毎日「デイリーウォッチ」でeワラント証券から公表されている指標に、「新規買い指数」があります。プット・コールレシオはよく知られているのに対して、この新規買い指数はちょっと控えめな存在です。しかし、市場の上昇力がストレートに出てくる結構使える指標でもあります。特にプット・コールレシオと組み合わせてみると、市場参加者の相場観を客観的に見ることができます。
eワラントとは?
そもそもワラントってなに?3,000円程の少額から始められる「eワラントの魅力」をご紹介いたします。
新規買い指数とは
プット・コールレシオ(PCレシオ)がプットとコールの売買の比を見るものであるのに対し、新規買い指数は購入だけに着目して下記の算出式で求められるものです。
新規買い指数 = ((CALL購入金額−PUT購入金額)/総購入金額)の5日移動平均
eワラントはFXや信用取引と異なり、ショートから入る取引はありません。このため、例えばコールの売買が多いといっても、「この先上昇するはず」と見てコールを新たに購入した金額と、「もうこんなものだろうから手仕舞おう」という保有するコールのポジションを売却した場合のどちらかになります。この時、相場観は前者は「まだまだ上がる」、後者は「下がるかどうかは分からないけど、あんまり上がりそうもない」と異なります。そこで、PCレシオのようにコールとプットのどちらの方が活発に取引されているかを見るのではなく、(売却は無視して)新たに購入したのはコールとプットのどちらかという点だけを見ているのが、新規買い指数です。
新規買い指数とPCレシオを組み合わせる
図1は2006年から2010年までの日経平均の値動きと、PCレシオと新規買い指数の変化を表したものです。相場の高値圏ではPCレシオ(図中黄緑ライン)は0.1から0.3程度の低い水準に止まり(コールの売買が多い)、2008年10月から2009年3月ぐらいまでの相場の底値圏ではPCレシオは1から1.4と大きくなる(プットの売買が多い)ことはよく知られているとおりです。新規のコール買い割合に着目した新規買い指数(図中茶ライン)は概ねPCレシオと逆方向に動きます。これは計算過程からも当然なのですが、PCレシオと新規買い指数を組み合わせてみると、相場の上昇局面(図中緑の点線で囲った楕円)では新規買い指数がPCレシオの上方に位置した状態が続いていることが分かります。逆に相場の下落局面(図中黄色の点線で囲んだ楕円)では、PCレシオが大きく新規買い指数を上回った状況が継続しています。これは「2008年初め〜2009年半ば」でも、「2010年夏〜2010年秋」でも同じです。そう考えると、PCレシオと新規買い指数を組み合わせてその位置関係を図示すると、相場が「上昇・高値局面」にあるのか「下落・底値」局面にあるのか判断できる可能性がありそうです。
図1:日経平均とPCレシオ、新規買い指数(2006-2010)

※ロイターデータよりeワラント証券が作成
図2は同じチャートの期間を2011年から2015年11月中旬までに変えたものです。2011年前半(図中黄点線の楕円)も新規買い指数は底這いでPCレシオが急上昇しています。超長期で見れば底値圏であるとはいえるのですが、こういった時には相場の上昇力に欠けていることが確認できます。アベノミクスが始まった2012年末〜2014年初と、追加異次元緩和があった2014年末〜2015年夏まで(ともに緑点線の楕円で囲んだ区間)は、逆に新規買い指数がPCレシオを継続的に上回っていました。
図2:日経平均とPCレシオ、新規買い指数(2011-2015)

※ロイターデータよりeワラント証券が作成
投資に活かすには
現在の状況をPCレシオと新規買い指数で見ると、黄点線の楕円の区間とも緑点線の楕円の区間とも異なっています。つまり、はっきり上昇・高値局面にあるとも、下落・底値局面にあるともいえないようです。ここからコールの買いが増えて新規買い指数が0.7や0.8を上回り、同時にPCレシオが継続的に0.3や0.2を下回る緑点線の楕円で囲まれた区間のようになるのであれば目先は堅調と見て、日経平均コール911回(権利行使価格17,000円、2016年8月10日満期)や日経平均5倍トラッカー17回(2016年4月13日満期)への投資が適していそうです。
しかしながら、逆に新規買い指数がだんだん下がると同時にPCレシオが0.6や0.7を上回ってくるようだと調整相場入りです。この場合は、日経平均プット669回(権利行使価格22,000円、2016年3月9日満期)や日経平均マイナス3倍トラッカー18回(2016年4月13日満期)への投資が良さそうに思われます。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)
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