先週は欧州での新型コロナの感染拡大や追加経済対策に関する議論の停滞などが悪材料となって続落となりました。今週は大統領候補の第1回TV討論会、新型コロナの感染動向、追加経済対策の議論、米中の経済指標(米中の企業景況感、米国の雇用統計)、などが注目されます。
今回は株価が50日移動平均線に対してプラス乖離、過去4週にEPSが上方修正されたことを条件として銘柄を抽出、アドビ(ADBE)、ナイキ B(NKE)、セールスフォース ドットコム(CRM)、フェデックス(FDX)、ターゲット(TGT)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 2.1% | -7.4% | 12.3% |
一般消費財・サービス | 1.2% | -5.5% | 16.0% |
公益事業 | 1.2% | 0.0% | 6.4% |
通信サービス | -0.4% | -8.3% | 10.6% |
生活必需品 | -0.4% | -3.8% | 10.6% |
S&P500 | -0.6% | -6.0% | 9.6% |
ヘルスケア | -2.0% | -4.3% | 5.7% |
不動産 | -2.1% | -4.9% | 2.8% |
資本財・サービス | -2.6% | -2.6% | 15.6% |
金融 | -4.2% | -7.0% | 4.1% |
素材 | -4.6% | -2.2% | 14.5% |
エネルギー | -8.6% | -15.9% | -17.4% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
ナイキ | 8.3% |
ペイパル・ホールディングス | 6.3% |
エヌビディア | 5.6% |
アップル | 5.1% |
アマゾン・ドット・コム | 4.7% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
シュルンベルジェ | -15.0% |
オキシデンタル・ペトロリアム | -12.3% |
ゼネラル・エレクトリック(GE) | -11.2% |
フォード・モーター | -10.0% |
アクセンチュア | -9.1% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数はテクニカルな調整だけであれば3,300ポイント前後で下げ止まっていたはずですが、先週はファンダメンタルズの悪化も加わったとみられ、一時3,200ポイント近くまで下押す場面がありました。
ファンダメンタルズ面の悪材料として、新型コロナの感染再拡大を受けて21日(月)に欧州株が大幅下落となったこと、パウエルFRB議長らが追加経済対策の必要を訴える一方で米議会での議論が膠着していること、FDA(米食品医薬品局)が新型コロナワクチンの緊急使用の認可基準を厳格化したこと、などがあげられます。
また、IT銘柄の株価が25日(金)は反発となったものの、依然として不安定な値動きが続いています。S&P500指数は週間で0.6%の下落、4週連続の下落です。
業種指数では、ソフトウェアや半導体などの「情報技術」、アマゾンドットコムを含む「一般消費財・サービス」が反発、新型コロナの感染拡大が注目されたことで「エネルギー」「素材」「資本財・サービス」など景気敏感業種が反落となっています。
個別銘柄では、ペイパル ホールディングス(PYPL)が100日移動平均線にタッチした後、反発基調となっています。業績好調を受けてアナリストによる強気の投資判断表明が相次いだことが背景にあるとみられます。アナリストによる目標株価平均は218.4ドルまで高まっています。
経済指標では、米国の8月中古住宅販売件数が7月の前月比24.7%増に続いて同2.4%増、8月新築住宅販売件数も7月の同14.7%増に続いて同4.8%増と、住宅ローン金利の低下を受けた増加基調が続いています。一方、米国の8月耐久財受注は前月比0.4%増にとどまり、市場予想の同1.5%増を下回りました。
今週の米国株式市場
大統領候補の第1回TV討論会、新型コロナの感染動向、追加経済対策の議論、米中の経済指標(米中の企業景況感、米国の雇用統計)、などが注目材料です。
大統領候補のTV討論会は、初めてトランプ大統領とバイデン候補が同じステージに立ち言葉をかわす場となります。有権者が両者に対してどのような印象をもつか、選挙結果を占う上で非常に重要と考えられます。
TV討論会を経てもこれまで世論の支持率でリードしているバイデン氏の優位が変わらなければ、株価は下落する可能性が高いとみられます。もし、トランプ大統領が盛り返すならリリーフラリーの可能性もありそうです。どちらが優勢か決めがたい場合は、選挙結果の確定まで時間がかかる可能性が気にされており、この場合も相場は下落しやすいでしょう。
新型コロナの感染者数は、世界合計および米国では横ばい圏となっていますが、欧州での増加が懸念されています(図表3)。欧州は日本や米国に比べて秋の到来が早く、特に最低気温が低くなります。9月の最低気温は、ロンドン11℃、マドリード12℃、ベルリン9℃、ローマ14℃、パリ17℃といった具合です。
気温が下がると湿度が低下し、咳による飛沫が長く浮遊しやすくなり、感染が広がる要因になると言われます。かねてより北半球の冬に向けて感染者が増加するのではとの懸念がありましたが、この懸念が実現する前兆の可能性があるため、注意が必要でしょう。
