3Q(7-9月)決算速報(現地10/30寄り前発表)
医薬品製造事業を展開する世界的大手企業。研究開発重視で、売上の25%程度を投入しています。2023年12月期売上高は糖尿病治療薬が約6割、がん治療薬が約2割を占めます。糖尿病治療薬のマンジャロや肥満治療薬のゼップバウンドの成長が投資家の熱い視線を集めます。
●決算発表当日の株価:846.83ドル(-6.28%)
●売上高:114.4億ドル、前年同期比+20.0%(予想121.8億ドル)×市場予想を下回った
●調整後EPS:1.18ドル、前年同期は0.10ドル(予想1.51ドル)×市場予想を下回った
●粗利益率:82.20%(予想82.21%)△市場予想とほぼ一致した
●24年12月期通期売上高見通し:454.0~460.0億ドルにレンジ上限を下方修正、従来見通しは454.0~466.0億ドル(予想462.1億ドル)×中間値が市場予想を下回った
●24年12月期通期調整後EPS見通し:13.02~13.52ドルに下方修正※、従来見通しは16.10~16.60ドル(予想13.44ドル)×市場予想を下回った
※下方修正は買収した企業の仕掛研究開発費計上の影響大とみられる
肥満治療薬を牽引役に成長期待が強かった同社ですが、予想外の通期売上・利益見通し下方修正。株価は6.28%の下落となりました。
決算発表当日のチャート
決算のポイント
個別医薬品売上高
●マンジャロ(糖尿病治療薬)売上高:31.1億ドル、前年同期比+120.9%(予想36.2億ドル)×市場予想を大きく下回った
●ゼップバウンド(肥満症治療薬)売上高:12.6億ドル、前年同期比約8.4倍(予想16.3億ドル)×市場予想を大きく下回った
●トルリシティ(2型糖尿病治療薬)売上高:13.0億ドル、前年同期比-22.0%(予想12.1億ドル)〇市場予想を上回った
●ベージニオ(抗悪性腫瘍剤/乳がん向けなど)売上高:13.7億ドル、前年同期比+32.0%(予想13.9億ドル)△市場予想とほぼ一致
経営陣の主なコメント
●23年第3四半期に売却したオランザピン薬ポートフォリオの利益を除いた比較では収益は42%増加した。新製品ではマンジャロとゼップバウンドが売上を牽引、30億ドル以上増加した。米国での需要は堅調。
●調整後EPSは 1.18 ドル、前年同期の 0.10 ドルから増加。また買収企業のIPR&D 費用による 3.08 ドルのマイナスの影響が含まれる。
●新薬のパイプラインでは、中~重度のアトピー性皮膚炎の治療薬イブグリース が米国で、アルツハイマー病初期症状治療薬ケサンラが日本と英国で承認されるなど重要なマイルストーンを達成した。
●当社の製造拡大計画は引き続き最優先事項。9月にはアイルランドでの製造拠点を拡大するため約20億ドルを投資。2020年以降に発表した製造施設への投資・買収総投資額は200億ドルを超える。加えてリリー・メディシンファウンドリーの開発に追加で45億ドルを投資、製造プロセスの研究開発、臨床試験用高品質治験薬の開発に専念する。このファウンドリーは本社に近接する。当社のパイプラインに対する自信と、世界中の患者に革新的な医薬品を届けるという当社の緊急性を強調するものだ。
●ゼップバウンドはまだ発売のごく初期段階にあるとみている。3Qの価格設定は2Qより安定している。当社が重要視するのは販売アクセスを増やし続けること。ゼップバウンドは承認により米国以外でも発売された。今後、価格設定は世界販売動向などの影響が及ぶ可能性もあろう。
決算を受けたマーケットの反応
ゼップバウンドとマンジャロは2~3Qの生産能力拡大の結果、2Q末時点で卸売業者の在庫が増加。それが原因で3Qは予想外の売上スピードダウンに繋がったようです。成長期待が強かった同社。通期売上高・利益下方修正はネガティブ・サプライズとなり、一部アナリストは廉価な肥満治療「模倣」薬の影響も指摘します。
しかし肥満治療薬の市場規模は22年の24億ドルから30年には770億ドルに拡大する有望市場との見方もあります。ゼップバウンドは23年にFDA(米食品医薬品局)に承認。会社は同薬は依然、初期段階との見方を示します。生産・販売体制が整備され世界展開がすすむ同薬。株価の調整局面は買い場提供となるのか!?同社株から目が離せません。
Bloombergがまとめたアナリストの目標株価平均:1,016.57ドル
同、アナリスト・レーティング:5段階評価の4.50
同、相関チャート上位の同業はメルク(MRK)、アッヴイ(ABBV)、ファイザー(PFE)
最低投資金額:129,600円(10/30終値、1ドル153円換算)