年内に控える3つの需給懸念と制度変更
日経平均株価は、2013年9月27日高値14,818円を付けてから下落基調が続いています。国内要因としては、2013年10月1日の安倍首相の消費税増税決定に伴う経済対策について、特段びっくりするようなことはなく、「材料出尽くし」と受け取られたことです。その後の黒田日銀総裁の記者会見でも、特に目新しい材料はなかったようです。また、海外要因では、米国が財政協議を巡る交渉が難航して、なんと一部の政府機関が閉鎖(Shut Down)されてしまったことです。米国株式は大きくは下げないものの、さすがにドルは買いにくく、ドル安となり日本株にとっては逆風です。
このような下げ基調になってきますと、年内に控える3つの需給懸念が台頭してきそうです。その需給懸念とは、以下の3つです。
1:2013年5月高値の信用買い残の解消懸念
2:エクイティファイナンスの増加
3:証券優遇税制廃止による駆け込み売り(来年開始のNISA対応)
また、これに加えて、11月5日より制度変更として「空売り規制の見直し」も施行される予定です。
今回の福の神レポートでは、この3つの懸念と制度変更について、解説いたします。
5月高値の信用買い残の解消懸念
日経平均株価の年初来高値は、2013年5月23日の15,943円です。信用買い残の最大値は2013年5月31日の3兆1,719億円です。制度信用の場合、6ヶ月間が信用期日となるので、2013年11月末に掛けて5月中に信用買いを行った信用買い残の期日が来ることになります。だから、今後11月末に掛けて信用買い残の処分売りが膨らむ可能性があります。
全体としては、そうなのですが個別銘柄によって、状況は異なると思われます。
「戻って欲しい銘柄ほど、戻らない」「投げたところが底」などとよく言われるように、高値での信用残高を抱えている投資家が多い場合、「戻り売り」が懸念されて株価が中々戻りにくいことが多々あります。また、信用期日で安値で投げ売りをさせられたところが底値で、そこから戻り想場に入ることもよくあることでしょう。
対応策
- 2013年5月高値を買い付けた銘柄を保有の場合、銘柄ごとの高値をチェック。5月後半が年初来高値の場合、一旦手仕舞売りもひとつの手です。
- 処分売りが終われば、戻り相場に入る可能性もあるため、毎週火曜日の夜間に更新される個別銘柄の信用残高の推移をチェックして、高値期日の通過状況をチェックして、「相場の目先の底」を掴む努力をしましょう。(この場合、まずは打診買いで少額買いを入れるのがオススメです。)
グラフ1:日経平均株価(週足)と信用買い残・売り残
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
エクイティファイナンス増加
2013年10月には下記の表1の銘柄が既に、公募・売出などのエクイティファイナンスが発表されています。このほかにも、三菱自動車などの大型ファイナンスについて日経新聞に観測記事が掲載されています。この表1の中では、シャープのように以前から、エクイティファンナンスの可能性が指摘されていた財務基盤の弱い銘柄もありますが、東証1部などに市場変更に伴い、公募・売出をする銘柄も増えています。その他、イオン系のREIT(不動産投信)などの大型上場も噂されていることから、年末に掛けてエクイティファイナンスラッシュとなり、株式の需給に悪影響を与える可能性がありそうです。
対応策
- 保有銘柄のエクイティファイナンスが発表されたら、一旦手仕舞いを考えるのもひとつの手法
- 年内に既にエクイティファイナンス実施済みの銘柄は、よっぽどのことがなければ、年内に再度のエクイティファイナンスは実施しない可能性が高いので、既に実施・発表済みの銘柄から、投資対象銘柄を選択してみてはどうか
表1:発表済みのエクイティファイナンス
- ※2013/10/7時点の各種公表データをもとに、SBI証券が作成
証券優遇税制廃止による駆け込み売り(来年開始のNISA対応)
2014年1月からスタートする「少額投資非課税制度(NISA)」の導入と引き換えに決まった証券優遇税制の廃止も年内の株式の需給に大きな影響を与えそうです。
例えば、2013年12月後半に、50万円の含み益があった場合のキャピタルゲイン課税を考えてみましょう。
2013年12月30日受渡し(2013年12月25日約定)で売却した場合の課税額
50万円×10.147%=50,735円
同じ株価で年明けの2014年1月6日受渡し(2013年12月26日約定)で売却した場合の課税額
50万×20.315%=101,575円
その差額は、50,840円となり、たった1営業日変わるだけで払う税額が5万円以上も差がつくことになります。
