世界的な貿易摩擦問題や、米主力IT企業の減速等を背景に、日経平均株価は下落基調となってきました。しかし、企業の利益や配当と比べた株価水準は割安感が強く、足元は底打ち感が強まっています。
テクニカル的には、「強気転換」直前の形になっているように見受けられます。これで、11/30(金)・12/1(土)に予定されている米中首脳会談で一定の進展があれば、株価は短期的に「強気転換」となり、23,000円台を目指す展開になっても不思議ではないと考えられます。
日経平均株価は、11/8(木)に一時22,583円43銭まで上昇した後は下落基調となりました。アップルやエヌビディアなど、これまで米国株の上昇をリードしてきた銘柄が売り込まれ、米国株も下落基調となったことが主因と考えられます。ただ、11/21(水)以降はやや持ち直す展開になっています。
- 11/19(月)140円82銭高・・・NY株の続伸を好感。半導体関連株等が反発。
- 11/20(火)238円04銭安・・・「アップルがiPhoneの発注削減」と報道されNYダウ(11/19)が395ドル安。「カルロス・ゴーン会長逮捕」を受け、日産株が下落も、市場の影響は限定的。
- 11/21(水)75円58銭安・・・アナリストの格下げを受けてアップルが続落となり、NYダウ(11/20)が大幅続落(551ドル安)。ただ、半導体株の下落が限定的だったこともあり、日経平均株価も底固い展開。
- 11/22(木)139円01銭高・・・米国株(11/21)の落ち着きと円安・ドル高が追い風。
- 11/26(月)165円45銭高・・・連休明けでポジションが取りやすくなり、買いが先行。「大阪万博」決定も追い風に。
- 11/27(火)140円40銭高・・・「ブラックフライデーでオンラインショッピングが好調」と伝わり、NYダウ(11/26)が354ドル高。それを受けて買いが先行。
米国では11/6(火)に実施された中間選挙が、市場の予想通りの結果となったこともあり、11/7(水)のNYダウは前日比545.29ドル高となり、11/8(木)には一時、26,277.82ドルまで上昇しました。しかし、11/9(金)〜11/14(水)および11/19(月)〜11/23(金)に、2度も「4営業日続落」を記録するなど、その後のNYダウは下落基調に転じました。上記した11/8(木)の高値から11/23(金)の安値24,268.74ドルまでの下落率は7.6%となっています。
この間、米中貿易摩擦問題については、特に大きな材料が出た訳ではありません。むしろ、アップルやエヌビディアなど、これまでの米国株上昇をリードしてきた銘柄が下落に転じたことが、米国株全般にも響いたと考えられます。
また、ドル・円相場(図3)についても、11/12(月)の114円20銭から11/20(火)の112円29銭まで円高・ドル安となり、日本株にとっては逆風となりました。FRB(米連邦準備制度理事会)が2019年の前半にも政策金利の引き上げを停止するとの見方が台頭しており、米長期金利が低下傾向となったことが要因です。ただ、外為相場の変動に対する株式市場の感応度はやや鈍くなってきているように思われます。
図1 日経平均株価は「W底」形成となったのか?
