2012年末から始まったアベノミクスは、“通貨安競争で一人負け状態”だった日本にようやくホッと一息つける経済環境をもたらしました。しかし、「異次元緩和」による円高修正効果も一巡し、伝家の宝刀の「マイナス金利」を実施したにもかかわらず、日本株売買フローの7割を占める海外投資家によるリスクオフの手仕舞い売りに押されています。
そうなると、いよいよ政策出動への期待が膨らんで来そうですが、従来型の補正予算にとどまるのであれば日本株を買うには力不足の感が否めません。一方、本当に日本の人口動態を一変させるような対策が出てくれば、「2020年以降も日本株は買い!」と国内外の投資家に思わせることができるかもしれません。
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目先の暴落対策には消費税増税延期が一石三鳥?
「目先の変動は気にしない」と言ってはいても、直近の下げ局面で早めに買ってしまったり、損失が数十%にもなってしまったりすれば、「お上がなんとかしてくれるカモ」という期待をどうしても抱いてしまいがちです。実際、大型補正予算が組まれれば、それなりの景気浮揚効果は期待され、日本ではそうやって財政出動が1990年代初めから繰り返されてきました。今回も補正予算の規模が10兆円ともなれば、世界的な株価下落の影響をいくらかは緩和できそうです。
とはいえ、もっと株価に直接的に効きそうなのが2017年4月に予定されている消費税増税(8%⇒10%)の中止、または延期です。軽減税率導入があるので従来ほどの2.5兆円×2%=5兆円よりは国民負担増は少なそうですが、これまでの3回の消費税導入・増税では、1989年4月(8ヵ月後に暴落)、1997年4月(導入10ヶ月前の閣議決定後から下落、導入後3ヵ月後にアジア通貨危機、7ヵ月後から金融危機)、2014年4月(6ヵ月後の10月から急落)と、いずれも暴落の呼び水となっていました。これは増税そのものの負担増に加えて、駆け込み需要でも大して企業が儲からず、導入後の需要急減で赤字操業というパターンが景気後退を招いていたためと思われます。
したがって、2017年4月に消費税増税を強行すると、ただでさえ中国経済急減速、資源国破綻リスク、欧州金融懸念再燃と急激な円高で痛み始めた日本経済に、「頭から氷水を浴びせる」ような甚大な影響が懸念されます。そこで、「消費税増税中止!」とか「3年延期」ということを政府が今決定すれば、日本株浮揚の重石がはずれ、世界的な景気後退の悪影響を緩和できる可能性があります。さらに、「もしかしたら日本は財政再建をあきらめたかも」と“識者”が騒いでくれれば、「有事の円買い」という海外投資家の思い込みが減り、円高になりにくくなることも予想されます。実際には円安が進んで輸入インフレとなったほうが年金負担が軽減する「マクロスライド方式」が導入されているので、長期的には日本の財政は健全になります。それに加えて、「消費税増税は民主党との三党合意で決めたことなので、これを中止/延期するには民意を仰ぐ必要がある」という大義名分で、消費税増税中止を春先に閣議決定した後で、6月まで先延ばししてから衆議院を解散して、衆参ダブル選挙に持ち込むこともありえます。この場合、長期安定政権が続く可能性が高まり、日本株にとってのプラス要因といえます。
つまり、「消費税増税中止/延期」となれば、景気浮揚・財政再建・政権安定と一石三鳥の効果が狙え、目先は「日本株は買い」となるでしょう。
日本礼賛では説得力に欠け、ロボットの効果は限定的
ただ、今後予想されるさらなる世界的な景気後退と株価下落局面でも、日本株を買うべきかどうかとなると、かなり心もとない状況です。2015年6月に「日本再興戦略改訂2015」が打ち出されました。しかし、株式市場の反応は“イマイチ”でした。現時点で多くの海外投資家が抱いている日本株への長期見通しは、「2020年の東京オリンピック開催でプラス要因は出尽くし、その後は少子高齢化の影響で日本はドンドン沈んで行く」というもののようです。
現時点の“成長戦略”は多岐に亘っているものの、目に見える効果が期待できるものが少なく、結局のところ「日本人一人ひとりの生産性を上げて人口減少を補う」ことを目指しています。「イノベーション」、「ベンチャー」、「IoT」や「稼ぐ力」などといえば反対意見も少ないのでしょうが、日本人の立場を離れて考えてみるとかなり独善的に聞こえます。新興国のキャッチアップはすさまじく、識字率、高学歴の労働者の数、各個人のコミュニケーション能力などを鑑みても、日本だけが他国よりも労働生産性を上げられるとは考えにくいものがあります。また、人口の一定の割合がリスクテイカーで起業して、そのまた一部が大成功して新しい産業を作ることができるとしましょう。そうなると、日本の10倍超の人口をかかえる中国やインドには、日本の10倍のビジネス機会があることになります。
