7月30日から31日の日程で行われたFOMC(連邦公開市場委員会)において、FRB(連邦準備制度理事会)はFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を25bp引き下げることを決定しました。FRBが利下げを行うのはリーマンショック時の2008年12月以来で、2015年後半から利上げを進めてきた米国の金融政策は大きな転換を迎えることとなりました。本稿では今回のFOMCのポイントやその後の市場の反応を振り返ると共に、過去の利下げ局面における株価の動きを振り返って見ました。
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7月FOMCの概要と市場の反応
<7月FOMCまで>
2018年後半の米国株式市場の下落を受けて、FRBはそれまでの利上げ姿勢の変更を強いられることとなりました。
6月のFOMCでは金融政策の現状維持を決定したものの、多くの理事が利下げを支持したことを明らかにしています。さらに、その前後にもパウエルFRB議長が「市場の状況を見ながらFRBは適切な行動をとる」と利下げ示唆ともとれる発言を繰り返し行いました。これらを受けて、市場では7月FOMCにおいて少なくとも25bpの利下げが確実視されていました。
<7月FOMCとパウエル議長発言のポイント>
FOMCの決定内容
・FF金利の誘導目標を年2.00%〜2.25%とする(25bpの引き下げ、賛成8反対2)
・FRBのバランスシート縮小を8月1日付で終了する(当初計画では9月末まで、2カ月前倒し)
パウエル議長の発言要旨
・今回の利下げは、サイクル半ばでの政策調整であり、長期にわたる利下げ局面の始まりではない
・ただし、一度きり(の利下げだ)とは言っていない
<市場の反応とその後の動向>
25bpの利下げは既に織り込まれていたものであったため、市場では材料出尽くしとの見方が広がりました。加えて、今後の利下げ継続を期待していた市場にとっては、利下げ局面の始まりではないとのパウエル議長の発言は悲観的に受け止められ、31日の米国株式市場では主要な株価指数が大きく下落しました。
さらに、トランプ大統領が中国製品への制裁関税第4弾を発動する意向を示したことで、米中貿易摩擦激化への警戒感から、その後も米国株式市場は大きく下落しています。パウエル議長は一時的な利下げを強調していたものの、株式市場の大幅下落や今後の米国景気の先行き懸念から、市場では既に年内の追加利下げを織り込む動きが出てきています。
過去の利下げ局面
下図は1980年以降のFF金利誘導目標とダウ平均の推移です。過去40年の間にFRBが利下げ局面を迎えたのは、以下の8回が挙げられます。
@ 1981年7月
A 1984年8月
B 1987年10月
C 1989年6月
D 1995年7月
E 1998年9月
F 2001年1月
G 2007年9月
景気後退期入り前後に利下げが行われたケース(@、C、F、G)、一時的な株価急落への対応として行われたケース(B、E)、政策による通貨価値・金利の調整として行われたケース(A、D)として分けることができそうです。
パウエル議長は今回の利下げについて、「サイクル半ばでの政策調整」と言及しているので、今回の利下げはAやDに近い意味合いと言えるかもしれません。また、米中貿易戦争懸念から下落した5月の株式相場を意識しているとすれば、BやEに近いとも言えそうです。米国の景気拡大は終盤を迎えてはいるものの、経済指標などを見てみるとまだ景気後退期入りとは言えず、@、C、F、Gのケースとの類似点は少なそうです。
下図はA、B、D、Eのケースにおける利下げ後の株価の動きを見たものです。利下げは株価にとってプラス材料とも言われますが、そのケースによってまちまちであることがわかります。
上昇率が最も高かったのはアジア通貨危機やロシア危機の影響が米経済に波及することを防ぐために利下げを行ったEのケースです。FRB委員のシカゴ連銀エバンス総裁は、同期間中の利下げを評価すると共に、現在の米経済やFRBを取り巻く環境に似ていると評価しています。同氏の発言のとおりであるとするならば、今後の株高が期待できるかもしれません。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 投資情報室長 多田幸大
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