追加経済対策について、民主党を代表するペロシ米下院議長は9/27(日)に、自身とムニューシン財務長官との間で追加経済対策で合意できるチャンスはまだあるとの見方を示しています。また、民主党が新たな「提案」を近く公表するとも述べています。何らかの進展があるか要注目です。
経済指標では、9/30(水)に中国の9月製造業・非製造業PMI(製造業は前月の51.0から51.3に改善の予想、非製造業は前月の55.2から54.6に悪化の予想)、10/1(木)に日本の7-9月期日銀短観(大企業製造業のDIは前回の-34から-23に改善の予想)、米国の9月ISM製造業景気指数(前月の56.0から56.3へわずかに悪化の予想)、10/2(金)に米国の9月雇用統計(非農業部門雇用者数は前月比85.0万人増の予想)、などの発表が予定されています。
企業決算では、マイクロンテクノロジー、ペプシコ、コンステレーションブランズなどの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今週は相場の調整局面でも株価が相対的に堅調な銘柄群をご紹介いたします。
先週のS&P500指数は50日移動平均線を割り込み、24日(木)には100日移動平均線に接近する場面がありました。これよりも相対的に堅調な銘柄を抽出する目的で、S&P100指数採用銘柄について「50日移動平均線に対してプラスの乖離」を条件としました。
さらに、「過去4週のEPS修正率がプラス1%以上」を条件に加え、アナリストの目標株価との乖離率が大きい順に図表4にリストアップしました。
ここからチャート形状なども勘案して、アドビ(ADBE)、ナイキ B(NKE)、セールスフォース ドットコム(CRM)、フェデックス(FDX)、ターゲット(TGT)を選んでご紹介いたします。
図表3 欧州の新型コロナ感染者数(英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペインの合計)
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 相場調整の中で比較的堅調に推移している銘柄群(S&P100指数採用企業を対象に抽出)
コード | 銘柄名 | 株価 (9/24) (ドル) |
予想 PER (倍) |
50日 移動平均 乖離率 (%) |
EPS 修正率 (4週) (%) |
目標株価 乖離率 (%) |
ADBE | アドビ | 467.67 | 47.1 | 0.2 | 2.3 | 17.9 |
NKE | ナイキ | 124.75 | 44.1 | 15.7 | 20.7 | 14.6 |
CRM | セールスフォース・ドットコム | 237.55 | 63.7 | 7.2 | 2.3 | 14.3 |
FDX | フェデックス | 244.22 | 16.0 | 19.5 | 44.5 | 13.7 |
CMCSA | コムキャスト | 45.70 | 19.0 | 4.1 | 1.2 | 9.0 |
TGT | ターゲット | 152.00 | 21.1 | 9.1 | 2.6 | 7.6 |
TMO | サーモフィッシャーサイエンティフィック | 418.14 | 26.7 | 0.0 | 4.9 | 7.5 |
WMT | ウォルマート | 136.70 | 25.4 | 1.7 | 1.0 | 7.1 |
ORCL | オラクル | 59.30 | 14.2 | 4.8 | 3.7 | 5.1 |
注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (9/25) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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アドビ(ADBE) | 479.78 | 42.9 | 【社会のデジタル化進展から恩恵】 ・「Photoshop」「Illustrator」「Acrobat」などWEBページ作成に関わる様々なソフトウェアやサービスや、「Adobe Analytics」「Adobe Audience Manager」などマーケティング・分析関連のソフトウェアなどを展開している大手企業です。社会がデジタル化を進めるうえでインフラ企業の一つと考えられます。 ・6-8月期の売上は前年同期比14%増となり、デジタル・メディア部門の売上は同19%増、デジタル・エクスペリエンス部門の売上は同2%増でした。デジタル・エクスペリエンス部門は関連企業の買収を行うなど過去数年間取り組みを強化している事業ですが、景気後退の影響が出ているようです。9-11月期については全体の売上が前年同期比12%増、デジタル・メディア部門が同18%増程度、デジタル・エクスペリエンス部門が同変わらず程度の変化率になるとしています。 | ||
ナイキ B(NKE) | 124.23ドル | 43.9 | 【デジタルによる成長を目指す】 ・スポーツアパレルは不要不急の消費項目として新型コロナのパンデミックで打撃を受けましたが、強いブランドに加えてデジタル、ブランド、イノベーションで成長を目指す戦略への信頼が厚いようです。デジタルについては、テクノロジーのバックグラウンドをもつジョン・ドナフー氏のCEOへの起用で、23年のデジタル売上の比率を従来の30%から50%にまで引き上げました。 ・9/22(火)に発表された6-8月期の売上は前年同期比1%減で、新型コロナのパンデミックにより同38%減となった3-5月期から改善、同14%減を見込んでいた市場予想を大きく上回りました。ナイキブランドのデジタル売上が前年同期比82%増となって、小売店での売上落ち込みをカバーしています。地域別の売上は、北米が前年同期比2%減に対して、欧州・中東・アフリカが同5%増、中華圏が同6%増でした。 | ||
