先週は様々な懸念材料から週初に下落、その後はもみ合いとなり、週間で続落でした。今週は11/3(火)の大統領選挙投票日を控えて動きにくく、主要企業の決算発表を踏まえた個別物色中心の動きになりやすいと考えられます。
今回は前週に好決算を発表した銘柄から、プロクター & ギャンブル(PG)、サーモ フィッシャー サイエンティフィック(TMO)、テキサス インスツルメンツ(TXN)、アライン テクノロジー(ALGN)、アンフェノール A(APH)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
通信サービス | 2.1% | 6.3% | 8.6% |
公益事業 | 1.2% | 10.2% | 7.4% |
金融 | 1.0% | 7.3% | 4.1% |
エネルギー | 0.5% | 0.4% | -19.1% |
ヘルスケア | -0.1% | 4.5% | 2.6% |
素材 | -0.4% | 5.5% | 7.2% |
S&P500 | -0.5% | 5.1% | 7.8% |
資本財・サービス | -0.6% | 6.1% | 13.0% |
一般消費財・サービス | -0.6% | 5.6% | 11.3% |
不動産 | -1.3% | 2.5% | 2.2% |
生活必需品 | -1.4% | 3.7% | 5.5% |
情報技術 | -2.2% | 3.9% | 12.6% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
ゼネラル・モーターズ(GM) | 10.1% |
ブッキング・ホールディングス | 9.3% |
フェイスブック | 7.1% |
アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG) | 6.9% |
フォード・モーター | 6.4% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
インテル | -11.0% |
ユニオン・パシフィック | -10.3% |
ネットフリックス | -8.0% |
IBM | -7.9% |
チャーター・コミュニケーションズ | -6.4% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
19日(月)は追加経済対策が選挙前に合意できないとの見方、COVID-19感染者数の増加、大統領選挙への警戒から全面安で1.6%下落しました。その後は追加経済対策への期待が盛り返したり、また、大統領候補の第3回TV討論会を控えていたこともあり、もみ合いとなりました。
22日(木)のTV討論会は、運営の工夫もあってまともな討論会となりましたが、トランプ氏、バイデン氏とも決定的な得点・失点はなかったとの評価でした。23日(金)はデータセンター向けの売上が減少したインテルの決算がネガティブサプライズとなりましたが、相場全体への波及は限定的でした。S&P500指数は週間で0.5%の下落でした。
業種指数では、「通信サービス」がトップでした。アルファベットが反トラスト法違反の疑いで米司法省から提訴されたにも関わらず、フェイスブックやアルファベットの上昇がけん引しました。「公益事業」はクリーンエネルギー関連に対する物色が関係している可能性がありそうです。「金融」は10年国債利回りの上昇が好感されました。一方、ボトムの「情報技術」はアップル、インテルのほか、ソフトウェアも幅広く売られました。
個別銘柄では、ゼネラル モーターズ(GM)がトップでした。世界的に自動車販売が回復しているうえ、市場の注目が高かったEVトラック「GMC Hummer EV」のワールドプレミアが好感されたとみられます。
経済指標では、米国の9月中古住宅販売件数が前月比9.4%増と非常に好調であったほか、9月の住宅着工・建設許可件数とも前月比増加を示しました。中国の7-9月期実質GDPは前年比4.9%増と予想の同5.2%増を下回ったものの、4-6月期の同3.2%増から改善を示しました。また、中国の9月鉱工業生産が前年比6.9%増、小売売上高が同3.3%増と、いずれも市場予想以上の改善となりました。
今週の米国株式市場
来週11/3(火)の大統領選挙投票日を控えて動きにくく、主要企業の決算発表を踏まえた個別物色中心の動きになりやすいと考えられます。混迷している追加経済対策の協議に合意がない限り、相場全体は軟調に推移しやすいでしょう。
