先週は年末商戦が好調とのデータを受けて12/27(月)に大きく上昇、その後は弱含みのもみ合いとなりました。今週は12月の雇用統計と企業景況感などの重要経済指標、FOMC議事要旨(12月14日、15日開催分)、家電の見本市CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)、などが注目されます。
2022年の注目投資テーマ5つから、それぞれ代表銘柄として、アクセンチュア A(ACN)、ブッキング ホールディングス(BKNG)、ユナイテッド レンタルズ(URI)、クアルコム(QCOM)、ゼネラル モーターズ(GM)を選んで今週の5銘柄といたします。先週号の5銘柄の再掲で、詳しくは本レポートの12/27日号をご参照ください。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(1/3(月)終値のデータによります)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
一般消費財・サービス | 2.3% | 5.1% | 15.1% |
エネルギー | 1.9% | 4.9% | 6.6% |
生活必需品 | 1.4% | 8.0% | 12.3% |
公益事業 | 1.2% | 5.8% | 11.0% |
金融 | 0.8% | 4.3% | 3.7% |
不動産 | 0.6% | 7.7% | 14.5% |
S&P500 | 0.1% | 5.7% | 10.1% |
資本財・サービス | -0.1% | 2.9% | 5.9% |
素材 | -0.3% | 5.2% | 11.3% |
情報技術 | -0.7% | 6.6% | 16.0% |
ヘルスケア | -0.9% | 7.3% | 9.6% |
コミュニケーションサービス | -1.1% | 4.0% | -1.4% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
テスラ | 9.7% |
ゼネラル・モーターズ(GM) | 6.5% |
シュルンベルジェ | 6.3% |
フォード・モーター | 4.7% |
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | 4.6% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ファイザー | -4.3% |
ダナハー | -3.6% |
エヌビディア | -2.7% |
サーモフィッシャーサイエンティフィック | -2.6% |
ネットフリックス | -2.6% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
12/27(月)はマスターカードが12/26(日)に発表した11/1(月)〜12/24(金)の利用状況で、米年末商戦の小売売上高は前年比8.5%増加したとして好感され、S&P500指数は4,700ポイント強の「壁」を上抜けました。
一方、12/28(火)以降は年末の薄商いの中、やや弱含みのもみ合いとなりました。米疾病対策センター(CDC)が新型コロナに感染した無症状の国民に対する隔離推奨期間を従来の10日間から5日間に短縮したことや新規失業保険申請件数の低下などポジティブ材料があった一方、バリュエーションの高さを気にする向きの売りが増えたとみられます。
S&P500指数は週間で0.9%、NYダウは1.1%の上昇の一方、ナスダック指数は0.05%の下落となりました。2021年の年間では、それぞれ26.9%、18.7%、21.4%の上昇でした。
業種指数(1/3(月)までの5営業日)では、テスラを始めとする自動車株の上昇を受けて「一般消費財・サービス」がトップ、「エネルギー」の上昇は、1/4(火)に開催されるOPECプラス会合で協調減産の縮小ペース維持が決定される公算が大きいことをにらんでの動きとみられます。
個別銘柄では、テスラ(TSLA)、ゼネラル モーターズ(GM)、フォード モーター(F)など自動車株の上昇が目立ちました。株式市場のEVに対する関心の高さがうかがえます。テスラはマスクCEOによる保有株式の売却が一段落し、1/2(日)には10-12月期の販売台数が前年同期比71%増の30万8,600台で、四半期ベースで過去最高を更新したことが好感されています。
一方、4.3%の下落となったファイザー(PFE)は、1/3(月)に米FDAが新型コロナワクチンの3回目接種許可を12〜15歳に拡大したことが伝えられましたが、好材料は一旦出尽くしたと捉えられて、利食いが嵩んだとみられます。
経済指標では、中国の12月製造業PMIが前月の50.1から50.3へ、非製造業PMIが前月の52.3から52.7へいずれも改善となり、中国経済に対する懸念は一旦和らいでいるとみられます。
