先週は欧米でのCOVID-19感染者数の再拡大や追加経済対策に対する期待の低下に加え、大統領選挙に対する警戒から大幅安となりました。今週は11/3(火)の米大統領選挙、米国でのCOVID-19感染者数の再拡大と行動制限の導入のほか、ISM製造業・非製造業景気指数、雇用統計、FOMC(米公開市場委員会)など経済指標・経済イベントも注目されます。
今回は前週に好決算を発表した銘柄から、アルファベット A(GOOGL)、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)、ツイッター(TWTR)、 アイデックス ラボラトリーズ(IDXX)、TE コネクティビティ(TEL)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
公益事業 | -3.7% | 2.8% | 2.5% |
コミュニケーション・サービス | -3.9% | 1.2% | 2.5% |
不動産 | -4.2% | -6.4% | -5.9% |
素材 | -4.3% | -0.2% | 4.5% |
生活必需品 | -4.8% | -2.9% | -0.4% |
金融 | -5.6% | -2.0% | -0.7% |
S&P500指数 | -5.6% | -2.8% | -0.7% |
ヘルスケア | -5.7% | -2.5% | -3.6% |
エネルギー | -5.7% | -2.6% | -20.3% |
一般消費財・サービス | -6.2% | -3.4% | 2.3% |
情報技術 | -6.5% | -3.6% | 0.3% |
資本財・サービス | -6.5% | -2.3% | 5.8% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
チャーター・コミュニケーションズ | 1.8% |
アッヴィ | 0.9% |
コルゲート・パルモリーブ | -0.6% |
デューク・エナジー | -0.7% |
アルファベット | -1.0% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
ボーイング | -13.7% |
レイセオン・テクノロジーズ | -13.2% |
マスターカード | -12.4% |
コノコフィリップス | -12.0% |
ブッキング・ホールディングス | -11.0% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
先週は欧州でのCOVID-19感染者の急増と行動制限の再導入、米国で追加経済対策の選挙前合意への期待がしぼんだことがネガティブに効いたうえ、大統領選挙投票日を控えてリスク資産を切り詰める動きも大幅安に影響した可能性がありそうです。7-9月期決算は市場予想を上回って推移していますが、マクロ的な先行き不透明感のほうが凌駕しました。S&P500指数は、26日(月)に1.9%、28日(水)に3.5%の下落となりました。
29日(木)引け後に発表されたGAFAの決算は、いずれも売上・EPSとも市場予想を上回りました(図表3)。しかし、30日(金)の株価はクラウド事業の分離開示の意向が好感されたとみられるアルファベットが3.8%上昇したのみで、フェイスブックが6.3%、アップルが5.6%、アマゾンドットコムが5.5%と大幅な下落となっています。S&P500指数は週間で5.6%の下落でした。10月月間では2.8%の下落で、4月からの連続上昇は6ヵ月で途切れています。
業種指数では、全業種とも比較的大きい下落となりました。配当利回りが高くディフェンシブな性格をもつ「公益事業」「コミュニケーションサービス」「不動産」などの値下がりが相対的に小さくなっています。
個別銘柄では、ボーイング(BA)の下落が大きくなっています。7-9月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回りましたが、4月に発表した1.6万人に加えて新たに1.4万人の人員削減を発表したことで、航空需要の回復の鈍さが嫌気されたとみられます。
経済指標では、米国7-9月期実質GDPが前期比年率33.1%増と、パンデミックによって落ち込んだ4-6月期の同31.4%減から大幅な回復、市場予想の同32.0%増も上回りました。一方、10月のコンファレンスボード消費者信頼感は前月の101.8から100.9へ若干の悪化となりました。
今週の米国株式市場
今週は11/3(火)の米大統領選挙、米国でのCOVID-19感染者数の再拡大と行動制限の導入のほか、ISM製造業・非製造業景気指数、雇用統計、FOMCなど経済指標・経済イベントも注目されます。