10/22(木)に開催された大統領候補による第3回TV討論会では、両候補とも決定的な得点・失点はなかったとの評価で、世論調査による支持率、「賭け」のオッズから計算した当選確率ともバイデン氏のリードが続いています。
バイデン氏が大統領となる場合の相場へのインパクトは、議会上下院とも民主党が押さえる「ブルースウィープ」の場合はプラスの一方、上院の共和党過半が変わらない場合は、マイナスに作用すると想定できるでしょう(図表3)。
一方、可能性が大きいのは、「結果判明の遅延」のケースで、これは相場にマイナスに作用しそうですが、以下のように遅延の原因にも依ると考えられます。
郵便投票の影響や接戦州での再集計が要因となる場合は、若干のマイナスと考えられるでしょう。一方、選挙の妥当性に異議が出て法廷闘争となる場合は、結果判明までの期間が長くなりやすく、マイナスの作用は大きくなりやすいでしょう。ただし、いずれ結果は出るため、結果遅延による株価下落は一時的でしょう。
7-9月期の決算発表は好調に推移しています。10/23(金)までにS&P500指数採用企業のうち27%が発表済みで、7-9月期のEPSは前年同期比16.0%減(発表済み企業の実績と未発表企業の予想の混合)となる見込みです。9月末時点の予想は同21.0%減でしたので、発表した多くの企業が市場予想を上回るEPSを記録していることになります。
経済指標では、10/26(月)に米国の9月新築住宅販売件数(前月比1.3%増の予想)、10/27(火)に米国の9月耐久財受注(前月比0.5%増の予想)、10月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の101.8から101.9に改善の予想)、10/30(金)に米国の7-9月期実質GDP(前期比年率31.8%増の予想)、などの発表が予定されています。
なお、米国の実質GDPは4-6月期に前期比年率31.4%減でしたので、上記の予想通りであれば「全値戻し」になりそうですが、100%×(1-0.314)×(1+0.320)=90.6%と、9割程度まで戻るという予想です。
企業決算では、アルファベット、マイクロソフト、3M、ファイザー、ビザ、ボーイング、ギリアドサイエンシズ、アマゾンドットコム、アップル、フェイスブック、スターバックス、エクソンモービルなど、主要企業決算発表のピークをむかえます。
このほか、企業イベントとして、10/28(水)に上院の商業科学運輸委員会の公聴会でフェイスブック、ツイッター、アルファベットのCEOが証言を行います。SNSの投稿内容に関する法的責任を免除している通信品位法230条の妥当性の検討が目的です。
今週の5銘柄
今回は前週に7-9月期決算を発表したS&P500指数採用銘柄から好決算を発表したものをご紹介いたします。
スクリーニングの条件は、(1)売上の予想乖離率5%以上、EPSの予想乖離率10%以上、(2)売上の前年同期比-10%以上、(3)時価総額200億ドル以上です。これらの条件を満たす銘柄を図表4にリストアップしています。
ここからプロクター & ギャンブル(PG)、サーモ フィッシャー サイエンティフィック(TMO)、テキサス インスツルメンツ(TXN)、アライン テクノロジー(ALGN)、アンフェノール A(APH)を選んでご紹介いたします。
図表3 米大統領選挙と相場インパクトのシナリオ
大統領 選挙 |
上院 選挙 |
下院 選挙 |
株式相場へのインパクト | 可能性 | |
民主党全勝 | バイデン | 民主党 | 民主党 | + + | 中 |
共和党全勝 | トランプ | 共和党 | 共和党 | + + | 極小 |
トランプ、ねじれ | トランプ | 共和党 | 民主党 | + | 小 |
バイデン、ねじれ | バイデン | 共和党 | 民主党 | − | 中 |
結果が遅延 | 郵便投票の集計、接戦州での再集計、法廷闘争などの可能性 |
遅延の原因により 「−」 〜 「− −」 |
大 |
※各種報道をもとにSBI証券が作成
図表4 先週発表の好決算銘柄スクリーニング(S&P500指数採用企業対象)
コード | 銘柄名 | 予想乖離(%) | 前年同期比(%) | 時価総額 (億ドル) |
||
売上 | EPS | 売上 | EPS | |||
PG | プロクター・アンド・ギャンブル(P&G) | 5.6 | 15.6 | 8.5 | 19.0 | 3,507 |
TMO | サーモフィッシャーサイエンティフィック | 11.7 | 30.1 | 35.9 | 91.5 | 1,907 |
DHR | ダナハー | 6.8 | 26.2 | 16.8 | 48.3 | 1,662 |
