円安による物価高が家計を圧迫
5月16日に発表された本邦1-3月期GDP(速報値)は前期比年率-2.0%と前期(±0.0%)から減速しました。中でも個人消費が前期比年率-0.7%と昨年4-6月期から4四半期連続のマイナスを続けており、円安進行による物価の上昇を通じた物価高の影響が家計を圧迫していることが明らかとなりました。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
輸入物価指数の上昇は一巡し、これまでの物価上昇の主因であった中間投入コスト の増加(日銀のいう「第一の力」)については、徐々にペースが鈍化していく見込みです。4月は中東情勢を巡る地政学リスクの高まりから原油価格が上昇した影響により前年比+6.4%と上昇しましたが、緩和傾向がみられており5月以降、徐々に鈍化すると見込まれます。一方、春闘での大幅な賃上げを受け、企業が人件費増加分を販売価格に転嫁する動き(いわゆる「第二の力」)は、23年よりも広まると見られることから、24年度後半以降「第二の力」が強まり、基調的なインフレ率は高まっていくと思われます。加えて、5月末で終了する電気・ガス価格激変緩和対策事業が停止される影響(既に電力各社は値上げを表明)や、24年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金単価の引き上げも物価の押し上げ要因となりそうです。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
今後再びエネルギー価格が再上昇すれば輸入物価が一段と押し上げられることになります。つまり、円安の負の部分が顕著になると考えられ、景気悪化リスクへの処方箋としての金融緩和継続は円安を加速させかねないとの懸念に配慮する必要もあるとの考え方が台頭。むしろ、過度な円安に歯止めをかけることが「消費回復の鍵」とするならば、そのためには金融引き締めを急ぐべきという論調が高まっていっても不思議ではありません。少なくともGDPがマイナス成長になったことによって日銀がハト派的になることはないと思われます。
FOMC(6月11-12日)/日銀金融政策決定会合(6月13-14日)に向けて
日銀金融研究所主催の国際コンファレンス「物価変動と金融政策の課題 〜教訓と展望〜」が、27‐28日の2日間にわたり開催され、27日には内田副総裁の基調講演があるほか、28日午後にはボウマンFRB理事やクリーブランド連銀メスター総裁のほか、シュナーベルECB理事らを交えてのパネルディスカッションも予定されており発言が注目されます。
5月21日にウォラーFRB理事が「利下げには良好なインフレが“あと数カ月”必要」「3-4カ月の金利据え置きで経済は急降下しない」「一度だけの利下げという考えはあまり合理的でない」「データ裏付けあれば年末の利下げを検討し得る」と述べたほか、バーFRB副議長が「従来思っていたより長期間、じっと我慢が必要」との考えを明らかにしたほか、アトランタ連銀総裁からも「第4四半期前の利下げはないだろう」との見方が示されました。こうした発言に続き22日に公表されたFOMC議事要旨(4月30-5月1日) では相当数の委員が追加利上げに関心を持っていたことが明らかになりました。そのため、6月FOMCで3月に示された政策金利見通しが引き上げられると見られています。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
FOMC後の日銀金融政策会合で日銀が国債買入オペの減額方針を打ち出さず、正常化に前向きな姿勢を示すことがなければ、円安が加速することも想定されます。日銀金融研究所主催の国際コンファレンス終了後の29日にはリフレ派とされる安達審議委員が金融経済懇談会で発言を行います。ここで安達委員が金融政策正常化に積極的な姿勢を示せば6月13-14日での政策変更観測が高まることになります。
FRBによる利下げ開始観測は今後のデータ次第ですが以下のような見通しが一般的となっています。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
こうした中で日銀が年後半に向けた金融正常化に踏み込むのか、為替市場における円安進行による国内経済への悪影響に配慮した姿勢を滲ませるか、年後半にむけたドル円の方向性を占う上で注目されます。
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