本年も残すところ、あとわずかとなりました。
日経平均株価は11月におよそ26年10ヵ月ぶりの大幅高となった後、12月は強弱材料が対立し、好材料の織り込みが一巡する中、テクニカル的には過熱感が強まる展開になっています。
2021年における日経平均株価のレンジは、23,000円〜30,000円と予想します。予想レンジの中心は26,500円なのでほぼ、現在の株価水準に近く、投資スタンスとしては“中立”と言えます。
では、なぜそう考えたのか。
その理由について解説していきます。
日経平均株価は11月に15.0%上昇した後、12月に入ってからは前月末比でほぼ横ばいとなり、強弱材料が対立する展開になっています。同じく米国株式市場も、NYダウが11月に11.1%上昇した後、12月は小幅高と、日経平均株価と似たような値動きです。
11月に行われた米大統領選挙以降、12月は新型コロナウイルス向けワクチンに対する普及期待や、米追加経済対策に対する景気回復期待など追い風が続き、世界的に景気回復期待が強まりました。これを受け、原油先物相場や米10年国債利回りは、昨年末の水準は下回っているものの、相当の水準まで戻す状態になっています。
ただ、株価の世界的な上昇ピッチの速さに対する警戒感も徐々に強まっています。
11月の日経平均株価の15.0%という月間上昇率は1994年1月以来、およそ26年10ヵ月ぶりの大きさで、当然その反動は気になります。なお、日経平均株価の主要テクニカル指標は、25日移動平均からのかい離率が8.0%(11/17)、RSI(相対力指数)が84.9%(11/24)、騰落レシオ(25日)が141.8%(12/8)と“過熱圏”でそれぞれピークを付け、その後は低下傾向になっています。
こうした中、日経平均株価は12/21(月)に一時26,905円まで上昇し、取引時間中ベースで本年高値を更新しましたが、テクニカル指標のピークアウトと併せて考えると、典型的な“逆行現象”といえ、株価の調整入りが警戒される状況といえるでしょう。
なお、NT倍率(日経平均株価÷TOPIX)は反落傾向にあり、TOPIXが日経平均株価に対する優位性をやや回復し、バリュー株が立ち直る傾向になっています。また、物色動向では、EV(電気自動車)や再生エネルギーなど環境関連株が買われ、その延長線上で重厚長大の大型株も買い直される場面が出ています。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/12/15〜2020/12/22)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
12/15(火) | 26,687.84 | -44.60 | 国内でのコロナ悪化状況に経済活動の制限強化が進む。 |
12/16(水) | 26,757.40 | +69.56 | 米株高を追い風に上昇。全固体電池関連株が総じて高い。 |
12/17(木) | 26,806.67 | +49.27 | FOMC量的緩和維持を好感し、小幅に続伸。 |
12/18(金) | 26,763.39 | -43.28 | 強弱材料が対立する中、新型コロナウイルスの感染拡大が重荷に。 |
12/21(月) | 26,714.42 | -48.97 | 米追加経済対策合意報道で一時年初来高値更新も、コロナ変異種への警戒感などから下落。 |
12/22(火) | 26,436.39 | -278.03 | コロナ変異種の拡大で景気の先行きに不透明感。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図表2 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2020/12/22取引時間中。
図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/12/22現在。
図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/12/22取引時間中。
図表5 当面の重要スケジュール
月日 | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
12/22(火) | アメリカ | 7-9月期GDP確報値 | |
11月中古住宅販売件数 | 中古住宅の販売成立件数で景気の先行指標。 | ||
12/23(水) | 日本 | 10月28・29日開催の日銀金融政策決定会合会議要旨 | |
アメリカ | 11月耐久財受注 | ||
11月個人所得・個人支出 | |||
10月FHFA住宅価格指数 | 前月は1.7%増で過去最大の上昇率。 | ||
11月新築住宅販売件数 | |||
12/24(木) | 日本 | 11月企業向けサービス価格指数 | |
トルコ | トルコ中銀金融政策決定会合 | ||
アメリカ | 11月耐久財受注 | 民間設備投資の先行指標。 | |
12/25(金) | 日本 | 11月失業率・有効求人倍率 | |
11月商業動態統計 | |||
12/28(月) | 日本 | 12月17・18日開催の日銀金融政策決定会合の「主な意見」 | |
