1Q(2-4月期)決算速報(現地5/22引け後発表)
同社はAIコンピューティングの世界トップ企業の一社。ChatGPTなど革命的なプラットフォームがサービスを開始するなかGAFAを筆頭に企業や各国政府がこぞってAI化に取組む。同社は半導体開発やAI向けのソリューションで業界をリード。米国上場の株式時価総額ではマイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)に次ぐ3位となり、大きな存在感を放っています。
●決算発表後の時間外取引(日本時間9:00時点):1,007.00ドル(+6.06%)
●売上高:260.4億ドル、前四半期は221.0億ドル(予想246.9億ドル)〇市場予想を大きく上回った
●調整後EPS:6.12ドル、前四半期は5.16ドル(予想5.65ドル)〇市場予想を大きく上回った
●調整後粗利益率:78.9%、前四半期は76.7%(予想77.0%)〇市場予想を上回った
●調整後営業経費:25.0億ドル、前四半期は22.1億ドル(予想25.1億ドル)市場予想とほぼ一致した
●5-7月期売上高見通し:280億ドル±2%(予想268.2億ドル)〇市場予想を大きく上回った
●5-7月期調整後粗利益率見通し:75~76%または75.5%±50bps(予想75.6%)△中間値が市場予想とほぼ一致した
好調な業績、見通しに加えて1対10の株式分割と大幅増配(四半期配当を150%増の1株当たり10セント)を好感し、引け後の取引で株価は約6%上昇、1,000ドルの大台に乗せる場面も見られた。
引け後の時間外取引のチャート
決算のポイント
●データセンター向け売上高:226億ドル、前四半期は184.0億ドル(予想211.3億ドル)〇市場予想を上回った
●ゲーム向け売上高:26億ドル、前四半期は29億ドル(予想26.2億ドル)△市場予想とほぼ一致した
●プロフェッショナル・ビジュアライゼーション売上高:4.27億ドル、前四半期は4.63億ドル(予想4.79億ドル)×市場予想を下回った
●オートモーティブ売上高:3.29億ドル、前四半期は2.81億ドル(予想2.92億ドル)〇市場予想を上回った
●R&D(研究開発)費用:27.2億ドル(予想27.3億ドル)市場予想とほぼ一致した
●フリーキャッシュフロー:149.4億ドル、前四半期は112.2億ドル(予想122.9億ドル)〇市場予想を上回った
●1対10の株式分割を発表
●四半期配当を1株当たり4セントから10セントに増配
●次世代チップ・プラットフォーム「ブラックウェル*」は現在、フル生産体制にある
*ブラックウェルは2080 億個のトランジスタを搭載するGPU 。コストとエネルギー消費を従来品の 25 分の 1 に抑え、数兆パラメータの大規模言語モデルによるリアルタイム生成 AI を構築/実行可能となる。2年前に発売された「Hopper」の後継型。アマゾンAWS、グーグル・クラウド、マイクロソフト・アジュールや政府向けのソブリン・クラウドなどクラウド・サービス・プロバイダー向けに提供を見込む。
経営陣の主なコメント
●1Qの売上高は 260 億ドルと記録的な四半期となり、前四半期比で18%増、前年同期比で262%増。会社見通しの240 億ドルを大きく上回った
●データセンター売上は前年比 427%増で過去最高。「Hopper」 GPUのコンピューティング・プラットフォームに対する強い需要が引張った。企業向け、特に消費者向けネット企業のすべての顧客層中心となった
●パブリック・クラウド・プロバイダーにとって当社チップはコスト・パフォ―マンスに優れる。OpenAI、アンスロピック、コヒア、ディープマインド、メタ・プラットフォームズなどの大手LLM( 大規模言語モデル)を開発する企業が、クラウド上で当社製品によりAIプラットフォームを構築している。また、テスラのAIトレーニングでは35,000基のH100 GPUの拡張をサポートした
●テスラの最新自動運転ソフトウェアである「 FSD バージョン12」 の画期的なパフォーマンス実現を支援。自動運転機能の大幅な進化に貢献。自動車業界全体で、エヌビディアAIインフラが成長のコアとなろう。今後、クルマ本体とクラウドの両方で数十億ドル規模の売上を見込む
●メタ・プラットフォームズは24,000基の「H100GPU」クラスターでトレーニングされた最新の大規模言語モデルである「Llama 3」を発表。フェイスブック、インスタグラム、ワッツアップやメッセンジャーなどメタのプラットフォーム上で利用できるAIの原動力となった。「Llama 3」はオープン・ソース(一般公開)であり、業界全体にAI開発を波及させている
●世界中の様々な国家、政府が「ソブリン AI」 に投資している。ソブリン AI とは独自のインフラストラクチャ、データ、労働力、ビジネス ネットワークを使用しAIを活用する国家インフラと言えよう
●日本を例にとればKDDI、さくらインターネット、ソフトバンクなどの主要なデジタル・インフラ企業が7.4億ドル(約1,200億円)以上を投資し国家主導のAI インフラを構築予定
●「ブラックウェル」は「H100」よりも最大 4 倍高速なトレーニングと30 倍高速な推論を実現。兆規模のパラメータの大規模言語モデルでリアルタイム生成 AI を可能にする。今後は「ブラックウェル」の売上が成長に貢献しよう
決算を受けたマーケットの反応
市場予想を上回る決算が「あたり前」かのようなエヌビディア。今回発表の1Q決算と2Q見通しも良好、売上高、利益の1Q実績値、2Q売上高会社予想とも市場予想を上回った。業績内容ではデータ・センター向けが好調。メタ・プラットフォームズの「Llama3」やテスラのFSDに対する貢献など実績が目を引く。また自動車向けの売上高に成長の兆しが見えていることは次の成長の柱として期待大と言えよう。
株主還元を重視する同社は四半期配当の大幅な増配を発表。6月には1対10の株式分割も行う予定。分割後は再び100ドル前後で投資可能(5/22終値基準、約16万円)となり同社株式購入のハードルが低下するのは朗報と言えよう。国家AIインフラなど未開の成長分野、自動車向けなどの事業内容や経営陣の見通しも明るく、株価の上昇も期待できそうだ。
Bloombergがまとめたアナリストの目標株価平均:1,056.52ドル
同、アナリスト・レーティングは5段階評価の4.76
同、相関チャート上位の同業はアドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)、ブロードコム(AVGO)、マーベル・テクノロジー(MRVL)
最低投資金額:約149,000円(5/22終値、1ドル156.5円換算)