セールスフォース ドットコム(CRM) | 242.74 | 65.1 | 【新型コロナ下の経済環境にも対応】 ・ 企業向けに販売支援(顧客関係管理)、顧客サービス支援、マーケティング支援などのソフトウェアをクラウドで提供する企業で、顧客関係管理ソフトウェアでは世界最大です。企業のクラウド採用拡大を受けて高成長が続いており、24年1月期までの4年間で売上260〜280億ドルへ倍増を目指しています。 ・5-7月期決算では売上が前年同期比29%増と引き続き高い伸び率となったほか、営業利益率の改善もみられました。また、同社が「新型コロナ危機とその先の世界を見据えた新しいソリューション」であるとしている「Work.com」について経営陣から「凄まじい成長」がみられたとのコメントがあったことや、2021年1月期の業績見通しが引き上げられたことで、同社が新型コロナで激変している経済環境にも適切に対応できていることが示唆されました。 | ||
フェデックス(FDX) | 250.17ドル | 16.4 | 【今後は企業間物流の回復に期待】 ・小口貨物輸送の世界的大手です。20年5月期の売上は、企業間物流が主体のエクスプレス部門が54%、宅配が主体のグラウンド部門が35%、航空貨物部門が11%を占めています。新型コロナのパンデミック下では、宅配需要が盛り上がりましたが、今後は経済活動の再開にともなって企業間物流の改善が期待されます。 ・6-8月期決算は売上が前年同期比14%増、調整後EPSが同60%増と好調でした。営業利益率は8.5%と前年同期の6.1%から大幅に改善、市場は5.3%への悪化を見込んでいたためサプライズとなりました。売上はグラウンド部門が前年同期比36%増となった上、エクスプレス部門も同増収に改善しています。航空貨物部門を含む3部門とも利益率が前年同期から大きく改善しています。 | ||
ターゲット(TGT) | 154.35ドル | 23.2 | 【業績不振を脱して回復基調】 ・日用品や衣料品、食品などを販売する大型のディスカウントストアで、米国内に1,800店超を展開しています。19年1月期まで3期連続で営業減益が続いて不振でした。しかし、2017年に始めた店舗改装や品揃えおよびサプライチェーンへの投資効果が出て来店客数が増加、業績は20年1月期から回復基調となっています。 ・4-6月期は既存店売上が前年同期比24.3%増と市場予想の同8.6%増を大きく上回りました。来店客数が同4.6%増となったうえ、平均購入額が同18.8%増と大幅に伸び、eコマースの売上は同3倍でした。会社がコアとしている5つの商品カテゴリーすべてでシェアを拡大したとしています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。アドビは21年11月期、ナイキとフェデックスは21年5月期、セールスフォースドットコムは21年1月期、ターゲットは21年2月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
28(月) | ||
29(火) | ・大統領候補 第1回TV討論会 ・ユーロ圏景況感(9月) ・米S&Pコアロジック住宅価格(7月) |
マイクロンテクノロジー |
30(水) | ・日本鉱工業生産(8月) ・中国製造業・非製造業PMI(9月) ・財新中国製造業PMI(9月) ・ユーロ圏消費者物価指数(9月) ・米ADP雇用統計(9月) ・米実質GDP(4-6月期、確報値) ・米中古住宅販売成約(8月) |
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10月 1(木) |
・日本日銀短観(7−9月期) ・ユーロ圏生産者物価指数(8月) ・ユーロ圏失業率(8月) ・米新規失業保険申請件数(9月26日に終わる週) ・米個人所得・個人支出(8月) ・米PCEコアデフレータ(8月) ・ISM製造業景気指数(9月) ・米自動車販売台数(9月、2日までに発表) |
ペプシコ、コンステレーションブランズ |
2(金) | ・米雇用統計(9月) ・ミシガン大学消費者マインド(9月、確報値) ・米製造業受注(8月) |
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5(月) | ・ユーロ圏小売売上高(8月) ・米求人労働異動調査(8月) |
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6(火) | ||
7(水) | ・副大統領候補 テレビ討論会 ・FOMC議事要旨(9月15日、16日分) ・米消費者信用残高(8月) |
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8(木) | ・米新規失業保険申請件数(10月3日に終わる週) | |
9(金) | ・日本工作機械受注(9月) | デルタ航空(E) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成