「二日新甫」とは株式相場や商品相場で、その月の取引初日が1日ではなく2日から始まる月のことを言います。3日から始まるなら「三日新補」です。相場格言に「二日新甫は荒れる」というものがあり、相場解説者などが「今月は二日新甫なので荒れやすいんですよね」といった使い方をしているようです。
そこで、今回はこれを検証しました。まず二日新甫だけなのか、三日新甫や四日新甫はどうなのか、また「荒れる」のは初日だけなのか、それともその月なのか、さらに、「荒れる」とは大きく下がることなのか、変動率が大きいことなのか、相場格言のあいまいな点を順を追って確認しました。
結果は、二日新甫は影響が認められなかったものの、取引初日に関しては「三日新甫当日に下げ、四日新甫当日に上げる」、月間騰落率については「三日新甫の月は下げる」というものでした。
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二日新甫当日は荒れないが、三日新甫当日は下げ、四日新甫当日は上げる
図表1は過去20年間(1996/1/8-2016/3/31)の日経平均株価の月初の1日だけの値動きを調べたものです。騰落率は終値の前日比を用い、日中変動率は当日の始値からの日中の値動きの大きさとしました((高値−安値)/始値)。
新聞報道などでは前日比だけが大きく取り上げられるので、多くの方にとっての始値で大きなギャップがあって日中はほとんど動かなかったとしても、“変動が大きかった日”となるはずです。一方、日中の値動きが大きな日は、短期取引主体の方にとっては“荒れた日”と感じられるはずです。
まず、相場格言で“荒れる”はずの二日新甫当日ですが、平均騰落率は1日が初日となる日の0.246% を下回るマイナス0.023%という結果でした。つまり、二日新甫当日は過去20年を見るとかなり平穏だったことになります。興味深いのは三日新甫当日が平均してマイナス0.643%と下げ、四日新甫当日は逆に0.982%と全取引日平均を大きく上回る上昇となっていることです。
これらのうち統計的に有意な関係が確認できたのは、三日新甫当日に下げる(99%信頼度)、四日新甫当日に上げる(信頼度97%)、及び四日新甫当日に日中大きく動く(信頼度90%)の3点でした(図表の黄色のハイライト部分)。
これらの背景を推察する際に重要な点は、1日以外が最初の営業日となる日は、必然的に月曜日が多くなることと、3日や4日と長くなるにつれて祝祭日の影響で月の偏りが生じることです。図表1にもあるように、一日新甫では全観測日157日のうち、33日が月曜日でしたが、観測期間中の二日新甫と三日新甫はすべて月曜日でした。金曜日の夕方に企業関連の大きなリリースが集中することに加えて、週初と月初が重なれば値動きが大きくなりやすいことは容易に想像できます。さらに、統計的に有意に日経平均株価が上昇し、かつ日中の値動きも大きい四日新甫は直近20年間で1月と11月しかなく、季節性が影響を与えている可能性も考えられます。
図表1:日経平均の月初日騰落率と日中変動率
|
平均騰落率(前日比) |
平均日中変動率 |
観測日数 |
うち月曜日 |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
一日新甫(初日) |
0.270% |
1.569% |
157 |
33 |
1月無し |
二日新甫(初日) |
-0.023% |
1.482% |
33 |
33 |
1月無し |
三日新甫(初日) |
-0.643% |
1.571% |
25 |
25 |
1,5,11月無し |
四日新甫(初日) |
0.982% |
1.954% |
18 |
3 |
1月(14回)と11月(3回)のみ |
五日新甫(初日) |
0.311% |
1.604% |
4 |
4 |
1月のみ |
六日新甫(初日) |
-0.275% |
1.858% |
6 |
3 |
1月(3回)と5月(3回)のみ |
月初日平均 |
0.176% |
1.594% |
243 |
101 |
|
全取引日 |
-0.001% |
1.500% |
4973 |
924 |
|
※ロイターデータよりeワラント証券が作成
月間騰落率で見ると、三日新甫が荒れる
図2は直近20年で二日新甫や三日新甫という取引初日の区分と、日経平均の月間騰落率の関係をみたものです。また、“二日新甫は荒れる”が値動きが大きいという意味である可能性も考慮して、その月の日次騰落率の標準偏差の平均値も合わせて計算しました。
結果は、二日新甫の月は騰落率で見て動かない月であったことが分かりました。一方、三日新甫の月は、平均してマイナス2.52%、六日新甫の月は平均してマイナス6.04%と大きく下落していました。
これらについても統計的に有意な関係がみられるか確認したところ、三日新甫の月であることは2.9%程度下落しやすい(信頼度97%)ということが確認できました。その他については統計的に有意な関係はありませんでした。なお、六日新甫は2010年5月の−11.65%、2014年1月の−8.45%、2004年5月の−4.47%などすべて1月と5月に3回ずつの計6回あり、いずれも大きく下落していました。観測数が少なかったために有意とはならなかったようですが、要注意ではありそうです。
「なぜ三日新甫の月に下げるのか」という理由については、一年のうち三日新甫になりえるのは祝日の日程上、1月、5月、11月を除いた9ヶ月となりますが、それだけでは説明がつきそうもありません。現状では、理由不明の月間騰落率のアノマリーといえそうです。
図2:日経平均月間騰落率と当月の取引初日区分
※ロイターデータよりeワラント証券が作成
投資に活かすには
過去20年間に統計的な関係が認められたからといって、それが今後も続くとは限りません。また、長期的な傾向が残っていたとしても、毎年確実に再現される訳でもありません。実際、「四日新甫当日は上げる」傾向があると言っても、2016年1月4日は3.06%の下落となりました。
とはいえ、今後もなんらかのアノマリーが残ると考えるのであれば、まずは三日新甫となる2016年10月3日当日と、その10月中に一波乱ある可能性を考えておいてもよさそうです。具体的には、それまでにキャッシュポジションを高めた上で、日経平均プットの買い、日経平均ニアピン(権利行使価格がスポットよりも1000円程度低い銘柄)を購入しての暴落待ち、日経先物ショート、日経平均マイナス3倍トラッカーの買いといった戦略が有効と考えられます。
その先の注意日は、四日新甫(2017年1月)、三日新甫(2017年4月、2017年7月)となりそうです。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)
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