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金はワクチン開発進展が圧迫要因に
2020/11/16
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金ETFから投資資金が流出すると下落基調に転じる可能性も
11月9日の週のニューヨーク金市場は米製薬大手ファイザーのワクチン開発進展を受けて景気回復期待の高まりからドル高に振れたことを受けて急落し、期近12月限は7月21日以来の高値1,848.0ドルを付けた。その後は、新型コロナウイルスの感染急増による景気の先行き懸念を受けて下げ一服となったが、中長期の見通しが改善しており、金ETF(上場投信)から投資資金の流出が続くと、下落基調に転じる可能性が出てきた。
米製薬大手ファイザーは9日、独バイオ医薬ベンチャーのビオンテックと共同開発する新型コロナウイルス感染症ワクチンの臨床試験(治験)で感染を防ぐ有効率が90%を超えたと発表した。株価が急伸して米国債の利回りが上昇し、ドル高に転じたことが金の圧迫要因になった。アザー米厚生長官は、同社が予定通りに新型コロナウイルスワクチン候補の承認申請を規制当局に行えば、12月にもワクチン接種が開始できるとの見通しを示した。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)について、ワクチン開発の急進展により、「大幅に長期化」することはないとの見方を示した。
新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて欧州諸国がロックダウン(投資封鎖)を11月に再導入し、景気の先行き懸念が残っている。ミンク農場で新型コロナウイルスの変異種がみつかっており、封じ込められるかどうかも焦点である。一方、米国ではイリノイなど13州で過去2週間の新規感染者数が倍増した。ニューヨーク州やカリフォルニア州、中西部の大流行地などの州当局は感染リスクが高まる冬季を前に制限措置を再び実施した。ただトランプ米大統領は、絶対にロックダウンは行わないと述べている。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長とラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は新型コロナウイルスワクチンの治験で良好な結果が出たことを歓迎したが、経済の先行きは不透明なままだとした。ECB総裁は来月に予定する追加金融緩和では、新型コロナウイルス向けの「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」や、市中銀行を対象とした長期資金供給オペ(TLTRO)の拡大が焦点になるとの見方を示した。各国中銀の量的緩和が続くことは金の下支え要因である。
米大統領選では民主党のバイデン前副大統領が勝利宣言した。トランプ米大統領は不正があったとして敗北を認めず、法廷闘争に持ち込むとした。しかし、13日に全州の当確が出そろい、バイデン氏が全米538人の選挙人のうち306人、トランプ氏が232人を獲得し、トランプ氏が選挙結果を覆せる可能性はほぼなくなった。トランプ氏は15日、「彼が勝利したのは、選挙が不正だったからだ」とツイートした。
11月13日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比25.98トン減の1,234.32トンとなった。景気回復期待の高まりを受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月3日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは24万2,909枚と前週の24万8,634枚から縮小した。10日時点の建玉明細は祝日の影響で16日に発表される。
プラチナはドル高や金急落が圧迫も景気回復期待が下支え
ニューヨーク・プラチナ1月限は、ドル高や金急落を受けて849.2ドルまで下落したが、ドル高が一服すると、押し目を買われて地合いを引き締めた。新型コロナウイルスのワクチン開発進展を受けて米株式市場で、ハイテク株が多いナスダック連動ETF(上場投信)から資金が引き揚げられ、景気に敏感なS&P500連動ETFやダウ平均連動ETFが買われた。プラチナは自動車販売急減による需要減少などを受けて貴金属のなかで割安銘柄となっており、中長期的に景気が改善するとの見通しが強まると、安値拾いの買いが入るとみられる。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、12日のロンドンで18.95トン(前週末18.83トン)、13日のニューヨークで39.04トン(同39.04トン)、12日の南アで16.39トン(同16.42トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月3日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは9,763枚と前週の1万0,051枚から縮小した。10日時点の建玉明細は祝日の影響で16日に発表される。
ニューヨーク金は景気回復期待で大陰線が現れる
ニューヨーク金12月限は新型コロナウイルスのワクチン開発進展で景気回復期待が高まり、ドル高に振れたことを受けて急落し、7月21日以来の安値1,848.0ドルを付けた。新型コロナウイルスの感染拡大が続き、景気の先行き懸念が残り、売り一巡後は下げ一服となったが、中長期の見通し改善を受けて金ETF(上場投信)から投資資金の一部が流出した。ワクチンが承認され、生産・配布となれば楽観見通しが強まって金は下落基調に転じる可能性が出てくる。
11月16日からの週の注目ポイント
16日 | 国内総生産(7-9月期1次速報) | ☆☆☆ |
中国小売売上高(10月) | ☆☆ | |
中国鉱工業生産(10月) | ☆☆ | |
米ニューヨーク連銀製造業景況指数(11月) | ☆☆ | |
17日 | 米小売売上高(10月) | ☆☆☆ |
米輸出入物価指数(10月) | ☆ | |
米鉱工業生産・設備稼働率(10月) | ☆☆ | |
米企業在庫(9月) | ☆ | |
対米証券投資(9月) | ☆☆ | |
18日 | 貿易収支(10月速報) | ☆☆ |
英消費者物価指数(10月) | ☆☆ | |
ユーロ圏消費者物価指数(10月確報) | ☆☆☆ | |
米住宅着工・許可件数(10月) | ☆☆ | |
19日 | 米新規失業保険申請件数 | ☆☆ |
米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(11月) | ☆☆ | |
米中古住宅販売統計(10月) | ☆☆ | |
20日 | 消費者物価指数(10月) | ☆☆☆ |
英小売売上高指数(10月) | ☆☆ |
※重要度を3段階で表示
金(現物1oz.あたり)日足 6ヵ月
<参照>SBI証券>マーケットデータより
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