このことから、藤本は、以下のような相場展開を半歩先読みします。
- 10月中旬から年末に掛けて軟調な相場が予想されます。多くの個人投資家は株などのキャピタルゲイン課税がアップする前に、いったん利益を確定させる動きに出る
- しかも、買い直すならNISA口座でと考える投資家は、新たな買いは年明けまで待つので、年末は買い手不在となりそう
対応策
- 自分の保有株をチェックして、多額の含み益のある銘柄については、一旦利食い売りを先行させるのもひとつの手法
- 買戻しについては、株価がいつのタイミングで底を打つのか、簡単に想定できるものではないので、何回かに分けて、安値局面で買うのも良さそう
制度変更「空売り規制の見直し」
2013年8月26日、空売り規制を見直す政令、内閣府令、告示が公布されています。今回の注目ポイントは、空売り規制のうち、価格規制については常時規制がかかる改正前の枠組みを見直し、前日終値から10%以上下落した場合に発動するトリガー方式に改めていることです。
空売り規制については、2008年リーマンショック時の株式市場の状況に対して、時限的措置として導入されたもので、「Naked Short Sellingの禁止」「空売りポジションの報告・公表」などが実施されました。これが、東日本大震災などによって延長され続けてきたものが、今回恒久化されるものです。
今回のポイントである価格規制については、
改正前(※1)
相場の上昇局面 直前の価格未満での空売り禁止
相場の下落局面 直前の価格以下での空売り禁止
改正後
主たる市場に当日分、前日分の取引において、10%以上下落した場合のみ、価格規制の対象となる
- ※1 改正前は、相場の上昇局面・下落局面かは直前の価格と、さらにもうひとつ前の価格を比較して、上昇していれば上昇局面、下落していれば下落局面と判断します。同一の場合は、さらに遡って直前の価格と異なる価格で最も近い価格と比較して判断します。
今までは、下値を叩いての空売りが常時禁止されていたのに対して、前日10%下落した翌営業日または、当日に10%以上下落した場合のみ、価格規制の対象となるわけです。
この改正によって、ヘッジファンドなどの空売りは、いままで指値で上値で指値しか出来なかったのに対して、前営業日または当日に10%以上下落していなければ、価格規制にとらわれず、自由に空売りすることが可能になります。
株価全体の下落局面に関しては、空売りが個別に下げを加速する可能性がありそうです。
価格規制に関しては、信用取引を利用した50単位未満の空売りについては、今までも例外的に対象外でした。
対応策
- 株価の下落局面(前日・当日の下落率10%未満の場合)でも、信用取引を活用すれば自由に空売りすることが出来るようになります。株式投資の自由度が高まっています。 短期的な売買については、買いだけでなく、信用取引を活用した空売りを考慮してもよさそうです。
しかし、来年には!
今回のレポートでは、相場の下落要因について解説してきましたが、むやみに悲観視する必要はありません。上記の3つの需給懸念については、2013年内に限ったテクニカル的な一過性の需給懸念に過ぎないからです。逆に年が明ければ、年内に利食いを行った待機資金が豊富にあり、NISA口座での買いの増加も期待できるからです。
また、企業業績の大幅回復で2013年末のボーナスは久々に高水準が期待出来そうです。消費税増税前の駆け込み需要も見込まれることから、2014年1月以降の株価は堅調相場が期待出来そうです。
2014年1月以降にNISA口座での買い付けが期待できる銘柄は、SBI証券の株主優待検索を使えば、かんたんに検索可能です。
例えば以下の条件で検索を行った場合、2013年10月9日基準では37銘柄ありました。
この中から、年末に掛けて想定通り安値局面が訪れたら、バーゲンハンティング(安値拾い)の買いを検討してみては、いかがでしょうか?
株主優待検索条件
優待権利確定月 |
3月 |
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優待獲得に必要な金額 |
〜10万円 |
こだわり条件 |
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PER平均以下 |
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配当利回り平均以上 |
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株主優待検索表示例(2013年10月9日基準)
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