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原油価格の下落によるメリットがもっとも大きい国とは?

2015/5/25

日本の10倍の人口を抱え、経済成長率の高さでも存在感を増しているインドですが、恒常的な経常収支の赤字が長年の国家的な課題となっていました。主因は原油と金の輸入で、特にインドで産出されない原油は輸入額の3割を超えています。
このため、インドは昨年末からの原油価格の急落のメリットがもっとも大きい国の一つと考えられてきました。また、モディ首相就任以来、いよいよインドが改革に動き出したという期待による“モディ効果”もあって、インド株のパフォーマンスは極めて堅調です。
そこで、「原油価格とインド株の値動きがおおむね逆行する」と考えてよいものかどうかを調べてみました。

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原油価格とインド株はワニの口?

図1は過去20年のインドの代表的な株価指数であるCNX NIFTY指数(NIFTY 50」)とWTI原油価格の推移です。みてとれるように、1996年後半、2000年のITバブル崩壊後、2008年初頭のサブプライムバブル崩壊局面、2011年から2012年初めのユーロ危機において、原油価格(緑線)が急騰すると、NIFTY50は急落しています。
逆に、2014年後半からの原油急落局面では、NIFTY50は急上昇しています。これらを見ると、図中のの矢印で示されている時点で二本の線グラフがちょうどワニの口のように上下に大きく開いていることが分かります。
ところが、”ワニの口“の期間は始まってから半年から1年程度だけです。過去20年全体でみれば原油もインド株も大きく上昇していて、両方とも上昇している期間や、ともに急落している期間も意外に長くあります。そう考えると、「原油価格とインド株の逆行」については一部区間の値動きが投資家にとって印象的なため、あるいは現地からの報道をそのまま流してるメディアが多いために、「原油が上がればインド株は下がり、原油が下がればインド株は上がる」と考えている方が多いともいえそうです。

図1:インド株と原油

図1

※ロイターデータよりeワラント証券が作成

米株、日本株も併せてみると一般的な認識とは違う?

石油ショックなどのように原油価格が急騰すると石油消費国から産油国への富の移転が起こり、石油消費国では物価が上がって増税と同様な景気抑制効果が生じます。逆に、最近のように原油価格が急落すると、産油国では原油輸出金額が減って景気が悪くなる一方、先進国・新興国を問わず石油を輸入している消費国では、減税と同様の景気浮揚効果が生まれます。
とはいえ、原油輸入に関しては実は日本もインドと同様に全輸入の3割超もの割合が鉱物燃料なので、原油と株価の影響は似たようなものになっているとも考えられます。

そこで、NIFTY50(インド)、TOPIX(日本)、S&P500(米国)とWTI原油価格の推移を1996年1月を100として比較したのが図2です。
これを見ると、「原油価格やインド株に比べると日本株は底這いで、最近の戻しも出遅れ修正にすぎない」、「原油価格が最近下がったといっても、過去20年のパフォーマンスは米国株と同程度に高い」、「インド株、米国株、日本株は値動きの程度は違うものの、値動き自体は全体としてかなり似ている」、「インド株、米国株、日本株のどれも原油と同じ方向に動いていることが結構多い」といえます。

図2:NIFTY50、TOPIX、S&P500とWTI原油(1996.1=100)

図2

※ロイターデータよりeワラント証券が作成

インド株との相関

図2のチャートだけでははっきりしないので、インド株(NIFTY50)とTOPIX、S&P500、WTI原油価格の相関を調べてみました。また、株式の場合は2000年頃を境に中国の台頭と経済のグローバル化で各国間の相関が高まっていることが分かっているので、2000年までと2001年以降の期間に分けて計算しました(図3)。
まず、NIFTY50とTOPIX、NIFTY50とS&P500ともに1996年から2000年までの期間は極めて相関が低く、日本株とインド株、米国株とインド株といった組み合わせは、リスクを低減する国際分散投資の観点から極めて効果的であったといえます。ところが、ともに2001年から2015年4月までの期間では、相関がTOPIXで0.47、S&P500で0.58と大きく上昇しています。それでも分散投資によるリスク低減が期待できる水準とはいえるものの、効果が落ちています。
一方、NIFTY50とWTI原油では、2000年までも2001年以降も相関は低水準のままほとんど変わっていません。なお、注意すべきなのは相関が0.3程度といってもマイナス(逆相関)ではないという点です。つまり、全体を通してみれば原油もインド株も同じ方向に動く傾向があり、必ずしも逆行しているとはいえないということです。

図3:インド株(NIFTY)との相関(月次騰落率、終値ベース)

図3

※ロイターデータよりeワラント証券が作成

投資に活かすなら

半年〜1年程度の期間であれば、原油価格と株価が逆行することがある点に着目すれば、逆行を確認してから数週間から数ヶ月程度の短期トレーディングも一案と考えられます。

例えば、原油上昇・株価下落なら満期日までの残存日数が十分にあるWTIコールや原油ETFなどと組み合わせて日経平均やインド株を買うことも検討できそうです。
例)
WTIコール(2016年3月限WTI原油コール1回、権利行使価格45ドル、2016/2/17満期)
日経平均マイナス3倍トラッカー16回(2015/9/9満期)
インド株バスケット8回プット(権利行使価格1400ポイント、2015/12/9満期)

原油下落・株価上昇の逆行パターンならWTIプットと組み合わせて、日経平均プラストラッカーやインド株コールなどが効果的とも思われます。
例)
WTIプット(2016年3月限WTI原油プット4回、権利行使価格65ドル、2016/2/17満期)
日経平均プラス5倍トラッカー16回(2015/9/9満期)
インド株バスケットコール10回(権利行使価格1500円、2015/12/9満期)
※2015/5/25日現在

一方、数年単位の長期間の投資なら、インド株と原油のリターンの高さと相関の低さに着目し、日本株・インド株・WTI原油、あるいは米国株・インド株・WTI原油というように先進国株式・新興国株式にETFなどを用いた原油投資を組み合わせることが、ポートフォリオ全体のリスク低減に役立つと思われます。

(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)

eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)

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