今回から新コーナーをスタートさせていただきます。名付けて「深堀り!注目セクター」です。注目しているセクターはあるけど、そのセクターの将来性がよくわからない上、どの銘柄を買ったらよいかわからない。そう感じる投資家の方は少なくないと思います。そこで、「日本株投資戦略」の鈴木が月に2回(原則15日と月の最終営業日)、注目セクター(業種)の深堀りレポートを配信いたします。注目セクターは、SBI証券で保有金額の多い銘柄を参考に選びました。
掲載直後にお役に立つことはもちろんのこと、各種セクターのレポートが蓄積した後も、あるセクターについて知りたいときに、参考にできるようなコーナーにしたいと思っております。何卒、よろしくお願い申し上げます。
深堀り!注目セクター【VOL.1 小売】ポイント
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【小売セクターのアウトライン】「イオン」「ファーストリテイ」「7&i」・・・3つの「ナンバーワン」を持つ業界 |
3つのナンバーワン企業を持つ業界
小売業界は、消費者を対象に様々な商品を販売している企業から成り立っています。
株式市場からみると「3つのナンバーワン企業」を擁した業界として注目されます。
(1)日経平均への寄与度が第1位のファーストリテイリング。
(2)株主優待の面で投資家人気第1位のイオン。(注)
(3)世界の小売業界で最も先進的なビジネスモデルと称賛され、コンビニ業界をリードするセブン&アイ・ホールディングス。
図表1は、東証一部に上場する小売企業を時価総額の大きい順に並べたものですが、上記3社がそのまま上位3社になっています。その他、ニトリやローソン、三越伊勢丹など、消費者に直接触れる業界だけに、一般的な知名度の高い企業が多くなっています。
- ※注 弊社株主優待サイトのアクセス数を基準にしています。
図表1:「小売業」における主力企業
取引 | チャート | コード | 銘柄名 |
株価 (円) |
時価総額 (百万円) |
構成比 (対「小売業」) |
---|---|---|---|---|---|---|
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9983 | ファーストリテイリング | 52,740 | 5,594,325 | 17.2% |
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3382 | セブン&アイ・ホールディングス | 5,171 | 4,583,791 | 14.1% |
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8267 | イオン | 1,649 | 1,437,368 | 4.4% |
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9843 | ニトリホールディングス | 9,170 | 1,049,447 | 3.2% |
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3099 | 三越伊勢丹ホールディングス | 2,104 | 831,011 | 2.6% |
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2651 | ローソン | 8,190 | 821,457 | 2.5% |
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7532 | ドンキホーテホールディングス | 9,860 | 777,931 | 2.4% |
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3086 | J.フロント リテイリング | 2,265 | 607,290 | 1.9% |
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7453 | 良品計画 | 21,260 | 596,938 | 1.8% |
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2670 | エービーシー・マート | 7,380 | 556,381 | 1.7% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。構成比は、各銘柄の時価総額が業種合計の時価総額に占める比率。2015/6/15現在。
東証一部で時価総額5.4%を占める
前項で示した小売業界は、東証一部上場企業だけで175社あり、東証一部1,880社の9.3%を占める大きな勢力になっています。時価総額ベースでは、図表2で示した通り東証一部の5.4%を占める主要業種のひとつになっています。
東証一部上場の小売業を収益の面でみたのが図表3です。売上高の面では、イオン、セブン&アイの上位2社が抜けた存在です。ただ、営業利益面では強いコンビニの収益力をテコに、セブン&アイが他社を引き離しています。また、利益率の面では製販一体を武器にファーストリテイリングが、表中では首位になっていますが、ネットでアパレルを扱うスタートトゥデイや、フランス料理等のひらまつなどがより高い利益率を誇ります。
なお、近年は訪日外国人の急増という追い風を受け、百貨店各社の復活が目立ちます。反面、デジタル家電の普及が一巡したことを受けて、ヤマダ電機など大手家電の収益は踊り場を迎えています。
図表2:東証一部全時価総額の5.4%を占める「小売業」

- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。2015/6/11現在。
海外勢では、アマゾンの存在感が強まる
小売業は、各国の消費者の特性や独自の流通網、商習慣等の差異があり、世界的な展開に難しさがあります。日本でも、海外企業が我が国の企業と競合するケースは少ないようです。
ただ、日本国内に巨大な物流センターを構築しているネット販売大手のアマゾンは、2014年の日本売上高が83億ドルに達し、日本円換算の売上高が1兆円クラスとなっていますので、日本の小売業大手に並ぶ規模です。また、総合スーパー「西友」を展開するウォルマートは、売上高が50兆円を超え、世界では最大手の小売企業となっています。
なお、ファーストリテイリングや、セブン&アイなど、近年は海外展開する企業も少なくなく、海外では現地企業との競合が増える可能性が大きそうです。
図表3:「小売業」の売り上げ上位企業(前年度)
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
利益率 |
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8267 | イオン | 7,078,577 | 141,368 | 2.0% |