今週の米国株式市場
12月の雇用統計と企業景況感などの重要経済指標、FOMC議事要旨(12月14日、15日開催分)、家電の見本市CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)、などが注目されます。なお、1/3(月)はアップルやテスラの上昇がけん引してS&P500指数は終値ベースで最高値を更新しました。米10年国債利回りも金融市場の楽観を反映して1.6%台に乗せています。
12月の雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比42.4万人増と、11月の同21万人増から改善の予想です。ただし、労働省の雇用統計は、「季節調整のゆがみ」によってこのところ指標性が低下していると見られます。労働市場の基調を把握するには、季節調整がかかっていないADP雇用統計も併せて判断する必要があるでしょう。同統計の12月分は前月比42.0万人増(11月は同53.4万人増)の予想となっています。
一方、12月のISM製造業景気指数は前月の61.1から60.0へ、ISM非製造業景気指数は前月の69.1から67.0へ、いずれも悪化の予想です。オミクロン株による新型コロナ感染拡大の影響が企業景況感に表れる見込みです。
前回のFOMCでは、テーパリング(FRBによる債券購入額の段階的縮小)を速めて3月に終了することが決められました。市場ではテーパリングの終了後の、どの段階で利上げが始まるのかを注目しており、今回の議事要旨ではそのヒントを探ることになりそうです。市場では、利上げは6月以降に始まるとの見方が有力ですが、テーパリング終了直後に始まるとの見方もあるようです。
CESはラスベガスで開催される電子機器の見本市で、最新の市場トレンドを示すものとして株式市場の注目も高いイベントです。ただし、直前のオミクロン株の感染拡大によってアマゾンドットコム、アルファベット、メタプラットフォームズ、AMDなどが対面での参加を見合わせると発表、会期も1日短縮されるなど、やや盛り上がりに欠ける展開となっています。
基調講演は、クアルコムとGMのCEOなどが行います。中心テーマとして、デジタルヘルス、フードテック、オートモーティブテック、NFT、ゲーム、スマートホームなどが挙げられています。
経済指標では、主要なものは上記の通りで、企業イベントでは、ウォルグリーンブーツアライアンス、コンステレーションブランズなどの決算発表が予定されています。
2022年相場の展望
米主要証券会社による2022年末のS&P500指数の見通しは図表3の通りです。年間上昇率は、6社のうち最も高い予想で9.1%、3社が5%以下、6社平均で1.8%となるなど、例年に比べてかなり抑制的です。
新型コロナのパンデミックで落ち込んだファンダメンタルズの回復はかなり進み、そのファンダメンタルズに対する株式市場の評価も進んだというのが、主要な市場関係者の一致した見方と思われます。このため、株式市場の上昇率は、2021年の27%、2020年の16%を下回る見通しとなっています。
最も高い5,200ポイント(年間上昇率9.1%相当)を予想するクレディスイスは、堅調な経済と自社株買いの増加を理由にあげています。一方、最も低い4,400ポイント(年間下落率7.7%相当)を予想するモルガンスタンレーは、インフレの持続とPERのピークアウトを勘案しています。
筆者は5,100ポイントを予想しています。基本的な考え方は以下の通りです。
・新型コロナの克服によって企業業績の回復は続き、まだ上方修正される余地は残っている。ただし、昨年のような大幅な上方修正となる可能性は小さい。経済面では、パンデミックに対する政策対応で押し上げられていたモノの消費は不安定になりやすいと考えられる。
・インフレはパンデミックによる影響が収まるとともに年央までにピークアウトすると想定、FRBの利上げ開始を受けて長期金利は徐々に上昇する。
・PERはパンデミックによる異常事態を勘案して昨年まで20倍を超える水準が許容されていたが、今年は経済の正常化を受けて長期的なレンジである15〜19倍に回帰する途上にあると考えられる。このため、20倍前後から20倍割れに向かって徐々に低下すると想定される。
2022年の主要イベントは図表4の通りです。最も重要なイベントは、11月に実施される米国の中間選挙で、連邦議会で上院の約3分の1にあたる34議席、下院の全議席(435議席)が争われます。
過去の経験では、政権政党が議席を減らすことが多く、2000年以降5回の中間選挙で、4回は政権政党が議席を減らしています。増えたのは同時多発テロ後に行われた2002年のみで、これは特殊な環境下での事例と言えるでしょう。
