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5/18(水)の米国株式市場は、S&P500指数が前日比-4.0%、NYダウが同-3.6%、ナスダック指数が同-4.7%と全面的な大幅安となりました。S&P500指数の終値は3,923.68ポイントで、5/12(木)に付けた終値ベースの安値3,930.08ポイントを下回って、年初来の安値を更新しています。
大幅反落の要因は大手小売企業の2-4月期決算が市場予想を下回り、インフレが企業業績に打撃を与えていることが表面化したことです。
5/18(水)に2-4月期決算を発表したターゲット(TGT)は商品の仕入れ価格と物流費の上昇を理由に通期の営業利益率の見通しを引き下げ、原油高による物流費の上昇で10億ドルの追加の費用増を見込んでいることを明らかにしました。
5/17(火)に四半期決算を発表したウォルマート(WMT)は、2-4月期の実績利益が市場予想を下回り、人件費上昇、原油高、食品の仕入れ価格上昇を理由に通期の利益見通しを下方修正しました。
これら2社の決算がコストコホールセール(COST)やダラーゼネラル(DG)など同業他社の株価にも波及、米国の小売銘柄からなるSPDR S&P500小売ETF(XRT)は一時前日比−9.3%、終値で前日比−8.3%に急落しました。
このような動きに対して市場全体のショックが大きくなった背景として、(1)小売大手の一角は相場下落の中で少し前までは「セーフヘブン銘柄」として物色される動きがあった、(2)1-3月期の決算発表を経て横ばいとなっていたS&P500指数の予想EPSが上方修正基調に戻れるかどうかについて大手小売の決算が注目されていた中(5/16(月)付アメリカNOW!を参照)、「利益リセッション」を想起させる結果となった、があげられます。
また、食品・日用品の需要が堅調な一方、一般消費財の需要が伸びない傾向がみられ、パンデミック下で消費がサービスからモノにシフトした反動が出ている可能性、さらにこれが個人消費の低迷を要因とする経済のリセッションにつながる可能性を懸念した向きもあったとみられます。
今週の週前半には、4月小売売上高が前月比0.9%増(市場予想は同1.0%増)、4月鉱工業生産が前月比1.1%増(市場予想は同0.5%増)となって、株式市場には楽観ムード醸成されていましたが、これが完全に否定される形となりました。
堅調なマクロ経済指標を背景とした「積極的な利上げ」と「利益リセッションの可能性」(いまのことろ、まだ、経済のリセッションではないと思います)という組み合わせが市場の急落を招いたと考えられます。
S&P500指数の予想EPSは、年初来上昇基調となっていましたが、1-3月期決算発表を機に横ばい圏での推移となっています(図表1)。企業利益のトレンドが上昇基調に戻ることを確認できるまでは、相場は不安定な状況が続きやすいと想定されます。
図表1 S&P500指数の予想EPSは上方修正基調に戻れるか
注:最後のデータは5/17(火)。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成