11月鉱工業生産 | |||
「Go Toトラベル」全国一斉に一時停止(〜1/11) | |||
12/29(火) | アメリカ | 10月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | |
12/30(水) | 日本 | 大納会 | |
中国 | 12月コンポジットPMI | ||
12月製造業PMI | |||
12月非製造業PMI | |||
イギリス | EU離脱移行期間が終了 | ||
1/1(金) | 日本 | 元日 | |
日英EPA発効予定 | |||
改正育児・介護休業法が施行 |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2021年 | |
日銀金融政策決定会合 | 1/21(木)、3/19(金)、4/27(火)、6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 1/27(水)、3/17(水)、4/28(水)、6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 1/21(木)、3/11(木)、4/22(木)、7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。 なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は日本時間(ただし、ECBの結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
純資産とは、企業の総資産から負債を引いたものです。
保有している企業を売却した際、売却総資産の対価だけ現金が入りますが、その企業が外部に負債を有していれば、肩代わりして支払わなければなりません。企業を売却し、負債を支払い、売り手の手もとに最後に残るものが純資産であり、企業の解散価値と言われることもあります。
したがって、ある企業の株式を100%買い入れる時の市場価値の合計と定義される時価総額は、純資産よりも高いことが普通です。言い換えれば、時価総額を純資産で割ったPBRは1倍以上であることが普通です。
ちなみに、1株当たりの純資産ともいわれる株価(日経平均株価)のBPS(1株当たり純資産)は本年3月に20,561円まで下がりました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う投資家心理の悪化を受け、株価自体は一時18,917円まで下がり、PBRは0.92倍まで低下しました。この水準は解散価値を下回る水準なので長続きせず、その後、株価は反発しました。
このように、日経平均株価をそのBPSの何倍まで買うのか(PBR何倍まで買うのか)目安に考えることは、株価予想を行う際の手法のひとつです。なお、予想EPS(1株利益)の何倍(PER何倍)まで買われるのか考える方法もありますが、PERという投資指標は一般的に何倍ならば割安で、何倍ならば割高かという明確な基準がなく、結局「PER何倍が妥当なのか」という問題に突き当たることになります。
現在、日経平均株価の予想EPSは1,072円(12/21)です。市場コンセンサスから推測し、来期予想純利益が4割程度増益となるのであれば、予想EPSは1,500円程度に増える見込みです。
この予想EPSに対し、予想PER20倍まで買えれば、日経平均株価は3万円と計算されます。日経平均株価が予想PER20倍で買われるという考え方は、株価が極端に割高にはみえないため、許容される考え方ではあると思います。ただ、実現の確度や妥当性についてはあまり期待できません。
一方、日経平均株価のBPSは現在22,449円(12/21)であり、今後企業業績の拡大によっては、徐々に上積みが見込めそうです。なお、2021年は新型コロナウイルスに対して、複数のワクチンが有効になることや、歴史的な金融緩和状態などにより、今年のようなPBR1倍を深く割り込む可能性は小さいと予想されます。仮に、2021年のPBRの最低値が2019年並みの1.04倍であった場合、安値は23,346円近辺と想定されます。
また、アベノミクス相場開始(2012/11)以降のPBRの最高は1.47倍ですが、現状でPBR1.47倍と仮定することは楽観的過ぎるかもしれません。ただし、日経平均株価が3万円の時のPBRは1.34倍と計算されるので、こちらは現実的であるように思われます。すなわち、PBRでみると、日経平均株価が30,000円というシナリオを想定することは十分可能だと思います。
結果、細かい数字を切り捨てれば、2021年の日経平均株価予想レンジは23,000円〜30,000円とし、予想レンジの中心は26,500円なのでほぼ、現在の株価水準に近く、投資スタンスとしては「中立」と言えます。
図表7 日経平均株価(月足)とPBR
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。日経平均株価(月足)とそのBPS水準(PBR1倍水準)、PBR1.2倍水準、PBR1.3倍水準を1枚のグラフにしたもの。