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/11/27現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/11/26現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/11/27取引時間中
当面の主要スケジュールの中では、11/30(金)・12/1(土)にアルゼンチンで開催される「G20首脳会合」が重要と考えられます。全体会合に前後し、米中、米ロ、日米、日ロなど個別に首脳会議が行われる予定で、懸案解決に向けて動きがあるか否かが注目されます。
個別首脳会議の中でも、最も注目されると予想されるのが米中首脳会議です。両国が世界経済の覇権を争う中、米国が関税強化という形で中国に圧力をかけており、その影響で世界の2大経済大国である米国と中国が「共倒れ」になることを世界は恐れているようです。この2ヵ国に歩み寄り姿勢が見られるか否かが注目点です。
表1 当面の主要タイムスケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
---|---|---|---|
11/27(火) | 米国 | 9月FHFA住宅価格指数 | 市場コンセンサス(前月比)は0.4%上昇 |
米国 | 9月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | 8月(20都市)は前年同月比5.49の上昇 | |
米国 | 11月CB消費者信頼感指数 | ||
11/28(水) | 米国 | 7〜9月期GDP改定値 | 市場コンセンサス(前期比・年率)は+3.5% |
米国 | 10月新築住宅販売件数 | 市場コンセンサス(前月比)は5.3%増 | |
11/29(木) | 米国 | 10月中古住宅販売仮契約 | 市場コンセンサス(前月比)は1.0%増 |
米国 | FOMC(11/8発表)議事録 | ||
11/30(金) | 日本 | 10月鉱工業生産 | |
中国 | 11月製造業PMI | 市場コンセンサスは50.2 | |
- | G20首脳会議(〜12/1) | ブエノスアイレス(アルゼンチン)で開催 | |
12/1(土) | メキシコ | 大統領就任式 | トランプ米大統領も出席する可能性 |
12/3(月) | 日本 | 7〜9月期法人企業統計 | |
米国 | 1月ISM製造業景況指数 | 米国の企業マインドを示す最も重要な指標 | |
12/4(火) | 欧州 | EU財務省理事会 | イタリアに制裁が決定される可能性が残る |
12/5(水) | 米国 | 11月ADP雇用統計 | 市場コンセンサスは前月比20.5万人増 |
米国 | 11月ISM非製造業景況指数 | 新規受注、雇用などの個別指標にも注目 | |
米国 | ベージュブック | ||
12/6(木) | - | OPEC総会 | これに先行するG20の方が重要との見方も |
米国 | ★決算発表 | ブロードコム | |
12/7(金) | 米国 | 11月雇用統計・非農業部門雇用者数(前月比) | 市場コンセンサスは21.2万人増。前月は25万人増 |
米国 | 同・失業率 | 市場コンセンサス・前月ともに3.7% | |
米国 | 同・時間当たり賃金(前月比) | 市場コンサンサスは0.3%増 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | 2019年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 12/20(木) | 1/23(水)、3/15(金)、4/25(木)、6/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 12/19(水) | 1/30(水)、3/20(水)、5/1(水)、6/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 12/13(木) | 1/24(木)、3/7(木)、4/10(水)、6/6(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
(1)の項目でご説明したように、世界的な貿易摩擦問題や、米主力IT企業の減速等を背景に、日経平均株価は下落基調となってきました。
しかし、企業の利益や配当と比べた株価水準は割安感が強くなっています。日経平均株価の予想PERは11/21(水)に一時12.13倍と「アベノミクス相場」での最低水準を記録し、さらに同予想配当利回りは過去6年間での最高水準に到達しました。これらから、足元の日経平均株価については、底打ち感が強まっているものと考えられます。
図4のチャートでもご理解いただけるように、形状的にも「W底」完成に近づきつつあります。これを含め、テクニカル的には、「強気転換」直前の形になっているように見受けられます。この図4は日経平均株価(日足)の一目均衡表ですが、このまま株価が横ばい程度で動けば、遅行スパンが日々線を下から上に突き抜けそうです。すでに日々線が、基準線や転換線を上回ろうとしており、総じて形は良くなってきています。
加えて、図5の日経平均株価(週足)・一目均衡表では週足チャートがクモの下限をほぼキープできた形になっています。今後さらに上昇すれば、クモの上に復活してくる可能性も大きくなります。週足チャートが基準線や転換線を上回ってくれば、形の上ではさらに強くなってくるものと考えられます。
米中貿易摩擦については、両国の覇権争いがかかっており、容易に妥協が成立するとは考えにくいのが現実です。ただ、単純に関税の掛け合いに終始したのでは「共倒れ」になりかねないため、短期的な妥協が成立する可能性は十分あると考えられます。
過去3ヵ月、日経平均株価の予想PERは最低12.13倍、最高13.95倍でした。今後3ヵ月間、予想PERのレンジを保守的に、12.13倍〜13.13倍程度で想定した場合、予想EPSは1,783円(11/26現在)なので、
- 1,783円×12.13倍=21,627円
- 1,783円×13.13倍=23,410円
から、日経平均株価の予想レンジは当面、21,627円〜23,410円前後と計算されます。すなわち、仮に短期的に「強気転換」となった場合に、23,000円台を目指す展開になっても不思議ではないと考えられます。
図4 日経平均株価(日足)・一目均衡表
図5 日経平均株価(週足)・一目均衡表
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成