一般に時価総額が300億を下回ると中小型株投資を専門とする機関投資家以外の機関投資家の投資対象となりにくく、100億円を下回るとほぼ個人投資家だけのマーケットになるとされています。また、相対的に設立からまもない小型株が多いマザーズやJASDAQといった新興株市場にはゲームを含めたITやバイオ関連の企業も多く、値動きが荒くなりがちです。さらに、企業規模が小さいために業務分野が絞られ、業績の変動率も大きいといえます。このため、急成長を続けて株価が何倍にもなる企業がある一方、景気後退期には業績が急激に悪化し、株価が暴落してその後数年間も塩漬け、場合によっては破綻ということも珍しくありません。
そこで、過去の急落局面で、小型株の値動きが大型株を中心とした市場全体の値動きと比べてどうであったのかを調べました。
eワラントとは?
そもそもワラントってなに?3,000円程の少額から始められる「eワラントの魅力」をご紹介いたします。
1997年アジア通貨危機・1998年ロシア危機
図1は1997年1月から1998年12月までのTOPIXと3つの規模別指数(大型株、中型株、小型株)、JASDAQ指数の推移です。1997年に、バブル崩壊から回復しそうな兆しが出ていたにもかかわらず財政再建を優先した橋本内閣によって、同年4月に3%から5%への消費税増税(増税額5兆円)が実施されました。また、同時に所得税の特別減税が打ち切られ(2兆円の増税)、社会保険料の負担が増え(2兆円の国民負担増)、公共事業も削減されました(4兆円)。こうして、合計で13兆円も内需を痛めつける政策が採られたため、株価は下落基調となっていました。
こうした状況の中で1997年初めからの値動きをみると、TOPIX小型株指数とJASDAQ指数は、TOPIX、同大型指数、同中型株指数がそれほど下げていない状況にもかかわらず大きく下げています。また、7月にタイバーツへのヘッジファンドの攻撃でアジア通貨危機がはじまると、やはり小型株の値動きを表すJASDAQ指数とTOPIX小型株指数の方が早く、かつ大きく下落しています。
加えて、1998年に夏にロシア財政危機が発生したときには、既に大きく下がっていたJASDAQ指数とTOPIX小型株指数はより大きく下げる結果となりました。
図1:アジア通貨危機・ロシア危機前後の値動き
※ロイターデータよりeワラント証券が作成
2007年サブプライムバブル崩壊
図2は2006年から2009年までのサブプライムバブル崩壊前後の値動きを見たものです。マザーズ指数が2003年から公表されているので、ここではマザーズ指数も加えています。これを見ると、2006年1月のライブドアショックからマザーズ指数は一本調子に下げ続け、それにJASDAQ指数が続いています。ただ、同じ小型株指数でもTOPIX小型株指数は相対的に少ない下げに止まっていました。また2007年前半には、マザーズ指数とJASDAQ指数は下落トレンドが継続していたのに対し、TOPIXとそのサブインデックスである大型、中型、小型株指数はやや持ち直しています。
2007年8月のパリバショック後においては、TOPIXと3つの規模別株価指数とともに、JASDAQ指数とマザーズ指数はすべて急落しています。しかし、2008年3月のベア・スターンズ経営危機の後に一時的に問題が解決に向かうと思われた時期でも、TOPIXと3つの規模別指数が持ち直してもJASDAQ指数もマザーズ指数も下げたまま回復しませんでした。そして2008年9月のリーマンショックの際には、全ての指数が同時に大きく続落する結果となりました。
これには、マザーズ市場が上場基準が緩く、JASDAQがそれに続く性格の新興企業が多いのに対し、TOPIX小型株指数はまがりなりにも厳しい基準を満たした一部上場企業で新興企業が少ないことが影響していると考えられます。また、マザーズやJASDAQからは成功した企業が東証一部に順次“卒業”していくので、特に景気後退期にはIPOが減り、成長できなかった企業だけが残る傾向が出てくる影響があると考えられます。
図2:サブプライムバブル崩壊前後の値動き
※ロイターデータよりeワラント証券が作成
小型株の値動きで投資を考えるなら
1997年のアジア通貨危機、1998年のロシア財政危機、2007年から2008年のサブプライムバブル崩壊前後の値動きから、「マザーズ指数やJASDAQ指数はTOPIXやTOPIX大型株指数に先行して下げる可能性がある」と考えるのであれば、マザーズ指数やJASDAQ指数をTOPIXの先行シグナルと考えることができるかもしれません。また、相場が軟調になりそうな時に小型株、特に新興市場株への投資は危ないという一般的な見方を裏付けるものともいえます。
さらに、2008年前半のように「TOPIXやその規模別指数が上昇しても、マザーズ指数やJASDAQ指数が上昇しない」なら、本格的な景気回復とはならないというシグナルとみることもできそうです。
これを基に投資戦略を考えるなら、マザーズ指数やJASDAQ指数がTOPIXに先行して下げたタイミングでのTOPIXプット(210回、権利行使価格1650、2016年3月9日満期など)の買い、TOPIX先物のショート、日経マイナス3倍トラッカー(15回、2015年9月9日満期など)の買い、ベアETFの買いが一案と思われます。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)
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