1/29(金)の日銀金融政策決定会合で、黒田バズーカ第3弾として「マイナス金利」の導入が発表されました。株式市場には、大きな影響があり、日経平均株価は、1/28(木)終値17,041.45円から、2/1(月)高値17,905.37円まで、864円弱の上昇となりました。今回の「福の神レポート」では、「マイナス金利」とは何かを簡単に解説し、また「マイナス金利」がもたらすことについて想定します。最後に「マイナス金利」が追い風になる投資戦略・銘柄をご紹介します。
マイナス金利発表後は再び下げるなど、大荒れの株式相場ですが、「アベノミクスの金融緩和相場は終了」と思っていたところでの、「マイナス金利」の導入によって第二幕が切って落とされたようです。ぜひ、この第二幕の相場に上手く乗りましょう。
アベノミクス相場を支えていた日銀の金融緩和が、1/29(金)に新たな次元に踏み出しました。図1に示されるように、今までは、量(年間80兆円)、質(ETFやREITの買い入れ)だったものに、金利が加わったのです。ゼロ金利政策を取っていたので、金利が低下しほぼゼロ金利で、これ以上の下げ余地が無いと思われていた金利に「マイナス金利」という新たな手法を導入したのです。
日銀は、「銀行の銀行」と言われるように、民間銀行の余剰資金などは、日銀の当座預金に預けられます。今までは、この当座預金に0.1%の付利と呼ばれる金利がついていました。しかし今後は、全てではなく一部ではありますが、当座預金に-0.1%というマイナス金利を提示することで、金利全般により強い下押し圧力を加えることになるのです。(図1参照)
このことによって、実際に金利は急低下しました。日本国債10年は、一時0.05%割れまで金利が低下しました。(図2参照)金利がプラスとなる日本国債は9年以上で、8年まではマイナス金利となっています。(2/3現在、図3参照)
銀行は、マイナス金利を嫌って現金を金庫に積んでおけばよいように思われますが、金融機関の現金保有が大きく増加した場合、その増加分に相当する日銀当座預金にマイナス金利がかかるようにしているため、現金のまま保有することが難しいのです。極端な話、-0.1%以下のマイナス幅であれば国債を買ったほうが得になる計算です。
日銀の黒田総裁は、2/3(水)の講演で、-0.1%に留まらず、更なるマイナス幅の拡大も将来的に考えると言っています。今までの「量・質による金融緩和」には限界がありました。量の問題は、日本国債の発行残高の問題です。日銀の保有残高が巨額になり、流動性の問題も生じていてこれ以上の増加は難しい状態でした。質についても、ETFやREIT以外の金融資産の残高は小さいので難しいです。しかし、金利は今までゼロが下限だと思われていたものに、マイナス金利まで踏み出したことで、ほぼ無限の緩和余地が出てきたのです。
図1:「黒田バズーカ第3弾」の意義

- 出典:【講演】黒田総裁「『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』の導入」(きさらぎ会)の資料
図2:日本国債10年 日足チャート(3ヵ月)

図3:各種債券の利回り

下記の3つが、藤本が考える「マイナス金利」で変化することのキーワードとなります。
1.銀行へのペナルティ
2.借入金金利の低下
3.賃料収入を目的とした不動産投資
それぞれについて説明していきましょう。
1.銀行へのペナルティ
銀行は、個人・企業から預金という形でお金を預かり、それを住宅ローンや、事業融資などで個人・企業に貸し出します。預金金利などの調達コストと貸出金利との利ざやを稼ぐのが本業です。しかし現時点では、普通預金で資金を集め、その資金を日銀の当座預金に預金すると、利ざやが稼げます。銀行としては特に努力なく、少ない利ざやではありますが確実に儲かるビジネスでした。日銀の当座預金の一部をマイナス金利にすることで、貸出しに消極的な銀行にペナルティを与えることになります。今回のマイナス金利は、多かれ少なかれほぼ全ての銀行に悪影響を及ぼすと想定されます。
2.借入金金利の低下
金利全般により強い下押し圧力が加わることによって、金利全般が低下します。そうすると借入金金利も低下することになります。
3.賃料収入を目的とした不動産投資
金利低下により、債券投資が困難になります。円ベースでの安定的な収益を確保する手法として、 賃料収入を目的とした不動産投資がより積極化する可能性があります。また、不動産投資の場合、自己資金のみでなく、借入金を活用した投資が多いので、借入金金利の低下も合わせて追い風となります。
それでは、上記の3つのキーワードに関わる主な投資戦略・銘柄をそれぞれご紹介しましょう。
1.銀行へのペナルティ
資産運用のノウハウを持ち、貸出先も数多くあるメガバンクと、ノウハウも少なく、貸出先の少ない地方銀行では、困難の度合いが異なります。また、地方銀行は今後合従連衡の動きが更に活発化するため、時価総額下位の地方銀行は買収の対象になる可能性があります。また、予想配当利回りの高い銘柄は、配当狙いの買いが期待出来ます。
☆投資戦略
・マイナス金利が逆に追い風となる銀行の買い
セブン銀行(8410)
・高配当利回りの時価総額下位の地方銀行の押し目買い
島根銀行(7150)
・相対的に優位なメガバンクの押し目買い
三井住友フィナンシャルグループ(8316)
2.借入金金利の低下
資産が多く、借入金の多い代表的な業種はリース会社です。リース業界は、マイナス金利が大きな追い風となります。
☆投資戦略
・リース業界のトップ会社の買い
オリックス(8591)
3.不動産運用
賃料目的とした不動産投資に関する銘柄や、REIT(不動産投信)に注目が集まりそうです。
☆投資戦略
・REIT指数上昇に掛け、東証REIT指数に連動するETFの買い
NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信(1343)
・REITなどに不動産を販売する企業の買い
日本商業開発(3252)
アルデプロ(8925)
銘柄コード | 8591 | 銘柄名 | 取引 | ![]() ![]() |
|
---|---|---|---|---|---|
ポイント |
東京都港区浜松町に本社がある日本最大の総合リース企業です。M&Aに積極的で、今年4月からは、関空・伊丹両空港の運営事業を開始します。 |
||||
日足チャート![]() |
- ※チャートは、すべて当社WEBサイトからSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。
免責事項・注意事項
- 本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客様が損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
重要な開示事項(利益相反関係等)について