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金はインフレ懸念でETFに投資資金が戻る
2022/5/23
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金は米FRBの大幅利上げ見通しが上値を抑える要因
5月16日の週のニューヨーク金市場は、米小売大手の四半期利益半減や米経済指標の悪化を受けてドル安に振れたことが支援要因になった。中心限月となる6月限は12日以来の高値1,848.2ドルを付けた。4月の米小売売上高は前月比0.9%増と事前予想の1.1%増を下回った。ただ前月分が1.4%増と前回発表の0.5%増から上方改定された。自動車の購入や外食への支出が拡大し、消費堅調が示された。しかし、米小売大手ターゲットの四半期利益が半減すると、インフレ高進の影響に対する懸念が出て株安に振れた。5月の米フィラデルフィア地区連銀業況指数は2.6と前月の17.6から低下し、2年ぶりの低水準となった。ニューヨーク連銀製造業業況指数がマイナス11.6と前月の24.6から急低下したことに加え、住宅市場の減速も示され、米国の景気減速懸念が高まった。米国債の利回り低下を受けてドル安に振れ、金の支援要因になった。一方、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ見通しに変わりがないことは金の上値を抑える要因である。パウエル米FRB議長は、インフレ低下の確証を得られなければ「FRBはさらに積極的な行動を検討する必要がある」と述べた。米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は、米FRBはあと2回の0.50%ポイントの利上げを行い、その後は利上げ幅を0.25%ポイントに戻すとの見方を示した。米FRBは2.0〜2.5%の中立金利への利上げを機械的に行うとみられており、米短期金利先物市場では6、7月の利上げが織り込まれている。その後の利上げはインフレ次第とみられ、米セントルイス地区連銀のブラード総裁は、米FRBは高インフレをより迅速に抑制するために年内に政策金利を3.5%まで引き上げるべきとの見解を示した。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は、世界の金融当局者は度重なるインフレショックを想定する必要があるかもしれないとの見方を示した。ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格や食料価格への圧力増大、新型コロナウイルス封じ込めに向けた中国の「ゼロコロナ」政策による製造業への影響、サプライチェーン(供給網)の再構築の必要性などにより中銀が景気後退(リセッション)を引き起こすことなくインフレを抑制するのは難しくなっていると指摘した。ただ新規感染者の減少を受けて中国上海市が6月に制限措置を全面的に解除するとの期待感も出ており、今後の行方を確認したい。また中国人民銀行(中央銀行)は19日、貸出金利の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレート)の5年物を15ベーシスポイント(bp)引き下げて4.45%とした。景気減速懸念が後退するかどうかも焦点である。
ロシア国防省は19日、ウクライナ南東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所に最後まで立てこもっていた531人のウクライナ兵が投降し、包囲は終了したと発表した。ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、ロシア軍を2月24日の侵攻開始前の状態まで撤退させられれば「勝利だ」との見方を示した。また「戦争は対話で終わる」と述べ、南部クリミアや親ロ派が実効支配している東部は交渉で解決するとした。ウクライナは欧米に軍事支援を求めており、今後の戦闘の行方を確認したい。一方、フィンランドとスウェーデンが18日、北大西洋条約機構(NATO)加盟を正式に申請した。ただトルコのエルドアン大統領はテロ組織への支援を理由に両国のNATO加盟に反対している。
5月20日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比7.54トン増の1,063.43トンとなった。インフレ高進の悪影響が懸念されるなか、安値拾いの買いが入った。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月17日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは17万5,360枚となり、前週の19万3,315枚から縮小した。今回は手じまい売りが5,936枚、新規売りが1万2,019枚出て、1万7,955枚買い越し幅を拡大した。
プラチナは供給過剰見通しもレンジ相場を継続
ニューヨーク・プラチナ7月限は供給過剰見通しが示されたが、米国債の利回り低下や金堅調を受けて下げ一服となった。ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)報告で今年の供給過剰見通しが改めて示された。ただ前年から過剰幅が縮小するとの見通しに変わりはない。景気減速懸念や米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ見通しによる株安が圧迫要因だが、売られ過ぎとの見方から安値で買い戻しが入りやすい。900〜1,000ドルのレンジ相場が続いており、当面は方向性を模索する動きが続きそうだ。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、19日のロンドンで16.22トン(前週末16.36トン)、ニューヨークで36.67トン(同36.53トン)、南アで10.65トン(同10.74トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月17日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2,203枚となり、前週の1,363枚から拡大した。買い戻しが手じまい売りを上回った。
ニューヨーク金は1,800ドル前後で下げ一服
ニューヨーク金6月限は、米小売大手の四半期利益が半減し、インフレ高進の影響が懸念されるなか、米国債の利回り低下によるドル安などを受けて堅調となり、12日以来の高値1,848.2ドルを付けた。1,800ドル前後で下げ止まるなか、金ETF(上場投信)に投資資金が戻ったことも支援要因である。テクニカル面では中長期の節目となる200日移動平均線(20日1,840.9ドル)を試しており、突破できるかどうかが焦点である。ただ米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ見通しに変わりはなく、米国債の利回り上昇が再開すると、戻りを売られる可能性が出てくる。今週は第1四半期の米国内総生産(GDP)改定値などの発表がある。
5月23日からの週の注目ポイント
23日 | カナダ休場 | ☆ |
独ifo景況感指数(5月) | ☆☆ | |
24日 | ユーロ圏製造業購買担当者景況指数(5月速報) | ☆☆ |
ユーロ圏サービス業購買担当者景況指数(5月速報) | ☆☆ | |
米新築住宅販売(4月) | ☆☆☆ | |
25日 | NZ準備銀行政策金利公表 | ☆☆☆ |
独国内総生産(1-3月期確報 | ☆☆☆ | |
米耐久財受注(4月速報) | ☆☆ | |
米FOMC議事録公表 | ☆☆☆ | |
26日 | スイス休場 | ☆ |
米国内総生産(1-3月期改定値) | ☆☆☆ | |
米新規失業保険申請件数 | ☆☆ | |
米中古住宅販売仮契約指数(4月) | ☆☆ | |
27日 | 米個人所得・支出(4月) | ☆☆☆ |
米卸売在庫(4月速報) | ☆ | |
米ミシガン大消費者信頼感指数(5月確報) | ☆☆ |
※重要度を3段階で表示
金(現物1oz.あたり)日足 6ヵ月
<参照>SBI証券>マーケットデータより
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