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2024-04-30 21:25:17

原油価格上昇 リスクシナリオ顕在化

2024/4/10
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

原油価格が上昇を続けており、国際原油市場のベンチマークであるBrent原油は原稿執筆時点で90ドルを目指して上昇している。足下の原油価格上昇は、1.想定以上に最大消費国である米国の景気がよいこと、2.OPECプラスの減産の効果が出ていること、3.地政学的リスクの高まりによる供給途絶発生の懸念が高まっていること、が背景にあると考えられる。

この中で最も価格に影響が大きいのが、1.の米国の景気回復期待の高まりであると考えられる。現在、世界で最も原油を輸入している国は中国であり、2023年の中国原油輸入量はバレル換算で1,133万バレル/日と、これまで1位の輸入国だった米国(647万8,000バレル/日)の倍近い。そのため、中国の需要増加は原油価格の絶対水準に影響を与えていることは間違いないが、中国の統計発表後に原油価格が変動することは実は稀だ。明確な理由は不明だが、依然、最大消費国である米国の経済統計や景況感に原油価格が左右されているケースが多いという印象を強く受ける。

過去を振り返って見ると、リーマンショック発生前、米国が利下げを始める前までの2007年頃までは、WTI原油とドル指数は連動していた。しかし、利下げを始めたあたりからWTIとドル指数の逆相関性はより強まり、リーマンショック発生後の大規模な量的緩和(QE)が行われた2008年から量的緩和の規模縮小(QT)が終了した2018年頃までは、需給要因以上に金融要因の影響が大きく、ドル指数と原油価格の動きは逆相関の関係になっていた。これは、「金融要因>需給ファンダメンタルズ要因」だったことに起因していると考えられる。
しかし、QTが終了した2018年以降は、ドル指数と原油価格の連動性は回復した。これは、景気刺激のための金融政策が終了し、「金融要因<ファンダメンタルズ要因」となった影響が小さくないと考えられる。このファンダメンタルズ要因が金融要因の影響を上回っている状況だと、最大消費国である米国の景況感の改善は「景気回復、金利上昇・ドル高、原油需要増加・原油高」となり、悪化すると「米景気悪化、金利低下・ドル安、原油需要減少・原油安」になるためと考えられる。ちなみに、一般にドル高は原油安、ドル安は原油高という説明がされることが多いが、これはどのドル建て商品についても言えることで、その商品の物質的価値に変化がない場合、ドルが強くなればより少ないドルでその商品の購入が可能であり、ドルが弱くなればその商品を購入するためには、より多くのドルが必要になるからだ。しかし、景気の循環を受けた需要の増減に伴う需給バランスの変化の影響が、ドル指数の影響を上回るため、単純にドル高の時に必ずしも原油価格が下落しないことを意味している。
足下は、コロナショック後のQE4実施、米経済活動の回復に伴う需要の増加があったため、QE中だったが原油価格とドル指数の動きは一致していた。しかし2022年から始まった利上げとQT2の影響で米景気が減速する局面では、ドル指数と原油価格は一時的に逆の動きとなり、直近ではドル指数と原油価格はほぼ同じ動きとなっている。

出所:CME、マーケット・リスク・アドバイザリー

つまり、米景気動向が今後の原油価格動向を左右する可能性が高い。米景気の先行指標であるISM製造業指数も原油価格に対する説明力が高いが、昨年7月頃に景況感の悪化は底入れしたと考えられるため、このまま景気が回復すれば原油価格は上昇基調を辿る可能性が高い。
そしてここで2.と3.の影響が無視できなくなってくる。2.に関してOPECの減産は通常、景気が減速して価格が下落、需要も減少するので需給バランスを調整して価格を維持するために行われるものであり、「価格を下支えする」効果を期待したものだ。しかし、景気回復局面では下支えではなく、価格押し上げ要因となる。3.は効果としてはOPECの減産と同じであるが、(a)地政学的リスクの高まりはどこで発生するか分らないため、投機筋がショートポジションを継続的に取り難くなる(まずは買い戻しが入る)、(b)攻撃対象が精油設備や油田そのものになった場合、恒久的に生産能力が失われる可能性がある、といった違いがある。ただこれらは発生するまで分らないため、市場は(a)の対応は急ぐものの(b)ヘの対応は発生してから、というのが通例である。そのため中東とロシア・ウクライナで(b)に該当する事象が発生した場合、現在の景気回復期待が高まる中では、さらに原油価格は上昇しやすい。
ただ、原油価格の上昇や景況感の改善は米国にインフレをもたらす可能性があり、既にそのリスクも指摘され始めた。これまで景気減速で政策金利の引下げが期待されていたが、これが見送られる可能性はあり、場合によるとサマーズ元財務長官が指摘するように「利上げ」の可能性も出てくる。この場合、2022年に見られた「金融要因>ファンダメンタルズ要因」と同じ状態になり原油価格が下落する展開も想定される。また、高金利政策継続による企業業績の悪化・長期金利の上昇による株価急落、があった場合、原油を投資対象とするファンドの売りも予想されるため、このパスからも価格が急落する可能性もある。結局、コロナ時のQE4規模が余りに大きかったため、インフレからの脱却が難しく景気回復を素直に喜べない状況にあると言えるのではないか。

当面、原油価格は景気回復期待で上昇余地を探ることになろうが、金融政策がタカ派に転じる可能性が意識される中で、下振れリスクを伴う上昇になると予想される。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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