「深堀り!注目セクター」も第10回目を迎えました。注目しているセクターはあるけど、そのセクターの将来性がよくわからない上、どの銘柄を買ったらよいかわからない。そう感じる投資家の方は少なくないと思います。そこで、「日本株投資戦略」の鈴木が月に2回(原則15日と月の最終営業日)、注目セクター(業種)の深堀りレポートを配信しています。注目セクターは、SBI証券で保有金額の多い銘柄を参考に選びました。前回の「食料品」に続き、今回は「サービス業」を取り上げます。
「サービス業」は広い意味で捉えると、第3次産業すべてを網羅するとの捉え方もあり、実に幅広い業種で、金融や情報・通信なども入ると考えることもできます。しかし、ここで取り上げるのは東証業種としての「サービス業」です。それでも、様々な種類の「サービスを提供する会社」がありますので、実際に深堀りしていきましょう。
今回の「深堀り!注目セクター(サービス)」(目次)
【「サービス業」のアウトライン】オリエンタルランドが時価総額トップ〜知名度の高い企業が軒並み上位に |
今回は東証業種の中から「サービス業」を取り上げて「深堀り」します。「サービス業」は、東証一部の全時価総額の3.9%(図1)を占め、143社が上場しています。時価総額の規模で数えると第11位の業種ということになります。
表1はそうした「サービス業」における時価総額上位企業を、時価総額の大きな順に並べたものです。上位企業については、その多くが最終消費者も販売先(サービス提供先)になっており、一般的な知名度も高くなっています。第1位は、ディズニーパークで有名なオリエンタルランド(4661)です。高水準の利益をあげていることは確かですが、株主優待制度を導入しており、投資家人気も高くなっているようです。第2位はEコマース(電子商取引)で国内大手の楽天、第3位は人材・販促サービス大手のリクルートホールディングス(6098)と続いています。
図1:「サービス業」は時価総額で第11位の業種
- ※2015/10/27現在のBloombergデータを用いて、SBI証券が作成。
売上高でランキングするとやや順位は異なってきますが、時価総額ランキングと上位の顔ぶれに大きな変化はありません。第1位リクルートホールディングス、第2位博報堂DYホールディングス(2433)、第3位セコム(9735)の後に、広告大手の電通(4324)、eコマースの楽天が続きます。なお、時価総額でトップのオリエンタルランドは売上高の順位で見ると第7位ですが、利益水準が高いことや株主優待制度が評価され、株価が高く、時価総額でトップということになりました。
「サービス業」の上位企業を更に細かい業種で色分けすると、「娯楽・旅行」、「広告」、「インターネット・サービス」、「セキュリティ」等に再分類することができます。一般的に、ひとつの国が経済面で成熟化していくと、次第に第3次産業の比率が高まると考えられ、それを「経済のサービス化」と表現したりします。その意味で「サービス業」には比較的若い企業も多く、成長力に富んだ企業がしっかりと存在しているのが特徴です。
また、上位企業の多くは、その市場で強い競争力を有し、高い利益率を確保している企業が多くなっています。製造業の多くが、海外企業との競争にさらされ、利益率の低下に苦しんでいるのとは対照的です。売上高営業利益率(前期)でみると、オリエンタルランドが23.7%、楽天17.8%、リクルートホールディングス9.4%、電通18.2%等となっています。なお、東証業種「サービス業」143社の売上高営業利益率(加重平均)は9.2%と高水準になっています。
表1:「サービス業」の時価総額上位10社 〜オリエンタルランドがトップ
コード | 銘柄名 | 株価 (円) |
時価総額 (百万円) |
構成比 ※注 |
---|---|---|---|---|
4661 | オリエンタルランド | 6,932 | 2,521,100 | 11.6% |
4755 | 楽天 | 1,698 | 2,428,341 | 11.2% |
6098 | リクルートホールディングス | 3,820 | 2,159,522 | 10.0% |
4324 | 電通 | 6,750 | 1,946,768 | 9.0% |
9735 | セコム | 7,863 | 1,834,349 | 8.5% |
2413 | エムスリー | 2,240 | 724,865 | 3.3% |
4732 | ユー・エス・エス | 2,093 | 655,632 | 3.0% |
2331 | 綜合警備保障 | 5,580 | 569,383 | 2.6% |
2371 | カカクコム | 2,213 | 490,785 | 2.3% |
2433 | 博報堂DYホールディングス | 1,240 | 481,812 | 2.2% |
サービス業上位10社 | 13,812,559 | 2.5% | ||
サービス業143社(東証1,887社) | 21,670,158 | 3.9% |
- ※2015/10/27現在のBloombergデータを用いて、SBI証券が作成。「構成比」は、各銘柄の時価総額が「サービス業」の中で何%を占めているかを示している。「サービス業上位10社」および「サービス業143社」の構成比は、東証一部全体に占める比率。
【「サービス業」の現状を深堀り!】「インターネット・サービス」の普及・拡大が一巡!? |
「サービス業」の株価推移はどのようになっているのでしょうか。その特徴を探るために、主要指数との比較を、過去150週の相関係数(2015/10/23現在)で調べてみたいと思います。結果は以下の通りです。
TOPIX | 0.862(東証業種別指数33業種中第10位) |
日経平均 | 0.841(同12位) |
ドル・円 | 0.519(同19位) |
ユーロ・円 | 0.252(同25位) |
原油相場 | -0.008(同29位) |
CRB商品先物指数 | 0.017(同27位) |
長期金利 | 0.050(同31位) |
米10年国債利回り | 0.159(第25位) |