では「ロボットをどんどん導入して日本企業の競争力を上げる」ならどうかというと、世界のどの企業も同程度の高性能産業用ロボットを導入できる時代ですし、それが上手く行っても雇用は減り、儲かるのは資本家だけで所得格差がどんどん広がっていくことになります。おまけにロボットは税金を払わず、服も着ないで旅行も食事もしません。つまり、国への貢献もなく、消費市場も形成できないのです。これは自動運転車や介護ロボットも同様で、これで日本経済が成長軌道に戻ると国内外の大口投資家は納得しないでしょう。
「日本には大きな長期的問題があり、基本的には日本人の不足が問題だ」
これはクルーグマン教授が2014年に指摘していて、多くの識者もそれ以前から同様のことを繰り返し述べています。結局のところ、人口動態の問題です。生産年齢人口(15歳から64歳)が増加する人口ボーナス期には経済が成長し、それが減少する人口オーナス期には経済が停滞・縮小するという見方は極めて説得力があります。これで日本の高度成長もバブル崩壊も、中国の急速なキャッチアップと直近の停滞も、日米欧の中でのアメリカ経済の際立った成長率も説明できます。だからこそ、インドやフィリピン、インドネシアといった人口動態から見て長期的な経済成長が見込まれる国に国内外の投資家が着目しているわけです。
このままでいけば日本は2020年代半ばには、高齢化による貯蓄率の減少から恒常的な経常赤字国に転落し、国内市場も縮小し、経済危機のたびに存在感がしぼんでいく国になるという見方が支配的です。しかしながら、2020年代半ばまでにはまだ10年弱という期間があります。今すぐ効果的な“人口減”対策が採られ、その効果が数年で出始めれば、国内外の日本の将来を見る目は変わるでしょう。
“人口増”を実現する手段は様々。半分だけでも実行されれば日本株は買いか?
一口に人口減対策といっても、何に着目するかによって実は多くの対策があります。生産年齢人口の多さが着目される理由には、まず労働人口という側面があります。また、消費が旺盛な世代という側面もあって、これは消費人口といえます。そうなると、「人口の総数を増やす」だけでなく、「労働人口を増やす」ことと「消費人口を増やす」ことも別々の対策が可能と言えます。例えば、総人口が増えなくても、高齢者や女性の労働参加が増えれば労働人口は増えます。また、消費人口という面では、日本への観光客が一人当たり10〜15万円程度消費してくれるとすれば、2000万人の訪日観光客は100万人分程度の消費人口といえます。これが政府目標の3000万人/年なら消費人口が150万人増えることになります。
総人口を真正面から増やすために出生率を上げるには、子育てのコストを下げ、世帯を形成するメリットを増加させる対策が必要といえます。加えて、日本人の出生率を上げるだけではなく、日本国籍を取得する移民を増やしても、外国人就労者を増やしても日本に居住する人口を増やすことができます。これらを目的別にまとめると以下のようになるでしょう。
1.高齢者と女性の労働参加率を上げる
◎年金支給開始年齢の75歳までの引き上げ
◎金銭支給による解雇の容認(不景気でも解雇しにくいから高齢者や女性の雇用が増えない)
◎配偶者控除の廃止と世帯ベースの確定申告制度の創設
◎保育園、幼保園の増設と無料化
◎転職のための無料職業訓練の充実(期間長期化、訓練中の給付金増額)
2.子供を育てるコストを下げる
◎公立高校、国公立大学の無料化
◎子供手当て年80万円支給(80万円×20才までなら1600万円!)
3.訪日観光客、外国人就労者、移民を増やす
◎TPP加盟の新興国への観光ビザ免除
◎横田基地を(房総半島、伊豆半島や茨城に)移転して第3の東京国際空港にする
◎公共交通機関、道路標示、薬局や医療施設でのローマ字・英語併記の徹底
◎ハラル(HALAL)やベジタリアンレストランへの補助金や優遇税制の導入
◎英語だけ取得できる職業資格の新設(介護士、医師、国際弁護士など)
◎年10万人の国別移民枠設置(地球温暖化で国土消滅の危機にある島嶼諸国やTPP加盟国に優先的に割り当て)
投資に活かすには
1970年頃は日本の出生数は200万人程度でした、それが 2014年は100万人にまで落ち込んでいます。これが今すぐに有効な政策が採られて、3年後に出生数が120万人に増えているとか、移民や外国人就労者が増えて総人口が年130万人増加、あるいは内訳が変わって就労者数が急増しているとなれば、日本の成長戦略が軌道にのっていることが統計数字として表れてきます。
そうなれば、「日本株は買い」と誰もが考える状況となるでしょう。このため、上記の政策の半分でも確実に実行されるようであれば、日本株は長く寝かしておいても安心な投資対象となるでしょう。
逆に、聞こえが良いものの人口減少への対策となりえない政策ばかり継続されるようなら、株価が暴落したときにだけ日経平均プラス5倍トラッカーや日経平均コールを買ってリバウンドの上昇だけを狙い、長期投資の対象は人口動態に優れる米国、インド、フィリピンやインドネシア・アフリカといった国々にした方が効果的と考えられます。