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3382 | セブン&アイ・ホールディングス | 6,038,948 | 343,331 | 5.7% |
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9831 | ヤマダ電機 | 1,664,370 | 19,918 | 1.2% |
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9983 | ファーストリテイリング | 1,382,935 | 130,402 | 9.4% |
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3099 | 三越伊勢丹ホールディングス | 1,272,130 | 33,083 | 2.6% |
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3086 | Jフロント リテイリング | 1,149,529 | 42,091 | 3.7% |
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8270 | ユニーグループ・ホールディングス | 1,018,959 | 20,237 | 2.0% |
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8233 | 島屋 | 912,523 | 32,022 | 3.5% |
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8242 | エイチ・ツー・オー リテイリング | 844,819 | 21,358 | 2.5% |
- ※Bloomberg、会社公表データをもとにSBI証券が作成。2015/6/11現在。
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【小売業界の現状を深堀り!】予想PERが高めの企業も |
「小売業」と各種指数との関係性は?
図表4は、業種別指数「小売業」とTOPIX(東証株価指数)の動きを比較したものです。
市場全体の動きを示すTOPIXと概ね連動した動きですが、2015年に入った辺りから、小売業の動きが市場全体をアウトパフォームする傾向となっています。消費税増税(2014年4月)の悪影響一巡や、ベア実施による実質賃金増、インバウンド消費の盛り上がり等が追い風とみられます。
ちなみに、TOPIXとの相関係数(過去150週)は0.82と強いですが、他には0.9台の業種も少なくありません。日経平均との相関係数は0.84とやや強めで、ファーストリテイリングの寄与が表れています。同一条件で各種の相関係数をとると
ドル・円・・・・0.56
原油相場・・・・・0.04
CRB商品先物指数・・・・・-0.02
10年国債利回り・・・0.16
となっています。原油・商品相場や金利変化(10年国債利回り)との相関はあまり気にしなくてもよいというデータですが、金利については97年以降、10年国債利回りの水準は概ね2%以下と低金利であり、将来その水準を逸脱した場合は、影響が出る可能性もありそうです。
なお、ドル・円相場については円安の方が株価が上昇しやすいという「意外な結果」ですが、これは、円安の方がTOPIXや日経平均全般が上昇しやすく、それに小売業の株価も引っ張られる傾向があるためと考えられます。
相関係数
2つの指数・指標の間の連動性の強弱を示しています。
-1から+1までの値をとり、数字により次のような傾向があります。
1・・・・まったく同一方向に連動して動く
0・・・・相関性が全くない
-1・・・・まったく逆方向に動く
図表4:業種別指数「小売業」とTOPIX(週足150週)

- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。2015/6/11現在。
図表5:主要小売業の投資指標
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 予想PER (倍) |
ROE | PBR (倍) |
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9983 | ファーストリテイリング | 42.8 | 11.7% | 8.84 |
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3382 | セブン&アイ・ホールディングス | 22.5 | 7.1% | 1.88 |
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8267 | イオン | 34.4 | 2.3% | 0.77 |
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9843 | ニトリホールディングス | 22.7 | 13.3% | 3.28 |
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2651 | ローソン | 22.2 | 12.4% | 3.19 |
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3099 | 三越伊勢丹ホールディングス | 32.7 | 5.2% | 1.43 |
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7532 | ドンキホーテホールディングス | 32.2 | 11.1% | 4.01 |
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7453 | 良品計画 | 31.1 | 12.9% | 4.59 |
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3086 | J.フロント リテイリング | 20.2 | 4.6% | 1.37 |
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2670 | エービーシー・マート | 20.2 | 15.7% | 3.51 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。予想PERは市場コンセンサス。データは2016年6月11日現在。
主要小売業のバリュエーション・業績見通し
なお、主要小売業の各種投資指標や、業績見通しは図表5および図表6の通りです。