TXN | テキサス・インスツルメンツ | 11.4 | 15.2 | 1.2 | -2.7 | 1,361 |
EW | エドワーズライフサイエンス | 5.7 | 15.2 | 4.3 | 8.5 | 494 |
ALGN | アライン・テクノロジー | 41.2 | 331.2 | 20.9 | 75.8 | 357 |
APH | アンフェノール | 14.7 | 25.3 | 10.6 | 14.7 | 354 |
WST | ウエスト・ファーマシューティカル・サービシズ | 7.4 | 15.3 | 20.2 | 45.6 | 206 |
※各種報道をもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (10/23) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
プロクター & ギャンブル(PG) | 142.38ドル | 25.7 | 【オーガニック売上成長率が9%に上昇】 ・世界最大の家庭用品・日用品の会社です。2016年頃から進めた成長性による製品の取捨選択効果が2019年頃より表面化してオーガニック成長率が上昇、これを反映して株価は上場来高値を更新する動きが続いています。業績の好調を受けて21年6月期に80億ドルの配当と70〜90億ドルの自社株買いを計画しています。 ・10/20(火)に発表された7-9月期決算は、オーガニック売上成長が前年同期比9%増と、市場予想の同4%増を大幅に上回りました。販売数量が同7%増となったほか、価格およびミックスもそれぞれ同1%増と寄与しています。分野別には、COVID-19の恩恵を受けているファブリック&ホームケアが同14%増、ヘルスケアが同12%増とけん引したほか、ビューティが同7%増、グルーミングが同6%増と会社の施策により改善基調となっています。調整後EPSは同20%増でした。21年6月期のオーガニック売上成長のガイダンスを前年同期比2〜4%増から同4〜5%増へ引き上げています。 | ||
サーモ フィッシャー サイエンティフィック(TMO) | 480.17ドル | 25.0 | 【COVID-19のワクチン開発などで需要増】 ・製薬・バイオ企業や病院、研究機関に分析機器・試薬を提供する企業です。2006年にThermo社とFisher社の統合で誕生、その後も世界的電子顕微鏡メーカー、医薬品の受託開発企業などを買収して拡大してきました。COVID-19のパンデミックを受けた世界的なワクチン開発などで同社の製品・サービスへの需要が拡大しています。 ・10/21(水)に発表された7-9月期の売上は前年同期比36%増と、4-6月期の同10%増から大幅に加速、調整後EPSは同2.6倍でした。COVID-19への対応による需要は全売上85億ドルのうち20億ドルに達したと推定されています。主力の一つであるライフサイエンスソリューションの売上が前年同期比2倍となって全体をけん引しました。COVID-19への対応が全世界的に進められていることから、需要の追い風は21年も続くと期待されます。 | ||
テキサス インスツルメンツ(TXN) | 149.96ドル | 23.2 | 【自動車分野が回復】 ・幅広い産業に使用されるアナログ半導体を主力に組み込み半導体にも展開する半導体メーカーです。産業景気の低迷を受けて19年から業績は低調で、COVID-19による景気後退による打撃も大きくなっていました。しかし、7-9月期は4-6月期に操業停止の影響を受けた自動車向けが大幅な改善となったほか、テレワークの広がりでパーソナル電子機器の需要増の恩恵を受けて予想以上となり、業績は底入れとなる可能性がうかがえます。 ・10/20(火)に発表された7-9月期決算は、売上が前年同期比1%増、EPSが同3%減で、売上・EPSとも市場予想を大幅に上回りました。売上は4-6月期から18%の増加となっています。アナログ半導体は前四半期比18%増、前年同期比7%増、組み込み半導体は前四半期比19%増、前年同期比10%減でした。10-12月期についても、市場予想を上回るガイダンスを出しています。 | ||
アライン テクノロジー(ALGN) | 469.56ドル | 57.8 | 【ズーム効果で売上が加速!?】 ・透明なマウスピース型の歯列矯正器具「インビザライン・システム」を製造販売している企業です。売上成長の鈍化や競合企業スマイルダイレクトクラブの新規上場を受けて、ここ2年の株価は低迷してきました。しかし、市場予想を大幅に上回る7-9月期決算をうけて10/22(木)に35%の上昇となり、18年9月以来の上場来高値を更新しています。 ・10/21(水)に発表された7-9月期決算は、売上が前年同期比21%増、EPSが同76%増で、それぞれ市場予想を41%、3.3倍上回りました。4-6月期の売上が前年同期比41%減と落ち込んだ反動に加え、ティーンエージャーが学校の休みを歯列矯正のチャンスと捉えた可能性がありそうです。また、同社CEOはズームのビデオ会議で自分の顔を見る機会が増えて歯列矯正の必要を感じる人が増えている可能性があると発言しています。 | ||