バイデン大統領の支持率が42.9%、不支持率が53.5%となっていることもあって(リアル・クリア・ポリテイクス、1/3(月)時点)、上院、下院とも共和党が過半数を奪取する可能性がありそうです。
ただし、市場は中間選挙で与党が不利であることを認識していますし、バイデン政権はインフラ投資法案を成立させ、成立が不透明となっている大型歳出法案も中間選挙までには決着が付いていると考えられますので、内政面の大きな仕事は済んでいると見込まれます。
このため、中間選挙が株式市場に大きな影響を与える可能性は小さい、というのが現時点での結論です。
今週の5銘柄
2022年の注目銘柄をご紹介した、本レポートの12/27日号をご参照ください。
図表3 米主要証券会社の2022年末のS&P500指数見通し
社名 | S&P500指数予想 (ポイント) |
年間上昇率 (%) |
クレディスイス | 5,200 | 9.1 |
ゴールドマンサックス | 5,100 | 7.0 |
JPモルガンチェース | 5,050 | 6.0 |
UBS | 4,850 | 1.8 |
2021年末水準 | 4,766 | - |
バンクオブアメリカ | 4,600 | -3.5 |
モルガンスタンレー | 4,400 | -7.7 |
各社平均 | 4,852 | 1.8 |
※各種報道をもとにSBI証券が作成
図表4 2022年の主要イベント
1月 | 1日 RCEP(地域的な包括的経済連携)協定が発効 |
31日 中国旧正月休暇(〜2月6日) | |
2月 | 4日 中国・北京で冬季五輪開催(〜20日) |
3月 | 5日 中国・全国人民代表大会 |
9日 韓国大統領選挙 | |
27日 香港行政長官選挙 | |
4月 | 10日 仏大統領選挙(第1回) |
24日 同(第2回) | |
5月 | |
6月 | 11日 G7サミット(英国、〜13日) |
7月 | 日本参議院議員選挙 |
8月 | ジャクソンホール会議(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム) |
秋 | 中国共産党大会 |
9月 | 29日 日中国交正常化50周年 |
10月 | 2日 ブラジル総選挙(大統領を含む) |
30日 G20サミット(インドネシア・バリ島、〜31日) | |
11月 | 7日 COP27開催(エジプト、〜11月18日) |
8日 米中間選挙(上院は約1/3議席、下院は全議席) | |
21日 FIFAワールドカップ開催(カタール、〜12月18日) |
※各種報道をもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
3(月) | ||
4(火) | ・財新中国製造業PMI(12月) ・OPECプラス会合 ・米自動車販売台数(12月) ・米ISM製造業景気指数(12月) ・米求人労働異動調査(11月) |
|
5(水) | ・米ADP雇用統計(12月) ・FOMC議事要旨(12月14日、15日開催分) |
・CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー) (ラスベガス、8日まで) |
6(木) | ・米新規失業保険申請件数(1月1日に終わる週) ・米製造業受注(11月) ・米ISM非製造業景気指数(12月) |
ウォルグリーンブーツアライアンス、コンステレーションブランズ |
7(金) | ・ユーロ圏小売売上高(11月) ・ユーロ圏景況感(12月) ・米雇用統計(12月) |
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10(月) | ・ユーロ圏失業率(11月) | |
11(火) | ・米NFIB中小企業楽観指数(12月) | |
12(水) | ・ユーロ圏鉱工業生産(11月) ・米消費者物価指数(12月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
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13(木) | ・米生産者物価指数(12月) ・米新規失業保険申請件数(1月8日に終わる週) |
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14(金) | ・米小売売上高(12月) ・米輸入物価指数(12月) ・米鉱工業生産(12月) ・米ミシガン大学消費者マインド(1月、速報値) |
台湾セミコンダクター、デルタ航空 JPモルガンチェース、ウェルズファーゴ、シティグループ |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成