TOPIXや日経平均株価との相関関係は高い方ではありますが、特筆すべき順位ではないようです。原油相場やCRB商品先物指数、米10年国債利回りとの相関性も小さく、他の業種と比べても低い順位になっています。主要指標との相関性を気にするよりも、各社が提供するサービスによって、注目指標は異なってくると考えた方が良さそうです。
例えばオリエンタルランドは、訪日外国人の増加が追い風になっていますので、毎月政府観光局から発表される訪日外国人数のデータを注視した方が良いと考えられます。広告大手の電通や博報堂DYホールディングスに加え、リクルートホールディングスなどは、企業の宣伝広告費の増減が影響するとみられますので、企業業績を示す法人企業統計等が注目指標になるでしょう。
なお、「サービス業」について考える時に不可欠なのが「インターネット・サービス」の普及です。図2は、業種別株価指数「サービス」の動きをTOPIXの動きと比べたものですが、ここ3年程度こそ、連動性の強い動きとみられるものの、それ以前は、相対的に堅調な業種でした。その背景には、1999年前後からインターネットが普及し始め、インターネット・サービスを提供する企業が上場し始めたことが影響していると考えられます。ちなみに、サイバーエージェントの上場は2000年3月で、楽天の上場は2000年4月でした。現在、インターネット・サービスが主要ビジネスとみられる「サービス業」系の企業は17社で、「サービス業」の時価総額に占める比率は約4分の1になっています。
もっとも「インターネット・サービス」を提供している企業の時価総額ウェイトは2011/8の38.7%をピークに低下傾向にあるようで(図3参照)、今後はさらなる新しいサービス業の台頭が待たれる所となっています。
図2:過去10年では市場をアウトパフォーム
- Bloombergデータ(2015/10/29現在)を用いてSBI証券が作成。月足。
図3:業種別指数「サービス業」に占める「インターネット・サービス企業」のウェイト(%)
- Bloombergデータ(2015/10/29現在)を用いてSBI証券が作成。月足。インターネット・サービス関連企業の合計時価総額を業種別指数「サービス業」で割ったもの。
【「サービス業」の今後を深堀り!】高利益率で高成長が期待される企業はコレ!? |
これまでご説明してきたように、「サービス業」はインターネット・サービスなど、新しく興した産業もあり、国内中心の事業展開の企業も多く、利益率の高い企業も多いことが特徴です。言い方を変えれば、「利益率が高くないとサービス業らしくない」と言えるかもしれません。
そこで、今後が注目される「サービス業」として何銘柄かをご紹介するにあたり「売上高営業利益率(前期)20%以上」を最低条件としてみました。オリエンタルランド(4661)もこの条件を満たします。「サービス業」の時価総額トップ企業で、10/29が中間決算発表日でもあるので、この銘柄については簡単な解説を行ってみました。
その他の銘柄については、上記の利益率の条件の他、市場コンセンサスで今期・来期ともに10%超の営業増益率が見込まれていること(10/29現在)を条件とし、その時価総額の大きい順に解説しています。ぜひ、ご参考にしていただければと思います。
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 投資のポイント |
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4661 | オリエンタルランド | ご存知「東京ディズニーランド」および「東京ディズニーシー」の運営会社です。100株以上保有する投資家に株主優待(詳細条件に注意)として1Day・パスポートが付与されることもあり、個人投資家に人気の高い銘柄です。 10/29に決算発表を実施し、今年度上半期の営業利益は521億円(前年同期比3.4%減)となりました。ほぼ会社計画通りでしたが、市場予想に対しては上振れとなりました。株価は下値を切り上げつつ、保ち合い圏の動きです。 |
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2413 | エムスリー | 病気の相談を希望する一般の人と医師、製薬会社をネット上で結びつけた独自のビジネスモデルで成長。売上高利益率は30%超。基本的には製薬会社が販促コストの大部分をかけてきたMRの活動をネット上に代替し、製薬会社から手数料を徴収する形です。成長に向けた投資期間にあり、年5〜10億円コストが増えるようですが、今期も来期も営業増益率は20%超となる見込み(コンセンサス)です。 | ||
2371 | カカクコム | 価格比較サイトで成長。最近は「食べログ」が急成長し、有料会員数は115万人に達しています。今期は売上高で+18%、営業利益で+17%の増加を見込んでいますが、その通りになれば、07/3期以降、10年連続の2ケタ増収・増益を実現することになります。また09/3期以降は40%台の売上高営業利益率が続いています。11/5に決算発表予定。 | ||
2127 | 日本M&Aセンター | 事業継承を目的としたM&Aの助言が事業の柱になっています。高まるニーズを背景に、今年度上半期の案件制約数は209件と、前年同期の150件から大幅に増加しています。高度な専門性が必要な業務でもあり、競争が激化しにくい分野で、前期の売上高営業利益率は50%弱と高めです。10/30が決算発表予定日ですが、10/15にすでに、中間期の営業利益を29.1億円から35.2億円に上方修正を発表しています。 | ||
2379 | ディップ | 日本最大級のアルバイト情報サイトである「バイトル」を中心に、派遣の仕事探し情報サイト「はたらこねっと」、正社員・派遣・アルバイト等の転職情報・求人情報を検索できる「ディップジョブズ」などを展開しています。前期の売上高営業利益率は24.6%でした。人手不足を背景に求人広告が伸びているようで、上半期は65%の営業増益を達成しました。2月・8月を権利確定月とする株主優待制度を導入しました。 |
- ※日経報道、各社資料をもとにSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。