6月15日、16日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)終了後、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、債券買い入れペースの鈍化について、「近いうちに検討を開始する。」と発言しました。また、政策金利見通しについては、2023年末時点までに2回の利上げ予想に引き上げられました。
これを受けて、米株式市場のみならず、世界の株式市場が軟調な展開となっております。
今回は、日米欧の金融緩和政策を各国のマネタリーベースを基に再検証し、米国が金融引き締め(テーパリング)を行った場合に、どの程度、株価が調整されるのかを分析してみたいと思います。
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■世界の緩和マネーの状況は?
まず初めに、日米欧の中央銀行による資金供給が足元どの程度まで膨らんでいるのかみてみたいと思います。
図1をご覧ください。
日米欧各国の月次のマネタリーベースの推移とその変化幅を6カ月移動平均化したものになります。(各月末のユーロ円、米ドル円相場で日本円に換算)
2017年に米国がテーパリングを始めてから、マネタリーベースは若干の減少トレンドとなっておりましたが、新型コロナウィルスショックが原因で、直近では再び急拡大している状況となっております。
この流れを受けて起きたのが、世界的な株高でした。
図2をご覧ください。
日米欧の代表的な株価指数の推移(2013年7月末の株価を基準に標準化)と、日米欧のマネタリーベースの合計金額の推移を表したものです。
日米欧ともに、株価は2013年比で大幅に上昇していることが分かります。
■2017年〜2019年のような相場が再びやってくる?
では、今後FRBが実際にテーパリングを行った場合、株式市場はどうなるでしょうか?
それに関しては、かつて2017年〜2019年に米国がテーパリングをし始めていた際の相場展開が参考になるかと思います。
再度、図1,図2をご覧ください。マネタリーベースを減らしていた2017年〜2019年では、各国の株価が調整局面になっていたことが伺えます。
従って、今後テーパリングが始まった場合は、同様に調整局面になる可能性があるでしょう。
■どの程度、調整が起きるのか?
一番知りたいのは、どの程度、株価の調整があるのか?という点かと思います。
こちらは、マネタリーベースの合計値とS&P500との間に強い相関関係があることから、両者の間で回帰分析を実施し、マネタリーベースの合計値とS&P500との間に存在する回帰式を求めることによって、理論的な目安を算出することが可能です。
2013年7月〜2021年6月までの月次データ(データ数:96)を使って、計算した回帰式は以下の通りとなります。
S&P500の予想値=301.71+1.876×10-12×マネタリーベースの合計金額
この式を前提に、日米欧のマネタリーベースの合計金額ごとにS&P500の予想値をシミュレーションしたのが表1です。
足元のマネタリーベースの金額が2,068兆円です。コロナショック前の水準が約1,300兆円でしたから、増加したマネーの半分程度は回収してもおかしくないでしょう。その場合、2,068兆円→1,700兆円程度になる可能性は十分考えらえます。 そしてもしマネタリーベースが1,700兆円まで減った場合、S&P500ベースで6/18引値の4,166.45ポイントをベースに考えて約-16%程度の調整が入る可能性があると予想されます。
もしコロナショック前の状態に戻すことになれば、約-35%程度の調整もあり得るでしょう。
今後は、常に相場の下落に保険を掛けつつ、トレードをしていくことが肝要かと思います。
その際は、ぜひeワラントをご活用ください。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 吉野 真太郎
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