日本年金機構で125万件、米政府機関で400万件と、大規模な情報漏えい事件が日米で立て続けに起こりました。政府機関や企業に対するサイバー攻撃が増加・深刻化する中、サイバーセキュリティの強化が世界的に急務となっています。
同分野でグローバルに活躍が期待される企業を米国中心にご紹介します。さらに、未知のウィルスを検知できるエンドポイント型ソフトウェアで、グローバル展開の可能性がある日本のFFRIについてもご紹介します。
銘柄 |
国籍 |
株価(6/12) |
52週高値 |
52週安値 |
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米国 |
175.85ドル |
176.82ドル |
73.12ドル |
|
米国 |
51.80ドル |
52.48ドル |
24.81ドル |
|
米国 |
68.92ドル |
74.88ドル |
40.71ドル |
|
イスラエル |
83.71ドル |
88.49ドル |
63.70ドル |
|
日本 |
6,350円 |
6,990円 |
362.5円 |
サイバー攻撃の変化と対応 |
サイバー攻撃によって情報漏えいが頻発している背景には、ここ数年で進んだITネットワーク側、サイバー攻撃側双方の変化があると言われています。
A. ITネットワークの複雑化で攻撃できるポイントが増加しています
B. 標的型攻撃の増加でパターンマッチングによるアンチウィルスの効果が薄れています
Aは、インターネット経由での様々なソフトウェア・サービス利用の増加、モバイル端末の利用、ウェブメールを含むSNSの活用、BYOD(私物の端末で業務を行うこと)の広がりによって企業のITネットワークが複雑化しました。このため、攻撃に利用できるポイントが増えています。従来型のファイア・ウォールを設置するだけでは、ネットワークを完全に守ることが難しくなってきています。
Bの標的型攻撃は、特定組織の情報を狙って行われるサイバー攻撃ですが、問題は各攻撃において新種のウィルスが使用されることが多く、従来のパターンマッチングによるアンチウィルスが有効性を失っていることです。パターンマッチングは、過去に見つかったウィルスを登録しておき、それと同じパターンのものを検知・駆除するものです。しかし、新種のウィルスが使用された場合には、検知できません。攻撃側が組織化されて資力があがっていることで、このような高度な攻撃が行われているとみられます。
図表1: サイバー攻撃とサイバーセキュリティの概念図(イメージ)
以上のような変化を受けて、防御するサイバーセキュリティも以下のように変化しつつあります。
(1)狙われた場合にネットワークへの侵入を完全に排除することは難しいため、被害を最小限に抑える方向への戦略転換
(2)エンドポイント(情報端末)での対策が重視される傾向
(1)については、次世代ファイア・ウォール、エンドポイント型ソフトウェア、セキュリティインテリジェンスを中心に総合的なサービスを提供することで、サイバー攻撃の各段階で阻止するための手段を備えて、被害を最小限に食い止める方向に変わってきているようです。このところ業容を拡大している新しいタイプのキュリティサービス企業はこのようなサービスを提供しています。
(2)については、パターンマッチングによるアンチウィルスの有効性が失われていることから、新しい技術によるウィルス検知が重要視されているようです。後述のパロアルトネットワークス、ファイア アイは両社ともファイア・ウォールを中心に提供してきた会社ですが、エンドポイント型ソフトウェアの技術をもつ企業を買収してサービスを拡充してきました。
典型的な標的型攻撃では、狙った組織の成員宛てにウィルスを添付した電子メールを送り、ウィルスに感染した端末を起点に外部からの通信によりネットワークを攻撃します。ですから、最初の段階で未知のウィルスを検知・駆除できる技術があれば、効果が高いわけです。このため、この分野で世界最高水準の技術をもつと言われる、日本のFFRIのポテンシャルは非常に大きいと言え、注目できます。
サイバーセキュリティ関連銘柄を検討 |
サイバー攻撃の変化とその対抗策のトレンドを確認したところで、関連銘柄について考えてみましょう。
サイバーセキュリティ関連銘柄を検討するにあたり、まず、米国で上場しているサイバーセキュリティETF(ピュア・ファンド社)の組み入れ銘柄(31銘柄)をユニバースとしました。
[1]同ファンドの組入上位15銘柄、[2]サイバーセキュリティ専業、[3]米国上場で当社取扱い銘柄、の3条件で、外国株6銘柄をリストアップしました。FFRIは上記ETFには含まれませんが、この分野でグローバル展開の可能性がある日本企業として特別に加えています。
図表2が関連銘柄のリストです。総合的なサイバーセキュリティサービスを提供している企業と、セキュリティの一分野に特化して製品を提供している会社があります。総合サービス企業にも2種類あり、パロアルトネットワークス、ファイア アイは標的型攻撃など最近の脅威への対応を中心に興ってきた会社で、チェックポイント ソフトウェア テクノロジーズ、フォーティネットは旧来型のセキュリティサービスを中心に提供している会社に分けられます。
前者のグループでは、当社扱いでないためにリストアップされていないものとして、(PFPT)プルーフポイント、(CUDA)バラクーダ・ネットワークスがあります。これらの会社は、02年〜05年にいずれもシリコンバレー周辺で創業した企業です。
図表2: サイバーセキュリティ関連銘柄
コード |
銘柄 |
国籍 |
時価総額 |
主力内容 |
---|---|---|---|---|
PANW |
パロアルトネットワークス |
米国 |
147 |
総合的なサイバーセキュリティサービスを提供 |
