先週末21日の欧州市場序盤、27-28日の日銀金融政策決定会合を巡り、日銀の関係者が「海外経済や賃金上昇の持続性を巡る不確実さで、持続的かつ安定的に物価目標を達成することへの確信は強まっていない。イールドカーブ・コントロール政策の修正に関する議論は行われると見込まれるが、金融市場に歪みが発生するなどの新たな問題が浮上しない限り、今回は金融緩和策の現状維持を決定するだろう」との見解を表明したと複数のメディアが報じたことからドル円は一時141円95銭まで上昇。また、25‐26日のFOMCで0.25%の利上げを織り込む一方、9月以降はデータ次第と予想される中、大手米銀が今年の米経済予想成長率を引き上げるとともに、景気後退入りの確率を引き下げたこともあり、141円台後半で先週末の取引を終え、週明けの東京市場でもこうした流れが継続しています。
米インフレ指標
- ※米労働省/商務省
- ※米労働省/商務省
FOMCの注目点
NY ダウ、ナスダック、S&Pの主要3指数はいずれも7月に入って年初来高値を更新する堅調な値動きを継続。こうした堅調な動きの背景にあるのが米6月の消費者物価指数(CPI)が前年比+3.0%と2021年3月以来の水準へ鈍化したことに加え、粘着性の高いとされるコア指数も前年比+4.8%と2021年10月以来の小幅な伸びに留まるなどいずれも市場予想を下回ったことが大きく影響しています。卸売物価指数も同様にインフ鈍化を示す結果となりました。
6月のFOMCで年内2回の利上げを示唆したにもかかわらず、FF 金利先物市場では、「あと 1 回」 がメインシナリオとなり、今回のFOMCで昨年3月からの利上げ停止を見込んでいます。米6月CPIコアは前月比+0.2%(実際は+ 0.158%)となっており、こうした鈍化が一時的でないと仮定すれば、FRBの見込む今年10‐12月のインフレ率は前年同期比+3.9%を下回るとの試算もあり、今後の金融政策について「データ次第」との従来からの見解を示すと思われる中、それ以上にタカ派寄りの発言があるのか注目されます。
「データ次第」を強調する内容となった場合、今回のFOMC以降に発表される以下の指標がより重要視されることになるかもしれません。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
8月下旬に予定されているパウエルFRB議長のジャクソンホール(カンザスシティー連銀経済シンポジウム)での講演で9月以降の金融政策についてより具体的な方向性を示す可能性があるだけに、少なくともこれらの指標を見極める必要があると思われます。
また、NY株式市場はインフレと利上げの議論に一定のメドが付けられることを先取りして、株価は予想PERの水準の切り上げを伴って上昇しています。S&Pの1年先予想PER(株価収益率)は、昨年4月以来の水準まで上昇するなど過熱感も見られる中、FOMCを受けて予想通りインフレと利上げの議論に一定のメドを付け、業績相場にスムーズに移行しリスク選好を継続できるか、あるいは想定外の結果となってリスク回避を高めることになるか合わせて注目されます。
日銀金融政策決定会合での注目点
27‐28日の日銀金融政策決定会合を前に植田日銀総裁は先週18日のG20の場で物価安定の目標には距離があるとの認識があり、そうした認識を前提の上で副作用に配慮しつつイールドカーブ・コントロール(YCC)を続けてきたとしたほか、物価については毎回の金融政策決定会合でチェックするとの考えを明らかにしました。一方、今回公表される物価展望レポートでは物価見通しを2025年度まで2.0%前後へと上方修正するとの観測もあります。そのため、植田総裁の先週の発言で「物価安定の目標には距離があるとの認識」を前提として・・・と発言していただけにこの前提が変われば政策決定会合は無風ではない可能性もあります。また、先週20日に内閣府は今年度の物価見通しを前年比+2.6%と発表しており、展望レポートでの上方修正が確実視される根拠の一つとなっています。
そのため、市場が見込む通り「現状維持」を決めるにしても、焦点は「今後」「いずれかの時点」でYCCの修正/撤廃を含めた緩和政策の修正を検討との見解が示される可能性があると予想。そのため、植田総裁の会見も含めて緩和政策修正の時期(年内/今年度中など)や前提条件、さらには物価見通しについての発言が注目されます。総裁は6月の政策会合後の会見で「13ヵ月、2.0%を上回る状況が続いているものの、先行きは低下し、再び2.0%を下回ると見ている。こうした見通しが大きく変わることになれば、政策の変更につながってくると思う」と述べており、展望レポートで物価見通しが上方修正されると見込まれる中、総裁の発言が政策変更に向けて予想以上のタカ派色の強いものとなれば円安の修正が進む可能性に注意が必要です。
前述の通り、来週の日銀金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロールの修正に手を付けることなく、今後の修正を示唆した場合、海外投資家による円キャリートレードが縮小するのか、同時に日本株投資の縮小傾向が続くのか、それとも、修正を見送ったことを材料に5月に見られたような大幅な日本株買い越しが再燃するか、ドル円の方向性を左右する材料の一つとして注目されます。
いずれにしても今週の日米金融政策委員会、さらにECB理事会のほか8月1日の豪中銀政策理事会の利上げ再開の有無を占う上で28日に発表される豪4‐6月期消費者物価指数に対する反応と合わせて注目されます。
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