「深堀り!注目セクター」も第11回目を迎えました。注目しているセクターはあるけど、そのセクターの将来性がよくわからない上、どの銘柄を買ったらよいかわからない。そう感じる投資家の方は少なくないと思います。そこで、「日本株投資戦略」の鈴木が月に2回(原則15日と月の最終営業日)、注目セクター(業種)の深堀りレポートを配信しています。
今回は「公益」です。文字通り公共サービスを提供している業種で、ここでは「陸運」、「電力・ガス」、「情報・通信」を指すことにします。「公益」を取り上げる理由は、郵政3社(日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)が11/4に新規上場したからです。郵政3社の動きも引き続き注目されるとみられますが、同時に既存の公益セクター銘柄にもスポットが当たる可能性が大きいと考えられます。
今回の「深堀り!注目セクター(公益)」(目次)
いまなぜ「公益」セクターなのか?郵政3社の「上場成功」!「公益セクター」の銘柄に資金シフトも |
表1:主要「公益」銘柄と郵政3社
取引 | チャート | コード | 銘柄正称 | 株価(円) (11/12) |
年初来 高値(円) |
同日付 (月/日) |
年初来 高値比 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9432 | 日本電信電話 | 4,765 | 5,066 | 8/6 | -5.9% | ||
9020 | 東日本旅客鉄道 | 12,065 | 12,815 | 8/5 | -5.9% | ||
9022 | 東海旅客鉄道 | 22,450 | 24,800 | 3/19 | -9.5% | ||
7182 | ゆうちょ銀行 | 1,780 | 1,823 | 11/5 | -2.4% | ||
7181 | かんぽ生命保険 | 3,650 | 4,120 | 11/5 | -11.4% | ||
6178 | 日本郵政 | 1,860 | 1,878 | 11/11 | -1.0% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。郵政3社以外の公益株は、2015年4〜9月の営業利益が市場コンセンサスを上回った企業から選びました。
11/4に、株式市場で「2015年最大のイベント」とされていた郵政3社(日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)が新規上場しました。ご存知の通り、3銘柄とも売出価格を大幅に上回る初値を付け、その後も全銘柄が売出価格を上回る株価水準で推移しています。
郵政3社の値動きは引き続き株式市場で注目されそうです。報道によると、郵政3社の売出株数の8割が国内投資家に割り当てられ、さらにそのうちの95%が個人投資家に割り当てられたようですが、その分機関投資家の保有が少ないとみられ、今後は機関投資家の保有が増える可能性がありそうです。年末には郵政3社のTOPIX組入れが予定されており、そこに向けてインデクッスファンド等の買い需要が膨らむと考えられます。
さらに、郵政3社の「上場成功」が、銘柄比較等を通じて他の「公益セクター」関連銘柄の割安感をクローズアップさせる可能性があり、関連企業の株価上昇につながる可能性もありそうです。表1は、郵政3社と主要な好業績公益株を表にしたものです。今後の株式市場での活躍に期待したいと思います。
このうち、日本電信電話(NTT) は「固定通信」が構造改革の効果で収益力を回復させてきましたので、業績拡大を期待する投資家が増える可能性があります。また、東日本旅客鉄道(JR東日本)や東海旅客鉄道(JR東海)はインバウンド消費拡大の恩恵を受けていますが、政府が訪日外国人の目標(2020年に2千万人)を上方修正させる可能性があり、国策に沿った銘柄としてもスポットをあびそうです。
1987年のNTT株上場(87/2)と東京電力(9501)の急騰から得られる「教訓」は? |
図1:新規上場後急騰したNTT(1987年)
図2:NTT株からの資金シフト期待で上昇した東京電力(1987年)
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。なお、1987年の売買単位はNTT株が1株単位で、東京電力は100株単位
1987年の東京株式市場で最大の話題は「NTT株上場」(1987/2/9)でした。同社株は上場当日に値が付かず、翌日2/10に160万円で初値を付けました。売出価格である119万7千円から33.7%の上昇でした。その後も同社株の上昇は続き、2/23には前日比25万円高の240万円という株価を付けていました。
この頃の市場では、NTT株の上場を背景に公益株の再評価が行われ始めていました。NTT株上場で多くの新しい個人投資家が株式市場にデビューし、NTT株で大きな利益をあげましたが、その資金シフトが期待されたのが公益セクターでした。特に、その中心と考えられていたのが東京電力(9501)でした。2/23にNTT株が大幅高した翌日、東京電力株は1,000円高とストップ高になりました。今では想像しがたい「平成バブル」らしい光景とも言えましょう。
その後、NTT株は上昇を続け、4/22には318万円を付けましたが、いまだにそこが上場来高値になっています。また、東京電力株も同じ4/22に9,420円の上場来高値を記録しました。
現在は平成バブルの時代と異なります。また、原発事故後、安定配当ができなくなった電力株をかつての公共株同様に考えるのは難しいでしょう。しかし、業績好調のNTT株やJR各社など、現在の「公益」各社が活躍する余地は十分ありそうです。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。