米大統領選挙への警戒はありますが、先週に前倒しで織り込んだ可能性があり、結果が遅延するといっても最大2ヵ月余りと一時的ではあるので、下がってもS&P500指数で3,200ポイント(21年予想EPSに対してPER19.6倍)はキープできるのではないかと期待されます。もし、これを割り込むようなことがあれば、S&P500指数は「ダブルトップ」の完成で形が悪くなります。
米大統領選挙・議会選挙結果による相場インパクトに関する想定は、当レポートの先週号に掲載しました。要約すると、バイデン大統領で上院も民主党過半なら株式相場にプラス、バイデン大統領で上院は共和党過半維持なら株式相場にマイナス、トランプ大統領なら、株式相場にプラスとしました。可能性が高いと考えられている「結果判明の遅延」は、郵便投票の集計が原因なら若干のマイナス、法廷闘争にエスカレートする場合はマイナスが大きくなる可能性もあります。
米国のCOVID-19新規感染者数は、10/30(金)に10万人と過去最多を更新し、増加傾向が続いています。増加スピードは欧州ほどではないものの、行動制限を再導入する地域も増えています。再び経済活動への影響が懸念され、注視が必要な状況です。
7-9月期の決算発表は好調に推移しています。10/30(金)までにS&P500指数採用企業のうち64%が発表済みで、7-9月期のEPSは前年同期比9.8%減(発表済み企業の実績と未発表企業の予想の混合)となる見込みです。9月末時点の予想は同21.0%減でしたので、発表した多くの企業が市場予想を上回るEPSを記録していることになります。
経済指標では、11/2(月)に米国の10月ISM製造業景気指数(前月の55.4から55.8に改善の予想)、11/4(水)に米国の10月ADP雇用統計(前月比65万人増の予想)、10月ISM非製造業景気指数(前月の57.8から57.5に悪化の予想)、11/6(金)に米国の10月雇用統計(非農業部門雇用者数は前月比60万人増の予想)、などの発表が予定されています。
企業決算では、ペイパルホールディングス、エスティローダー、エマソンエレクトリック、クアルコム、アルベマール、ウーバーテクノロジーズ、スクエア、ゼネラルモーターズなどの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は前週に7-9月期決算を発表したS&P500指数採用銘柄から好決算を発表したものをご紹介いたします。
スクリーニングの条件は、(1)売上の予想乖離5%以上、EPSの予想乖離10%以上、(2)売上の前年同期比-10%以上、(3)時価総額300億ドル以上です。これらの条件を満たす銘柄を図表4にリストアップしています。
ここからアルファベット A(GOOGL)、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)、ツイッター(TWTR)?、アイデックス ラボラトリーズ(IDXX)、TE コネクティビティ(TEL)を選んでご紹介いたします。
図表3 GAFAの7-9月期決算概要
7-9月期 | 4-6月期 | |||||
売上 前年同期比 (%) |
EPS 前年同期比 (%) |
売上 予想乖離 (%) |
EPS 予想乖離 (%) |
売上 前年同期比 (%) |
EPS 前年同期比 (%) |
|
アルファベット | 15.1 | 41.5 | 8.0 | 44.5 | -0.3 | -26.8 |
アマゾン | 37.4 | 192.4 | 4.4 | 70.1 | 40.2 | 97.3 |
フェイスブック | 21.6 | 13.2 | 8.9 | 26.0 | 10.7 | -9.6 |
アップル | 1.0 | -3.6 | 2.0 | 5.0 | 10.9 | 18.4 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 先週発表の好決算銘柄スクリーニング(S&P500指数採用企業対象)
銘柄名(コード) | 予想乖離(%) | 前年同期比(%) | 時価総額 (億ドル) |
||
売上 | EPS | 売上 | EPS | ||
アルファベット A(GOOGL) | 8.0 | 44.5 | 15.1 | 41.5 | 10,949 |
フェイスブック A(FB) | 8.9 | 26.0 | 21.6 | 13.2 | 7,495 |
アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD) | 9.4 | 15.8 | 55.5 | 127.8 | 905 |
S&P グローバル(SPGI) | 5.4 | 11.2 | 9.3 | 15.9 | 776 |
ストライカー(SYK) | 10.5 | 54.5 | 4.2 | 12.0 | 759 |
