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2024-04-16 08:09:14

粗糖価格は底堅い推移に

2022/7/25
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

2020年に欧米でコロナの影響によるロックダウンの動きが広がり、経済活動が強制停止された時に粗糖価格は急落したが、その後「エネルギー供給に制限された状態」で景気が回復したことで価格は上昇、昨年から続くラニーニャ現象の影響で各地が厳冬や猛暑、渇水に見舞われており、特殊なエネルギー需要の増加があったことも価格上昇の一因となった。粗糖は文字通り砂糖(白糖)向けに加工される原料の1つであるが、同時にエタノールなどの燃料の原料にも用いられ、フレックス車が普及しているブラジルなどではガソリンの代替燃料として用いられている。また、米国ではガソリンの添加材として用いられているためガソリン需要・価格動向にエタノール向けの粗糖価格は連動しやすい。今年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻したため、西側主要国は制裁としてロシア産原油や石油製品の輸入を停止、それに伴う原油価格上昇がガソリン価格を押し上げ、さらにエタノール向けの需要を押し上げたことも価格高騰に寄与した。

これらを背景として粗糖価格は高騰し、2016年以来となる20セント/ポンドを上回る水準まで上昇していたが、足下天井感が出始めている。先行きのエネルギー需要の減速観測が強まったためだ。供給面の状況改善による価格下落が望み難くなる中、欧米は「金融引締めによって景気を悪化させ、需給をバランスさせる」政策に舵を切っているためだ。また価格高騰が需要を減じるレーショニングもエネルギー市場では顕在化しつつある状況。米国の金融引締めが続くならば今後、粗糖価格の上値は重くなると予想される。

しかし、価格が下落したとしても底堅い推移になると予想される。米農務省のデータを元にすると2022-2023年の世界の粗糖需給バランスはブラジルと中国、ロシアの生産増加がウクライナとインドの減産を相殺するため、前年比+170万7,000トンの1億8,289万1,000トンが見込まれており、需要も前年比+22万3,000トンの1億7,884万3,000トンと生産を下回る見通しで、需給バランスは+404万8,000トンの供給過剰が見込まれている。しかし供給過剰幅は昨年、一昨年から大きく縮小する見込みである。商品にもよるが足下の供給過剰よりも昨年と比較した時の供給過剰感が相対的な価格水準に影響するため、供給過剰幅が縮小方向にある場合には価格は下支えされやすい。また、農産品価格に対する説明力が高い需要を供給で割った「需給率」は、前年比+1.2%の84.0%と価格が高騰した2016-2017年の84.3%に迫る水準までの上昇が見込まれている。需給率と平均価格の過去データを元にすると、2022年の粗糖平均価格は現在の水準よりも高い19.20セント程度が想定される。

出所:USDA、ICE

また、原油価格も景気減速によって下落する、というのがメインシナリオではあるものの、ロシアに対する制裁強化によって原油価格が下落せず、結果的にガソリン価格も高値を維持して代替燃料としてのエタノール需要が高水準で推移する展開もありえる。

供給面も決して安泰ではない。多くの農産品と同様、粗糖も異常気象の影響を受けやすいが、2009年のエルニーニョ現象発生時を例外として粗糖価格が高騰しているのは、ほとんどラニーニャ現象が発生している時である。米海洋大気庁の見通しでは今年の冬に再びラニーニャ現象の発生を予想しており、その材料だけでも価格には上昇圧力が掛かりやすい。以上を勘案すると、粗糖価格には下押し圧力が掛かりやすいが、需要面・供給面両面で下げ余地が限定されると予想される。

なお、日本の場合、国内生産者保護の観点から価格調整制度が導入されており、国内外の価格差を調整する仕組みとなっている。しかし、国内生産コストが上昇し、それを企業努力で吸収仕切れない場合、価格は最終価格に転嫁されることになる。国内の砂糖の出荷額は7月11日に6%程度引き上げられた。砂糖価格の変動要因としては、原料となる粗糖の調達コストと輸送費、製造時の燃料費などが主なところだが、ドル建ての原料価格が高止まりする中で、円建ての輸送費や燃料費が上昇したことによるもの。エネルギー価格が高止まりし、円安傾向が続けば今後も国内砂糖価格が引き上げられる可能性は低くない。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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