米国株式市場は3/9(月)に主要3指数とも7%を超える急落となりました。S&P500指数の下落率は、2/19(水)の高値3393.52ポイントから3/9(月)終値2746.56ポイントへ19.1%に達しています。
相場下落の主因は、新型コロナウイルスの感染が「パンデミック」(世界的な疫病の流行)になるとの懸念が台頭したことにありますが、3/9(月)には原油価格が2割以上急落した影響が追い打ちをかけました。
今回過去に例をみないようなスピードで相場下落に転じた背景は、昨年からの株価上昇が「EPSの上昇」によらず、「PERの上昇」によるものだったことと考えられます(図表1)。
PERが拡大したのは、(1)製造業の底入れ期待、(2)米中通商協議の進展、(3)FRBによる資産拡大などを背景に今後の改善期待が醸成され、市場の楽観が強まったためとみられます。しかし、PERは市場参加者の見方や心理に大きな影響を受けるため、一瞬で変わることがあり、今回はその典型的な例と言えそうです。
一方、この相場下落によって一時19.5倍まで上昇していたS&P500指数の予想PERは、3/9(月)には15.9倍まで低下して買いやすい水準になったと言えるでしょう。ただ、PERが低下しても米国経済が今後リセッションに陥る場合には株式は買えませんが、いまのところその可能性は小さいと考えられるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスについては、中国外での感染が拡大していますが、先行した中国では日々の新規感染者数が100人以下まで減少して抑え込みに成功しそうです。そのような前例があれば、中国外での感染についても抑え込みできると想定できそうです。その場合は経済へのマイナスのインパクトは1-3月期または4-6月期中で抜けて、その後は回復していくと考えられます。
原油価格急落の影響については、原油生産を含む「鉱業」が米国のGDPに占める割合が1.7%(2018年)、米国の雇用に占める割合が0.4%と、さほど大きくありません。生産コストが高いシェールオイル企業の信用不安が見込まれるため金融市場への影響は避けられませんが、実体経済への影響は限定的と考えられます。
これだけの相場下落を経たあとだけに、当面ボラティリティの高い状況が続くと考えられます。しかし、PERを押し上げてきた市場の過度の楽観が解消し、業績回復に対する期待も修正され、中長期的な価値から考えて投資妙味が高くなっていると考えてよいのではないでしょうか。
図表1 S&P500指数の予想PERは19倍台から15倍台へ調整
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成