日経平均株価が引き続き一進一退の動きとなっています。10日には、一時、2000年4月17日以来の20,000円大台を回復しましたが、その後は目標達成感の台頭もあり、伸び悩んでいます。形の上では、25日移動平均を下値抵抗ラインに据えつつ、保ち合いを形成しつつあるようにも思われます。
もっとも、保ち合い形成の後には、大きく上方向か、下方向に放れる可能性が大きくなります。市場は「嵐の前の静けさ」を迎えているのかもしれません。そこで今回の「225のココがポイント」では、急展開も想定される日経平均の先行きを占ってみたいと思います。
<今週のココがPOINT!>
保ち合い形成の様相〜市場は何を迷っているのか? |
冒頭でご説明したように、いったんは20,000円の大台を回復した日経平均株価ですが、その後は一進一退の動きになっています。図表1にもあるように、25日移動平均を下値抵抗ラインに据えながらの保ち合い相場になっています。
市場は何を迷っているのでしょうか。それを考える上で、以下の3点が重要とみられます。
(1)2015年1〜3月期の米主要企業の純利益は減益が見込まれ、その発表が本格化していること。
(2)冴えない米経済指標・企業業績、欧州での量的緩和開始を背景に、円高が進みやすくなっていること、
(3)ギリシャ支援問題が紛糾しており、5月には同国が資金ショートとなる可能性があること、
このうち、(1)については、米主要企業(S&P500採用銘柄)の1〜3月期純利益は、前年同期比で4〜5%減少するとの見方が有力で、現時点で決算発表は期待の対象ではなく、警戒の対象になっています。米国では、住宅や消費関連指標についても勢いに欠く数字の発表が続いています。これらを受け、米政策金利の「6月利上げ」説は後退し、2016年への先送り説も出ています。こうした中、米10年国債利回りは再び2%を割り、円に対してドルが下げる要因となっています。
一方、欧州では、ギリシャ支援問題が難航しており、5月12日のIMF(国際通貨基金)に対する約7億ユーロの返済等が不安視されています。これを乗り切るには、11日のユーロ圏財務相会合で、ギリシャ側から有効な改革案が示される必要がありますが、ギリシャとドイツなど主要ユーロ参加国の間に心理的な対立が生じており、予断を許さない状況です。こうしたギリシャ問題に加えて、3月から実行に移された欧州の国債等買入れにより、ドイツ10年国債が0.1%を下回るまで利回りが低下し、円に対しユーロが下げる要因となっています。
これらの事情がさらに悪化した場合、日経平均株価はいったん調整に入るのではないかというのが、市場の不安ではないでしょうか。「5月に株を売れ」というジンクスも、こうした局面では不気味に聞こえてくるかもしれません。
図表1:25日移動平均を下値支持ラインに下値トライを繰り返す日経平均株価
- ※当社チャートツールを元にSBI証券が作成。
続く過剰流動性相場〜その中で世界が注目する東京市場に? |
しかし、過度の懸念は不要と思われます。早ければ足元の4月下旬に、遅くとも5月後半までに、日経平均株価が20,000円台に乗せ、さらに上昇してくる可能性は大きいと考えています。
我が国の実質的なインフレ率がゼロ近辺まで低下する中で、日銀は緩和的金融政策を続けざるをえないと考えられるためです。低インフレ率・ギリシャ問題が懸念材料の欧州も量的緩和の実施を始めたばかりです。米国は確かに政策金利の引き上げタイミングを検討していますが、米経済の現状から急激な引き締めにはならない見通しです。これらの結果、世界的には過剰流動性が生じやすい局面が続き、それが株価を押し上げることになりそうです。
日本の上場企業の業績拡大シナリオに変化はないと考えられます。原油価格がさらに下がると、商社や鉱業、石油・石炭等の業種で下振れ圧力が高まりますが、原油価格(WTI先物)が1バレル54ドル超まで回復したことで、テクニカル的には底入れが完了した形になっていますので、不安は後退しつつあります。それでも、前年同期と比較した原油安メリットが生じやすいこと、消費税増税から1年経過で内需も回復しやすくなること等を背景に、新年度の上場企業の営業利益は十数%の増益が見込まれます。
日米欧に中国を加えた主要地域の中で、日本の景気・企業業績の回復トレンドは、最も鮮明とみられ、世界中から緩和資金が集まる可能性さえ秘めていると言えます。
米経済の減速、米国企業の業績悪化については、記録的な寒波や港湾スト、ドル高の影響も無視できません。しかし、寒波や港湾ストの影響は、今後剥落してゆくことになります。ユーロ圏も、量的緩和を実施し、ドイツ10年国債利回りがゼロに近づく中で、当面は今の金融政策の効果を見極める局面が想定され、ユーロ安・ドル高にも歯止めが掛かる可能性があります。米企業業績についても、決算発表が進捗するにつれ「アク抜け」する可能性もありそうです。
最も不透明感の強いギリシャ問題ですが、前項で述べた通り、5月11日前後が大きな分岐点にあることは確かです。しかし、ギリシャ問題を取り巻く以下の「条件変化」にも留意すべきです。
(1)世界の主要銀行のギリシャ向けエクスポージャーは2008年6月3,000億ドルから2014年6月には500億ドルへ減少。
(2)ギリシャの経常収支(月次データの1年移動)は、2010年3月▲23億ユーロから2015年2月+0.7億ユーロに改善。
ギリシャ危機による金融システムへの影響度が低下していると考えられます。さらに、ギリシャ自身がユーロ安や、緩和的金融政策の恩恵をある程度受けているとみられる現状から、ユーロ圏諸国との妥協が成立する可能性は大きいとみられます。
【225のココがポイント!】「Sell in May(5月に売れ)」のジンクスをどう捉えるか? |
株式市場には「Sell in May(5月に売れ)」という格言があります。5月を境に株式のパフォーマンスが悪化しやすいから、いったん売った方が良いという意味合いです。
確かに、5月は一部ヘッジファンドの中間決算を控え、利益確定売りが出やすい面はあります。また、日本では本決算の発表が一巡し、材料出尽くしになることも少なくありません。最近では、日経平均が一日としては13年ぶりの下落幅(前日比1,143円安)になった2013年5月23日の「トラウマ」もあり、5月を前に、警戒心を高める投資家がいることは確かです。
しかし、この格言は当たっている面もあれば、そうとも言い切れないというのが実態で、図表2と図表3はそれを示しています。米国の場合、確かに5月に続く6月のパフォーマンスは良くないですが、過去20年・30年と長期にデータをとると、不明確になります。7月にはむしろパフォーマンスが改善する傾向があり、5月に売るのが妥当とは言い切れないようです。
日本の場合も近年は確かに、5月自体が冴えないケースが多いようですが、その分6月は改善するケースも多く、逆に買い場と言えるかもしれません。昨年は4月21日から5月21日まで確かに「調整」となりましたが、日経平均株価の下落率は5%弱。しかし、そこから7月4日にかけては、11%弱の上昇率となっています。今年の場合、アナリスト予想では10数%増益が予想される上場企業の増益率ですが、会社発表ベースでは1ケタになる可能性があり、その落差がリスク要因になりそうです。しかし、仮に実態がアナリスト予想に近いのであれば、その後は収益の上方修正が増えやすくなります。その意味でも、5月が買い場になる可能性がありそうです。
図表2:「S&P500」の月次パフォーマンス
図表3:「日経平均」の月次パフォーマンス
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。過去10年、20年、30年の月次騰落率の平均(%)。
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※2015/1/20時点SBIアセットマネジメント調べ