アンフェノール A(APH) | 119.75ドル | 28.6 | 【モバイルやデータ通信分野の需要増から恩恵】 ・コネクターの世界的大手です。レーダーからスマホまで各種の電気・電子コネクターや光ファイバーコネクター、ケーブルなど配線接続部品を製造しています。TEコネクティビティに次ぐ売上規模で、日本の同業であるヒロセ電機の約7倍の売上があります。5Gやクラウドといった成長分野の恩恵を受けて21年にかけて業績は回復基調が期待されます。 ・10/21(水)に発表された7-9月期決算は、売上が前年同期比11%増、調整後EPSが同15%増と好調でした。モバイル機器、IT、データ通信、産業向けなどの需要が売上増をけん引したとしています。10-12月期は前年同期比横ばい程度の売上・調整後EPSのガイダンスですが、市場予想を上回りました。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。プロクター&ギャンブルは21年6月期、その他は20年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
26(月) | ・中国「5中全会」(第19期中央委員会第5回全体会議、29日まで) ・ドイツIFO企業景況感(10月) ・シカゴ連銀全米活動指数(9月) ・米新築住宅販売件数(9月) |
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27(火) | ・中国工業部門利益(9月) ・米耐久財受注(9月) ・S&Pコアロジック住宅価格(8月) ・コンファレンスボード消費者信頼感(10月) |
マイクロソフト、3M、ファイザー、AMD、BP メルク、キャタピラー、イーライリリー |
28(水) | ・米議会上院の公聴会でフェイスブック、ツイッター、アルファベットのCEOが証言 ・携帯見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」 (ロサンゼルス、30日まで) ビザ、ボーイング、ギリアドサイエンシズ、ビヨンドミート(E) マスターカード、ゼネラルエレクトリック、グラクソスミスクライン UPS |
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29(木) | ・日銀金融政策 ・ECB主要政策金利 ・ユーロ圏景況感(10月) ・米新規失業保険申請件数(10月24日に終わる週) ・米中古住宅販売成約(9月) |
アマゾンドットコム、アップル、フェイスブック、アルファベット ロイヤルダッチシェル、スターバックス、クラフトハインツ モデルナ、イルミナ、ツイッター、アクティビジョンブリザード |
30(金) | ・日本鉱工業生産(9月) ・ユーロ圏失業率(9月) ・米実質GDP(7−9月期、速報値) ・米個人所得・個人支出(9月) ・米PCEコアデフレータ(9月) ・ミシガン大学消費者マインド(10月、確報値) |
アッヴィ、エクソンモービル、アルトリアグループ |
31(土) | ・中国製造業・非製造業PMI(10月) | |
11月 1(日) |
・米国の冬時間が開始 | |
2(月) | ・中国財新製造業PMI(10月) | ペイパルホールディングス、エスティローダー |
3(火) | ・アメリカ大統領選挙投票日 ・米ISM製造業景気指数(10月) ・米製造業受注(9月) ・米自動車販売台数(10月、4日までに発表) |
エマソンエレクトリック |
4(水) | ・ユーロ圏生産者物価指数(9月) ・米ADP雇用統計(10月) ・米貿易収支(9月) |
クアルコム、アルベマール |
5(木) | ・米FOMC政策金利 ・米ISM非製造業景気指数(10月) ・ユーロ圏小売売上高(9月) ・米新規失業保険申請件数(10月31日に終わる週) |
アリババグループ、エマージェントバイオソリューションズ ウーバーテクノロジーズ、スクエア、ゼネラルモーターズ |
6(金) | ・米雇用統計(10月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成