オートマチック データ プロセシング(ADP) | 5.9 | 43.9 | -0.7 | 5.2 | 678 |
ムーディーズ(MCO) | 10.4 | 31.2 | 9.3 | 25.1 | 494 |
ボストン サイエンティフィック(BSX) | 5.3 | 48.0 | -1.8 | -5.1 | 490 |
バクスター インターナショナル(BAX) | 5.1 | 14.4 | 4.2 | 16.0 | 396 |
アイデックス ラボラトリーズ(IDXX) | 8.1 | 36.4 | 19.2 | 55.2 | 361 |
ツイッター(TWTR) | 21.6 | 285.2 | 13.7 | 11.8 | 327 |
TE コネクティビティ(TEL) | 12.8 | 33.8 | -1.2 | -12.8 | 320 |
オライリー オートモーティブ(ORLY) | 6.3 | 11.5 | 20.3 | 39.1 | 317 |
デクスコム(DXCM) | 5.1 | 45.6 | 26.4 | 44.6 | 307 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (10/30) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
アルファベット A(GOOGL) | 1616.11ドル | 23.7 | 【クラウド事業を10-12月期から分別開示へ】 ・COVID-19パンデミックの影響を受けた4-6月期から経済再開の動きを受けて顧客の広告出稿が回復、7-9月期のEPSは前年同期比42%増、市場予想を45%上回りました。また、10-12月期から成長をけん引しているクラウド事業を独立部門として売上・営業利益を開示するとしたことも好感されたとみられます。アマゾン、マイクロソフトに比べて参入が遅かったことから、クラウドのグローバル市場においてポジションを確保するために投資を拡大すると予想されています。 ・7-9月期決算は、売上が前年同期比15%増と、4-6月期の同0%から大幅に改善しました。経済活動の急激な低下を受けて4-6月期には広告主が出稿を抑えましたが、経済活動の再開と巣ごもり消費による消費者のネットメディアへの関与の高まりを受けて出稿を増やしたと考えられます。「グーグル検索その他」の売上が前年同期比7%増に回復したほか、「YouTube」が同32%増、クラウドが同45%増と全体の成長をけん引しています。 | ||
アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD) | 75.29ドル | 42.1 | 【インテルからシェアを奪って売上拡大】 ・PCやサーバーに使われるCPU(中央演算処理装置)やゲーム機やPCに使われるGPU(画像の表示を補助する)を主力とする半導体メーカーです。回路線幅7ナノメートルのCPUをインテルに先駆けて投入したことでシェアを奪って売上が拡大しており、20年は40%程度、21年も25%程度の売上成長が見込まれています。インテルの回路線幅7ナノメートルCPUの投入が22年末から23年に遅れる見通しのため、引き続き高い成長が期待されています。プログラマブル半導体が主力のザイリンクス買収は、製品ポートフォリオの幅を広げることができます。 ・7-9月期決算の売上は、コンピューティング&グラフィックス部門(CPUとGPU)でPC向けCPUの「Ryzen」がけん引して売上が前年同期比31%増、エンタープライズ、組み込み、セミカスタム部門ではゲームコンソール向けとサーバー向けCPU「EPYC」がけん引して同116%増、全体で同56%増と極めて好調でした。粗利率も前年同期の43%から44%に改善して営業利益は同2.4倍となっています。10-12月期の売上ガイダンスは前年同期比36〜46%増相当の29〜31億ドルとしています。 | ||
ツイッター(TWTR) | 41.36ドル | 23.2 | 【ユーザー指標が予想を下回って株価は急落したが・・・】 ・10/29(木)の7-9月期決算発表で、同社が最も重視している経営指標である、マネタイザブル・デイリー・アクティブ・ユーセージが前年同期比29%増の187百万人と市場予想の195百万人を下回ったことを受けて10/30(金)の株価は21%下落しました。巣ごもり消費の影響がかく乱要因になったとみられますが、前年同期比のユーザー数の増加は好調であり、21年に各種のイベント開催が復活すると業績は市場予想を上回ってくることも期待されます。 ・7-9月期の売上は、COVID-19で落ち込んだ4-6月期の前年同期比19%減から同14%増へ大きく改善しました。4-6月期に比べてスポーツイベントなどが復活し、また、企業による新商品の投入も増えたことから広告主による出稿が増えたとみられます。広告エンゲージメントは前年同期比27%増、エンゲージメント当たり費用(ツイッターにとっては収入)は同9%減でした。 | ||
