ドル円は12日の157円19銭で一旦の底入れとなるか?
昨日のNY市場では、パウエル議長のハト派寄りの発言を受けて米10年債利回りが一時4.20%割れまで低下したことを受けて157円17銭まで下落する場面がみられました。しかし、今秋の米大統領選に向けて共和党・トランプ候補優勢の観測とともに財政拡大や規制緩和に対する期待から米10年債利回りが4.23%台へ上昇したことから、158円台を回復し158円06銭で昨日の取引を終えました。
10年債利回りでの日米金利差は4月に3.8%台でしたが、直近では3.1%台へ縮小していたにもかかわらず、ドル円は6月26日に160円台を回復して以降も堅調な値動きを続け、7月3日には161円95銭まで上昇しました。こうした背景にあるのは低ボラティリティの下、NY株式市場では7月に入って以降、ナスダックやS&Pが史上最高値を更新したほか、日経平均株価も7月11日に42,426円まで上昇し史上最高値を更新するなどリスク選好を背景に円キャリートレードによるクロス円を含めた円売りが優勢となったことが要因となりました。実際、シカゴIMM投機筋の円売りポジションは、7月2日時点で184,223枚と2007年6月の188,077枚以来、およそ17年ぶりの水準まで拡大。こうした中、先週11日に発表された米6月CPIが市場予想を下回る中、本邦通貨当局が円買い介入を実施したことからドル円は157円台前半へ急落。先週末12日にも円買い介入への思惑が上値抑制につながり、ミシガン大が発表した7月消費者信頼感指数や期待インフレ率の低下とともに、再び157円台前半へ下落して以降も158円台前半までの反発に留まる上値の重い値動きが続いているのが現状です。
米経済/金融政策は転換点?
今年1-6月期の米GDPは年率ベースで+1.5%近い水準へ拡大すると見込まれているものの、昨年の同時期(+2.5%)からは明らかに鈍化することが確実視されています。
さらに、6月の失業率も+4.1%と5月(+4.0%)から悪化するなど昨年6月(3.6%)から0.5%悪化したほか、求人件数やパートタイム労働者の雇用など労働市場の逼迫が緩和していることが確認される状況となっています。そのほか、賃金上昇圧力も緩和傾向にあるほか、6月CPI総合は前年比+3.0%と昨年6月(+3.0%)と変わらない中、サービス価格は前年比+5.1%と昨年6月(+6.2%)から1%も低下しています。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
7月30-31日の日銀金融政策決定会合に向けて
今月末の日銀金融政策決定会合では6月の会合で予告した国債買入れ減額の具体策を発表します。減額と同時に追加利上げを行うかが注目されますが、追加利上げは以下のような理由により9月以降にずれ込むとの見方が優勢となっているようです。
1) 減額と利上げを同時に行うと金融市場の混乱を招く恐れがあること
2) 今春闘の賃上げによる賃金や物価への波及などデータを確認する必要があること
植田総裁は国債買入れの減額について「相応の規模になる」との考えを明らかにしており、月間6兆円の買入れは3兆円規模に減額されると見込まれています。現状の6兆円規模の買入れは日銀が保有している国債の償還額に相当するため、国債残高は横這いでの推移が続いていますが、これを3兆円に減額すれば償還額の半分規模の再投資となるため国債残高の減少、つまり量的引き締めに踏み切ることになります。
短期金利がゼロ%の下、日銀が実質的な量的引き締めを開始することになるだけに、利上げをすれば金融市場の混乱を招くリスクが高まると見られます。
さらに、植田総裁は「超過準備ゼロが望ましいという前提では考えていない」と発言しており、国債買入れを減額して以降も国債残高を一定程度残すこととなるため長期金利の上昇を抑制する狙いを意図しているのかもしれません。
利上げが先送りされ、国債買入れの減額による金利上昇も限られるとの観測が高まれば、日米金利差は大きく縮小することはない可能性もあり、今月末に向けた日米長期金利の動向が注目されます。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
直近7月9日時点のシカゴIMMネット円売りポジションは7月2日時点から2,000枚ほど減少したものの、依然高水準で推移していることが確認されました。今回の通貨当局による円買い介入によって円売りポジションがどの程度調整されたか、当局の行動を占う上で注目されます。4月29日に円買い介入に踏み切った直前4月23日に179,919枚まで膨らんでいたことと無関係でないとすれば、5月14日の126,182枚まで解消が進めば円買い介入実施の大義名分がなくなり、16日時点の円売りポジションもドル円の動向に影響を及ぼすと思われるだけに注目されます。
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