英国が欧州連合(EU)を離脱する2019年3月29日まで残り1カ月ほどとなりました。タイムリミットが迫りつつありますが、英国とEUの再交渉が進んでいる様子はありません。英国の「合意なき離脱」に備えて企業が英国から撤退する動きも出てきており、「いったい何が起きているのだろう?」と思う方も少なくないと思います。
そこで本稿では昨年末のレポート「ブレグジット総点検!今後のリスクイベントとは?」に続く形でブレグジット交渉の現状と今後発生しうるリスクイベントについて総点検しています。また、eワラントを活用したリスクに備える取引戦略についても紹介しています。
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1月15日の離脱協定案否決からこれまでの動向
英国のメイ首相は昨年12月11日に予定していた離脱協定案の議会採決について、年明けの1月15日に延期しました。
1月15日、英国議会下院では離脱協定案が採決にかけられましたが、大方の予想通り、賛成202票、反対432票の大差で否決され、メイ首相は代替案を示すことになりました。
1月21日、メイ首相は離脱協定案の代替案として、アイルランドとの国境問題への対応の変更を検討することなどを発表しましたが、与野党議員によるメイ首相の代替案に対する修正案も議会に提出されることとなり、1月29日に採決することになりました。
1月29日、メイ首相の代替案と与野党議員の7本の修正案のうち2本が可決されました。メイ首相の代替案は正式な離脱協定というより、EUとの離脱協定案の修正を求めるという方針であり、一度決めた協定案の再交渉には応じないとしているEUの反感を買いました。
市場では「合意なき離脱」となるリスクが高まったとみなされ、年始から上昇していた英ポンド対円相場は下落に転じました。
2月12日、メイ首相は2月13日までにEUと離脱協定案の修正案をまとめるとしていましたが、期限を2月26日までに延期すると発表しました。
2月18日、英国の離脱担当相は、英国のコックス法務長官が19日に修正案を示し、EUのバルニエ首席交渉官と再交渉を行うと発表しました。
今後のリスクイベント
離脱協定案の修正案を期限の2月26日までにまとめることができるかが当面のポイントとなり、いくつかのシナリオがあります。
1. 26日までに修正案がまとまった場合
@次のハードルは議会での採決となり、議会で修正案が可決されれば「合意なき離脱」が現実のものとなる可能性は低下し、英ポンドは急騰するかもしれません。
A議会で修正案が否決されれば「合意なき離脱」が現実のものとなる可能性が高まり、英ポンドは売られる可能性が高いと考えられます。
2. 26日までにまとまらない場合
メイ首相は直ちに進捗状況を議会に報告し、その翌27日に審議がなされる予定ですが、議会におけるメイ首相の求心力が下がっていることからして、1.Aの場合と同様に「合意なき離脱」が現実のものとなる可能性が高まり、英ポンドは売られる可能性が高いと考えられます。
リスクに備えた取引戦略案
当面のイベントは26日までの離脱協定案の修正案の取りまとめの可否となりますが、シナリオの発生確率を考えると1.@となる可能性は低いものと思われます。投資戦略としては英ポンドの下落をメインシナリオとしつつ、土壇場での修正案可決で英ポンド急騰というサブシナリオも考慮して、コール型eワラントとプット型eワラントを両方保有するポジションを構築します。
英ポンド下落で利益の獲得を狙えるプット型eワラントは、権利行使価格が現在の英ポンド相場よりも高め、取引価格も高めの銘柄を選び、わずかな下落でも利益を狙える銘柄を検討します。
一方で、英ポンド急騰に備えるコール型eワラントは、急騰の可能性が低いことから、権利行使価格は現在の英ポンド相場よりも高め、取引価格は安い銘柄を選びます。
eワラントの価格は将来得られる利益の期待値と解釈することもできるので、可能性が高いシナリオには価格の高い銘柄、可能性が低いシナリオには価格の安い銘柄を利用するというアイディアです。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎(おのだ まこと)
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