イギリスが6月23日(木)にEU離脱(いわゆる“BREXIT”)についての国民投票を行います。数年前までは「ありえない」と考えていた方が多かったものの、今年に入ってにわかに現実味を帯びてきました。仮にイギリスがEUを離脱することになれば、ポンドやユーロだけでなく各国の経済成長から外国企業まで長期に亘って大きな影響を与えることになります。そこで、BREXITに備えた投資アイデアを考えておきましょう。
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EU離脱の現実味が為替レートに現れてきた?
イギリスがEUから離脱するかどうかは、20年以上も議論が続いてきた古い話題といえます。当初はEU内で実質的な拒否権を持っていたイギリスも、EU加盟国の拡大でイギリスの意見が通りにくい状況になってきました。また、EU肥大化にともなう財政負担の増加に加えて、通貨統合だけ行って財政政策が未統合という根本的な矛盾が解消されていないためユーロ周辺諸国の苦境が続き、富裕な加盟国の負担がさらに増えそうなので、イギリス国民の不満が高まってきました。
それに加えて、ポーランドなどのEU加盟東欧諸国の労働者や一旦他のEU加盟国に入り込んだ難民がイギリスに大量に流入するに至って、イギリスでEU離脱論への支持が急速に広がりました。その結果、2015年のイギリス総選挙では、保守党のキャメロン首相が2017年までのEU離脱についての国民投票を行うことを掲げて勝利しました。とはいえキャメロン政権はこれをEUとの交渉を有利に進めるための材料として使う戦術で、今でも国民投票は実施するもののEU残留を主張しています。
ところが2016年に入って、2月のEU首脳会議でEUから譲歩を引き出した直後にも関わらず、前ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏などの有力政治家が相次いでEU離脱支持を表明し、BREXITの可能性が急速に高まりました。これはポンドとユーロの対米ドルの為替レートの変動にも顕著に現れています(図1)。2016年に入ってポンドはユーロよりも大きく下落(図中黄緑矢印)していましたが、2月下旬にはBREXITを懸念して一時ポンドが急落しました(図中黄色矢印)。
図1:英ポンドとユーロの対米ドルレート推移
※ロイターデータよりeワラント証券が作成
イギリスがEUから離脱したらどうなる?
仮に6月23日の国民投票でイギリスのEU離脱が決まった場合、そこからイギリスの混迷が始まると考えられます。EUの規定では2年で離脱となるようですが、イギリスはEUと貿易協定を新たに締結する必要があるだけでなく、EUが域外国と締結していた様々な協定に関してイギリスが独自に再交渉しなければならなくなります。また、環境・安全基準や法制度もイギリスが独自に迅速に整備する必要があります。これらの作業は膨大なものになりそうなので、もしかしたら2年以内に終わらないかもしれません。仮に2年できっちり準備ができるとしても、イギリス国内外の企業や投資家にとってはどういった変化があるのかしばらく分からないということ自体が大きなリスクとなり、イギリスだけでなくEU圏への投資も停滞する可能性があります。
また、イギリスとEU圏との人や物の流れが現在よりも容易になるはずはなく、EU圏外の国との交渉も巨大な経済力を持つEUとして得られていたものと同等の条件は期待し難いものがあります。さらにイギリスからの分離独立の動きがあるスコットランドはイギリスから独立してEU加盟を目指すようになると考えられ、EUはそれを直接・間接的に支援するかもしれません(この場合、イギリスとEUの関係はかなり気まずいものになります)。
これらを鑑みると、イギリスやEUの株式だけでなく、英ポンドとユーロも少なくとも数年間は低調になると予想されます。なお、イギリスのEU離脱が欧州に再び戦争をもたらすかというと、そこまで心配する必要はなさそうです。というのは安全保障に関してはアメリカが主体となったNATOが、米国の新大統領が誰になってもおそらく機能し続けるからです。
「経済的なマイナスの影響が極めて大きいと予見できるなら、イギリス国民はEU離脱を選択しないのでは?」
というのは、各国の国民の合理的な判断力に期待しすぎでしょう。アメリカの国力が相対的に落ちている以上に、イギリスもかつての「太陽が沈まない国」(世界中に領土があり常にどこかは昼)といわれた大英帝国ではありません。米国大統領選でトランプ氏が躍進しているように、イギリスの国民も内向きになっているとすれば、大企業や大銀行とは違って、目先の外国人流入を防ぎたいというシンプルな主張が多数意見になるかもしれません。現時点(2016年5月初旬)ではEU残留派とEU離脱派は拮抗しているようですが、何かのきっかけで外国人による犯罪がクローズアップされたり、世界的な株価暴落が起きたり、ユーロ周辺諸国で再び債務危機が起きたり、ISがらみのテロがイギリス国内で発生したりすれば、一気にEU離脱派が増える結果になりそうです。
シナリオ別投資アイデア
投資を考える上で、EU離脱が否決されれば英ポンドが大きく戻し、それ以降の懸念はなくなります。イギリスのEU残留に相当の自信があるなら、FXで英ポンド/米ドルのロングポジションを抱えて6月23日を迎えるだけです(ただし、前述の理由で残留を断定してしまうのはかなりリスクが高い賭けだと思われます)。
一方、国民投票でEU離脱が決まれば、英ポンドやユーロだけでなく、イギリス株やEU圏の株式、イギリスに工場を保有するEU圏外企業(日本企業では日産など)にとって長くて暗い時期が始まることになりそうです。こうなると、遠く離れた極東の日本に住む投資家としてはイギリスやEU関連株式への投資ポジションははずしておきたくなります。直前に持つなら、英ポンド/米ドルやユーロ/米ドルのショートで、EU離脱が決まったらすぐに反対売買するのが賢明といえるでしょう。
「どちらとも分からないけれども、とにかく大きく相場が動きそう」と考えるなら、eワラントで英ポンド/円コールとプットの両建て戦略が有効となる可能性があります。この場合、6月中旬頃にその時の英ポンド/円スポットに近いコールとプットを同金額投資して、国民投票翌日(6月24日)にさくっと手仕舞うことがポイントとなるでしょう。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)
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