東証一部の予想PERが16倍前半程度であることを考えると、主要小売業のPERは高めです。ROEが市場平均である8%を上回る企業が多く、それが好評価になっていること、日経平均への寄与度が採用銘柄でトップのファーストリテイリングや、株主優待で人気のイオンが、その分、割高に買われやすくなっていること、百貨店株に「インバウンド消費関連人気化」の追い風が吹いたこと等が背景にあると考えられています。
主要小売業の今期予想営業増益率をみると概ねプラスになっており、業績については回復傾向を見込む企業が多くなっています。国内では、消費増税の悪影響が一巡すること、引き続き一部業態でインバウンド消費の恩恵が期待されること等が要因です。
図表6:主要小売業の業績見通し
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 予想売上高 (前年度比) |
同営業利益 (前年度比) |
予想PER (倍) |
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9983 | ファーストリテイリング | 20.4% | 57.9% | 42.8 |
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3382 | セブン&アイ・ホールディングス | 4.6% | 9.5% | 22.5 |
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8267 | イオン | 9.7% | 18.2% | 34.4 |
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9843 | ニトリホールディングス | 7.5% | 10.0% | 22.7 |
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2651 | ローソン | 14.1% | 2.3% | 22.2 |
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3099 | 三越伊勢丹ホールディングス | 2.3% | 10.4% | 32.7 |
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7532 | ドンキホーテホールディングス | 9.6% | 15.0% | 32.2 |
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7453 | 良品計画 | 13.9% | 24.3% | 31.1 |
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3086 | J.フロント リテイリング | 2.0% | 8.4% | 20.2 |
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2670 | エービーシー・マート | 9.3% | 9.3% | 20.2 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。予想は市場コンセンサス。データは2016/6/11現在。
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【小売業界の今後を深堀り!】海外に強い企業や、都市部の消費回復を追い風にできる企業等に着目 |
図表7:主要小売統計(月次・前年同月比・%)

- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
小売業界を取り巻く国内の事業環境は改善傾向にあります。消費税増税の影響が一巡したこと、ベア実施等により家計所得の増加が期待されること等が追い風になります。図表7は、百貨店、スーパーマーケット、コンビニなど、主要業態の月次売上高(前年同月比の増減率)をみたものですが、2015年4月は一様に改善傾向にあります。ただ、地域間格差もあり、地方でインバウンド消費の恩恵を受けない所などでは、消費回復はやや遅れる可能性がありそうです。
なお、中長期的には、消費高齢化による内需の縮小が警戒され、海外に収益基盤を拡大させている企業は、小売業界の中で相対的に優位となる可能性があります。
こうした観点から、(1)消費回復やインバウンド消費拡大の恩恵を受けやすい都市部を中心に展開、(2)海外市場の売上高が上昇傾向で、中長期的に収益拡大が可能、(3)株主優待を実施し、キャピタルゲイン以外が期待できる銘柄、のいずれかの条件を満たす銘柄から5銘柄を選び、ご紹介したいと思います。
図表8:先行きに期待したい主要小売5社
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 終値 (6/15) |
投資のポイント |
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3382 | セブン&アイ・ホールディングス | 5,171 | 小売業界では最大の営業利益規模を誇る。稼ぎ頭のコンビニは、世界の小売業の中でも卓越したビジネスモデルとの評価も。海外売上高比率は北米を中心に35%に達してきた。 |
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7453 | 良品計画 | 21,260 | 製造小売の形態を取る。生活雑貨を中心としつつ、衣・食・住の全分野で展開しているのが特徴。売上高の34%が海外で、特にアジア、中国に強い。 |
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8242 | エイチ・ツー・オー リテイリング | 2,294 | 関西地区を中心に百貨店やスーパーを展開している。梅田駅前の阪急本店は好調。阪神本店は冴えないが、23年竣工で建て替えが決まっている。4月、5月と全店売上高は増加。 |
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3048 | ビックカメラ | 1,405 | 家電量販店の中では、首都圏を中心とする都市部を中心に出店しているのが特徴。100株以上の株式保有者(2月・8月末)に買い物優待券を提供。 |
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3222 | ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス | 1,052 | イオン系。首都圏地盤のマルエツ、カスミ、マックスバリュー関東が統合して誕生した。早期に統合効果発現が期待される。100株以上の保有者(2月末・8月末)に割引優待券進呈。 |
- ※各種資料をもとにSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。