FEYE |
ファイア アイ |
米国 |
81 |
|
CHKP |
チェックポイント ソフトウェアテクノロジーズ |
イスラエル |
151 |
総合的なサイバーセキュリティサービスを提供 |
FTNT |
フォーティネット |
米国 |
70 |
|
SPLK |
スプランク |
米国 |
87 |
マシンデータ取扱のためのソフトウェア |
CYBR |
サイバーアークソフトウェア |
イスラエル |
21 |
特権アカウント取扱のためのソフトウェア |
3692 |
FFRI |
日本 |
4 |
標的型攻撃に対応できるエンドポイント型ソフトウェア |
- 会社資料、ブルームバーグよりSBI証券作成
図表3: サイバーセキュリティ関連銘柄の投資指標
コード |
銘柄 |
売上高 |
純利益 |
従業員数 |
時価総額 |
時価総額/ |
従業員1人当たり |
---|---|---|---|---|---|---|---|
PANW |
パロアルトネットワークス |
598.2 |
-73 |
1,722 |
147 |
24.6 |
35 |
FEYE |
ファイア アイ |
425.6 |
-443.8 |
2,500 |
81 |
19.0 |
17 |
CHKP |
チェックポイント ソフトウェアテクノロジーズ |
1495.8 |
659.6 |
3,158 |
151 |
10.1 |
47 |
FTNT |
フォーティネット |
770.3 |
25.3 |
2,854 |
70 |
9.1 |
27 |
SPLK |
スプランク |
450.2 |
-217.1 |
1,400 |
87 |
19.2 |
32 |
CYBR |
サイバーアークソフトウェア |
103.0 |
10.0 |
430 |
21 |
19.9 |
24 |
3692 |
FFRI |
7.1 |
1.4 |
52 |
4 |
55.6 |
14 |
- 注:売上高、純利益の決算期は、パロアルトネットワークスが14年7月期、スプランクが15年1月期、FFRIが15年3月期、それ以外は14年12月期。従業員数は各直近決算期末。時価総額は、6月12日。FFRIの売上高、純利益、時価総額は123円/ドルで換算しています。
会社資料、ブルームバーグよりSBI証券作成
図表3は、図表2であげた銘柄の業績(前期実績)と投資指標です。
まず、目につくのが、時価総額÷売上高の倍率の違いです。新しいタイプの脅威に対応している企業の同倍率は10倍台後半以上と株式市場で非常に高く評価されており、旧来型サービス中心の企業と明確に区別されていることが分かります(なお、時価総額÷売上高を取り上げているのは、利益水準が低い、または赤字の企業が含まれるためです。そうでなければ、PERを使うところです。)
また、これらの新たな脅威に対応している企業は、高成長が続いているものの社歴が短い企業が多く、収益性がまだ低い会社が多くなっています。従業員1人当たり売上高を見ると、ファイア アイの低さが目立っています。幅広い脅威に対応するために先行投資がかさんでいるのが要因と思われますが、同業のパロアルトネットワークスと比べた収益性の低さは気になるところです。
一方、特定分野のソフトウェアを提供する企業については、サービス型の企業ほど労働集約的でないため、製品需要が伸びれば収益は大きく改善する可能性がある点に注目できます。スプランクの純利益が大幅な赤字となっているのは、従業員に対する株式報酬が要因で、これを除くと1,100万ドルの黒字でした。また、FFRIのバリュエーション(時価総額/売上高比)が50倍超と特に高くなっていますが、16年3月期の売上倍増が見込まれていますので、今期予想ベースでは20倍台に下がります。
ピックアップした銘柄のポイント |
前段での検討を踏まえ、標的型サイバー攻撃などへの対応で今後の活躍が期待される企業を中心に5銘柄をピックアップしました。総合的サービスの提供企業からは、新しいタイプの脅威への対応で注目されている2社と業界最大手企業、特定分野で競争力の高い製品をもっている2社を選んでいます。なお、業績予想は、米上場企業はコンセンサス予想、FFRIは会社予想によります。
銘柄コード | 国籍 | 米国 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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【会社概要】 |
銘柄コード | 国籍 | 米国 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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【会社概要】 |
銘柄コード | 国籍 | イスラエル | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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【会社概要】 |
銘柄コード | 国籍 | 米国 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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【会社概要】 |
銘柄コード | 国籍 | 日本 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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【会社概要】 |
*株価日足チャートは、2015/6/12時点のものです。