3Q(10-12月期)決算速報(現地2/7引け後発表)
ソフトバンクグループの傘下で半導体設計の世界最大手企業です。スマートフォン向け半導体設計では9割超のシェアを占めます。同社の売上高は主に半導体企業にライセンスを供与した際のライセンス収入、チップ出荷の際のロイヤルティー収入で構成されます。省電力設計に強味を有する同社。AI向けなど大量の電力を消費するチップ向けにシェア拡大が期待されます。
●決算発表後の時間外取引(日本時間10:00時点):92.30ドル(+19.9%)
●売上高:8.24億ドル、前年同期比+14%(予想7.60億ドル)〇市場予想を大きく上回った
●調整後EPS:0.29ドル(予想0.25ドル)〇市場予想を上回った
●1-3月期売上高見通し:8.5〜9.0億ドル(予想7.79億ドル)〇市場予想を大きく上回った
●1-3月期調整後EPS見通し:0.28〜0.32ドル(予想0.21ドル)〇市場予想を大きく上回った
●24年3月期通期売上高見通し:31.6〜32.1億ドルに上方修正、従前は29.6〜30.8億ドル(予想30.2億ドル)〇市場予想を大きく上回った
●24年3月期通期調整後EPS見通し:1.20〜1.24ドルに上方修正、従前は1.0〜1.10ドル(予想1.05ドル)〇市場予想を大きく上回った
売上高や調整後EPSは会社予想、市場予想を上回る着地となりました。また、24年3月期通期の売上高、調整後EPS見通しを上方修正、市場予想を大きく上回りました。AI向けが原動力となっているとみられ、好感した株価は引け後の取引で19.9%高と急騰しました
引け後の時間外取引のチャート
決算のポイント
●ライセンス及びその他売上高:3.54億ドル 、前年同期比+18%(予想3.12億ドル)〇市場予想を上回った
●ロイヤルティー売上高:4.70億ドル、前年同期比+11%(予想4.49億ドル)〇市場予想を上回った
●調整後売上総利益:7.97億ドル(予想7.46億ドル)〇市場予想を上回った
●調整後粗利益率:96.7%(予想96.4%)〇市場予想を上回った
●チップ出荷量:77 億個、前四半期は71億個、累計2,803 億個
●四半期売上高は過去最高、ライセンス契約は5件の新規ATA(Arm Total Access:基盤技術への容易なアクセスを提供等)契約が牽引
●高性能CPU向けは様々な半導体でAI対応するニーズが高い
●ロイヤルティー収入はスマホ向け売上高が強い、*Arm V9の浸透がすすむ
●Arm V9はクラウド・サーバーおよび自動車向けにも伸びている
*Arm V9:2021年、10年ぶりに刷新した次世代型の基本アーキテクチャ
経営陣の主なコメント
●3Q(10-12月期)の売上高は過去最高、当社会社予想の上限を上回る着地だった。4Q(1-3月期)はさらに記録的な四半期になると予想している
●アームは30 年以上にわたって 2,800 億個以上のチップを築き上げた。そしてそれはハードウェア、ソフトウェア両方のエコシステムを支える盤石な基盤を築いた。当社チップを搭載したハード人気が高まればソフト人気も高まり、ソフト人気が高まればハード人気も高まるというスパイラルの相乗効果を招いている
●ロイヤルティー収入ではArm V8からV9に大幅な移行が起きている。これによりスマートフォン分野だけでなく、インフラストラクチャーやその他のマーケット(クラウドや自動車)でも成長が見られ牽引している
●AI向け引合い強い。エヌビディアのグレース・ホッパー200などトレーニング/推論用や、グーグルのジェミニ・ナノ、サムスンのギャラクシーS24 などのエッジ デバイスに至るまで活用されており、そしてそれらはすべて Armのアーキテクチャを使用している
決算を受けたマーケットの反応
11/8に発表した決算では10-12月期の会社見通しは慎重な発言が目立ちましたが、フタを開けると会社予想の上限を上回る好調な内容でした。1-3月期には「記録的な期になりそうだ」と自信を示す同社。基本アーキテクチャの契約がV8からV9に移行が進んでいること、スマホや家電向け中心からAI活用のクラウド・サーバーや自動車のニーズ取込みに成功しつつあるようです。
省電力設計が特徴のアーム・アーキテクチャ。大量の電力を消費するAI向けシステムとの相性は良好。株価上昇ステージは始まったばかりかもしれません。
Bloombergがまとめたアナリストの目標株価平均:74.24ドル
アナリスト・レーティング:5段階評価の4.06
最低投資金額:11,400円(2/7終値、1ドル148円換算)