日独株価指数が8月安値を割り込んだのに続いて、米国株も底割れとなるのでしょうか?S&P500指数の予想PERは、16年の予想EPSに対して14.5倍の計算で、現在の業績予想が維持されるならバリュエーションでは割安感の強い水準まで調整していると言えそうです。しかし、足元の市場センチメントは非常に弱く、一旦8/25安値を割り込む可能性もありそうです。そのような状況で優先的に押し目を買う候補として、堅調な国内消費動向を背景に業績好調が見込まれる米小売企業に注目できるでしょう。当社の「米国株スクリーナー」で優良かつ成長している小売企業を抽出した後、以下の5銘柄をピックアップしてご紹介しています。
銘柄 | 株価(9/28) | 52週高値 | 52週安値 |
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ホームデポ(HD) | 114.10ドル | 123.80ドル | 86.35ドル |
ダラー ジェネラル(DG) | 70.46ドル | 81.42ドル | 57.09ドル |
ロス ストアーズ(ROST) | 47.49ドル | 56.68ドル | 37.36ドル |
オライリー オートモーティブ(ORLY) | 245.88ドル | 258.15ドル | 146.22ドル |
アルタ サロン コスメ&フレグランス(ULTA) | 164.36ドル | 176.77ドル | 106.87ドル |
株価下落でチャンス到来!? |
米国株市場の不安定な動きが続いています。17日(木)FOMC(米連邦公開市場委員会)での政策金利据え置きは世界経済への懸念をクローズアップする結果となり相場は下落に転じました。中国経済の減速に加え、医薬品・自動車業界と相次いでネガティブ材料が重なったこともあり、米市場は8/25に付けた直近安値に近づいています(図表1)。
特に28日(月)の下落はS&P500指数で2.6%と大きく、これまで相対的に堅調に推移していた銘柄群にも下げが波及したことから、市場全体のバリュエーション調整に対する懸念が強まったと見られます。
株価バリュエーションを確認すると、9/29のS&P500指数1,884.09は、15年予想EPS118ポイントに対して16.0倍まで低下しています。ただ、図表2の通り過去の推移と比べると必ずしも“低い”水準とは言えません。しかし、16年の予想EPS130ポイントに対しては、14.5倍にあたります。現在予想されている業績回復が実現するなら、株価はかなり割安感の強い水準まで調整していると言えそうです。
ただし、足元の市場センチメントは非常に弱く、一旦相場が下振れる可能性もありそうです。株式市場は引き続き中国を中心とした海外経済の減速を警戒していることから、米国外の売上が大きい企業については、株価が下落してもなかなか手を出しにくい状況となりそうです。
一方、米国の消費は足元で堅調であり、また、海外経済の鈍化も比較的波及しにくいと見られます。そこで今回は、ここから市場全体が下げた場合に投資チャンスになると考えられる、米小売企業についての投資を検討してみます。
図表1:S&P500指数も底割れ?
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図表2:予想PERのさらなる低下はあるか?
- ※ブルームバーグデータをもとにSBI証券が作成
図表3:EPSは15年1-3月期を底に回復が見込まれている(白抜きは予想)
- 注:15年3Q以降の予想はブルームバーグ集計によるコンセンサス予想です。
- ※ブルームバーグデータをもとにSBI証券が作成
米小売業界の事業環境は良好!! |
足元の米小売売上は図表4の通り、前年比4%増前後で安定した動きとなっています。これはちょうど個人所得の伸びに沿った形であるため、十分持続可能な水準だと思われます。
今後についても、雇用環境の改善が続いているため堅調が見込めるでしょう。失業率は8月雇用統計で完全雇用に近い5.1%まで低下しました。大手量販店やファーストフード業界での最低賃金引き上げや米自動車産業で賃上げの動き(9/29日経新聞報道)が出るなど、米労働者の所得環境は改善が続きそうです。
資産効果については、8月末以降の株価下落が消費にマイナスに作用すると見込まれますが、もみ合い水準からの下落率はいまのところ10%程度にとどまっています。一方で、住宅価格は年率4〜5%程度で上昇が続いているため、株価の下落による影響はある程度カバーされると考えられます。
さらに、現在株式市場で懸念されている海外経済減速の影響ですが、米国のGDPの約7割が個人消費からなる経済構造のため、海外景気の影響を受けにくいと言えるでしょう。
図表4:個人所得と小売売上の推移
- 注:小売売上は自動車とガソリンを除いたものです。
- ※ブルームバーグデータをもとにSBI証券が作成
図表5:米国の株価と住宅価格の推移
- ※ブルームバーグのデータをもとにSBI証券が作成
優良かつ成長している米小売企業はコレ!? |
(2)でご説明した通り米小売業界の事業環境は良好と考えられ、また、年末商戦に向けて小売業界が注目を集めやすい季節でもあります。海外経済への懸念で市場が一段安となる場合には、投資のチャンスになるのではないでしょうか。
そこで、当社WEBサイトの「米国株スクリーナー」を使って優良かつ成長している小売企業を抽出するために、以下の条件でスクリーニングを行いました。
【スクリーニングの条件】
・小売業種に属する当社取扱い銘柄(59銘柄)
・売上成長率が前期実績・今期予想とも5%以上
・EPSの長期成長率が10%以上
・実績ROE(自己資本利益率)が15%以上
・時価総額100億ドル以上
抽出された9銘柄から、2銘柄ずつ抽出されたホームセンター、ディスカウントストア、アパレルディスカウンターの各業態からトップ企業を1銘柄ずつピックアップしました。また、業界の売上好調が続いている自動車用品販売のオライリー オートモーティブ、個別要因で高成長を続けているアルタ サロン コスメ & フレグランスを選んでいます。
図表6:小売企業のスクリーニング結果
- ※当社WEBサイトのデータをもとにSBI証券が作成
注目銘柄のポイント |
銘柄名 | 株価 (9/28) |
114.10ドル | 予想PER (倍) |
21.8 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 株価 (9/28) |
70.46ドル | 予想PER (倍) |
18.0 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 株価 (9/28) |
47.49ドル | 予想PER (倍) |
20.0 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 株価 (9/28) |
245.88ドル | 予想PER (倍) |
28.8 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 株価 (9/28) |
164.36ドル | 予想PER (倍) |
35.8 | |
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ポイント |
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注目銘柄(5銘柄)の株価週足チャートは、当社のチャートツールを用いて作成(2015/9/28時点)
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。