最大損失が買付金額までに限定されている一方で、相場が急変した場合には大きな値上がり益が期待できるのがeワラントの特長です。しかも、eワラントには指数(日経平均)だけではなく、個別株を対象としている銘柄も多数あります。この特長を活かして、個別株式とeワラントを組み合わせることで、株価の方向性ではなく、株価が大きく動くかどうかという変動性を収益の源泉とする投資戦略も可能です。
現在は主要企業の7-9月期決算発表シーズンの真っただ中ですが、個別株にとって決算発表は変動性が高まりやすいイベントです。決算発表をイベントとしてこの戦略を行ってみるのも一手です。
eワラントとは?
そもそもワラントってなに?3,000円程の少額から始められる「eワラントの魅力」をご紹介いたします。
ソフトバンクグループ(9984)の例
図1の横軸はソフトバンクグループ(9984)の株価、縦軸はソフトバンクグループを対象とするプット型eワラント(ソフトバンクグループプット第377回)の価格を示しています。青色の線は2019年10月29日時点で、時間経過を考慮せず、ソフトバンクグループの株価ごとに試算したこのeワラントの価格(点)を結んだものです。試算価格はeワラント証券ホームページのシミュレーターで計算したもので、他の条件は次の表の通りです(シミュレーター設定条件:ソフトバンクグループの配当利回りを0.55%、円金利を0.001%)。
ソフトバンクグループプット第377回(2019年11月29日15時時点) |
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ソフトバンクグループの株価 | 4100円 |
満期日 | 2019年1月8日 |
デルタ | -0.40 |
1ワラント当たりの原資産数 | 0.02 |
デルタは各eワラントの銘柄詳細ページをご覧いただくと表示されています。デルタはeワラントの対象となっている相場(この例ではソフトバンクグループの株価)に対する連動率のことを言います。例えば、デルタが1であれば、相場が1円動いたら、相場1単位当たりでこのeワラントの価格は1円動くということになります。
図1には2019年11月29日時点の取引価格を起点に、デルタ-0.40でソフトバンクグループの株価
がいくつ動いたらいくつ上がる、下がるという関係の直線を黄色で加えています。図1から分かることとして、試算時の相場から大きく動いた場合には黄色の線と青色の線が離れてズレが生じていることが分かります。eワラントの価格を示す青い線は曲線であり、黄色の直線の関係にはなっていません。デルタはeワラントの価格の曲線を直線で似せた(近似させた)ものであるからです。
個別株と組み合わせて直線とのズレを抽出する
図1のズレを見るとeワラントの価格の青色の線は黄色の線より上側にあることが分かります。黄色の線は相場変動のリスクそのものですから、青色の線から相場変動のリスクを取り除けばこのズレを取りに行くことができるかもしれません。このズレを狙う戦略をデルタヘッジと言います。個別株でこの戦略を行うのであれば、プット型eワラントの買いと個別株の買い、又はコール型eワラントの買いと信用売りを組み合わせます。この例ではプット型eワラントを保有するのと同時にソフトバンクグループの株を買い付ける(すでに保有している場合は買い持ちする)ことを考えます。戦略のイメージは図2の通りです。
ではどれだけのポジションを現物株で構築すればよいかと言うと、冒頭で紹介したデルタを用いて計算します。デルタは対象となっている相場に換算するときの指標とも言え、この例の時点でデルタ-0.48ですので、このプット型eワラントの1ワラント当たりですと、-0.48×0.02(=1ワラント当たりの原資産数)分のソフトバンクグループの株式を保有しているのと同等のリスク量になります。
仮に、例に用いているソフトバンクグループプット第377回を100,000ワラント保有した場合、デルタヘッジを行うには、200,000ワラント×0.02(1ワラント当たり原資産数)×-0.40(デルタ)=-800となりますので、ソフトバンクグループの株式を800株買い付ければ、プット型eワラントのデルタをヘッジすることができることになります(買い付けるeワラントの数量やデルタの値によっては、1単元未満の端数が発生することがあります)。
図3の青色の線は例に挙げたeワラントをソフトバンクグループ株でデルタヘッジしてズレを抽出したものです。ズレの部分は曲線的で、相場の方向性は関係なく、どちらかに大きく動けば利益が狙えることが分かります。相場が大きく上昇した場合は株価の上昇分で利益を狙い、相場が大きく下落した場合はプット型eワラントの値上がり益を狙います。相場が大きく変動して含み益となったら、いったんeワラントも個別株も決済して再度新規のデルタヘッジのポジションを構築するか、又は相場の変動がまだ続くと予想するならeワラントのポジションは変えずに変化したデルタの値に応じて個別株の数量を調整してやるのもよいでしょう。
リスクと決算発表への応用
ただし、リスクもあります。青色の線は時間の経過を考慮していません。一般的にeワラント(コール型、プット型)は時間経過によって価格が目減りしていきます。図3の赤色の線は青色の線から他の条件を変えずに時間だけ経過させた場合の合成ポジションの評価額です。
本稿で紹介したデルタヘッジが効果を発揮するのは相場が大きく動くことが予想されるけれども、方向性は予想するのが難しいという場合です。逆に、相場があまり変動しない局面では時間経過による目減りの分だけ損失が発生する(又は利益を上げにくくなる)ため不向きな戦略といえます。
その点、決算発表は業績やあわせて発表されるニュース(配当、自社株買いなどが代表的)によって、どちらかはわからないけれども相場が大きく動く可能性があるイベントです。しかも、決算発表は事前に日程がアナウンスされているので、発表内容によって相場が大きく動く前に比較的容易にポジションを構築することができます。決算発表はデルタヘッジ戦略が有効に機能するイベントの1つと言えるかもしれません。
※本稿においてはeワラントの買値と売値の価格差(売買スプレッド)や、個別株の取引に係る手数料は考慮されておりません。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 投資情報室
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