的に初めての決算は、売上高、利益、自動車販売実績など市場予想を大幅に下回りました。市場はある程度は想定していたと思われますが、実績値はかなりの悪化となりました。
テスラは広告宣伝に一切、費用を投じる事なく良好なブランディングの確立に成功しました。しかしマスク氏の「政治活動」が裏目に出た形となり、同社ブランドは棄損されました。フリーキャッシュフローの減少は、今後のAI関連投資にも影響しそうです。
ただし、財務内容は依然良好。マスクCEOの経営への再注力で、負のスパイラルから脱する事が出来るか、革命的製品と位置付ける「オプティマス」などで実績を示せるのか、今四半期以降も目が離せない展開が続きそうです。
Bloombergがまとめたアナリストの目標株価平均:311.35ドル
同、アナリスト・レーティングは5段階評価の3.62
同、相関チャート上位の同業はルーシッド・グループ(LCID)、フォード(F)、ゼネラル・モーターズ(GM)
最低投資金額:約33,800円(4/22終値、1ドル142円換算)