アイデックス ラボラトリーズ(IDXX) | 424.82ドル | 63.6 | 【ペット向け医療の需要増で成長】 ・獣医向けの臨床検査製品メーカーで、特に犬や猫などコンパニオンアニマル(ペット)向け製品に強く同分野の世界的リーダー企業です。同分野の売上が88%(20年7-9月期)を占めます。先進国での高齢化に伴うペット需要の増加、ペットの高齢化に伴う医療需要の増加などのトレンドを背景に成長が見込まれ、20年〜23年にかけて年率10%以上の売上増加が予想されています。 ・7-9月期の売上は前年同期比19%増と、4-6月期の同3%増からモメンタムが大きく回復しました。COVID-19のパンデミックで積みあがっていた診療需要が表面化し、コンパニオンアニマルグループの売上が4-6月期の同7%増から同20%増に加速しました。7-9月期に米国のペット診療所の訪問件数は前年同期比6%増(同診療所ベース)、診療売上は同11%増とペット診療に対する需要の安定が確認されています。 | ||
TE コネクティビティ(TEL) | 96.88ドル | 18.6 | 【自動車の電動化から恩恵を受ける】 ・スイスに本社を置くコネクターとセンサーを主力とする電子部品メーカーで、コネクターでは世界最大手です。2007年にコングロマリットのタイコから独立した企業が前身です。売上の約6割を運輸関連(乗用車と商用車)が占め、21年に世界の自動車生産は前年比10%以上の回復が見込まれていることから、同社はこの恩恵を受けると期待されます。自動車の電動化から恩恵を受ける企業としても注目されます。 ・7-9月期の売上は前年同期比1%減にとどまりましたが、自動車生産の回復がけん引して市場予想を13%上回りました。運輸ソリューションの売上は4-6月期の前年同期比36%減から同2%減まで回復、同社CEOは「自動車生産の回復に加え、ハイブリッド車や電気自動車の技術で強いポジションを築いていることで市場平均を上回るパフォーマンスになった」としています。インダストリアルソリューションの売上は同5%減、コミュニケーションズソリューションは同12%増でした。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。TEコネクティビティは21年9月期、その他は21年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
2(月) | ・中国財新製造業PMI(10月) ・米ISM製造業景気指数(10月) |
ペイパルホールディングス、エスティローダー |
3(火) | ・アメリカ大統領選挙投票日 ・米製造業受注(9月) ・米自動車販売台数(10月、4日までに発表) |
エマソンエレクトリック |
4(水) | ・ユーロ圏生産者物価指数(9月) ・米ADP雇用統計(10月) ・米ISM非製造業景気指数(10月) ・米貿易収支(9月) |
クアルコム、アルベマール |
5(木) | ・米FOMC政策金利 ・ユーロ圏小売売上高(9月) ・米新規失業保険申請件数(10月31日に終わる週) |
アリババグループ、エマージェントバイオソリューションズ ウーバーテクノロジーズ、スクエア、ゼネラルモーターズ |
6(金) | ・米雇用統計(10月) | |
9(月) | ・第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP26、英グラスゴー、20日まで) |
マクドナルド、ズームインフォテクノロジーズ |
10(火) | ・中国生産者・消費者物価指数(10月) ・中国資金調達総額(10月、15日までに発表) ・ドイツZEW調査(10月) ・米NFIB中小企業楽観指数(10月) |
ロックウェルオートメーション |
11(水) | ・日本工作機械受注(10月) ・米求人労働異動調査(9月) |
・中国アリババのネット通販セール「独身の日」 ロイヤルティファーマ |
12(木) | ・日本機械受注(9月) ・ユーロ圏鉱工業生産(9月) ・米消費者物価指数(10月) ・米新規失業保険申請件数(11月7日に終わる週) |
ウォルトディズニー、シスコシステムズ、アプライドマテリアルズ |
13(金) | ・ユーロ圏貿易統計(9月) ・ユーロ圏実質GDP(7-9月期、速報値) ・米生産者物価指数(10月) ・ミシガン大学消費者マインド(11月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成