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株式益回り(Earnings yield)

株式益回り(Earnings yield)

2024/11/27

株式益回りは次のように計算されます;

1株当たり利益÷株価×100

計算結果をパーセンテージにする理由はそもそも株式益回りを見る動機として市中金利と比較するという目的があるからです。

一般に株式と債券は投資対象として競合関係にあるとみなされます。なぜなら債券から高いリターンを得られるのなら、わざわざ大きなリスクを取って株式を買うに及ばないからです。

普通、市場参加者は株式益回りを10年債利回りと比較します。

2024年のS&P500指数のEPSは240.09です。11月22日(金)のS&P500指数は5,969.34です。すると現在の米国市場の株式益回りは4.02%ということになります。

一方、米国の10年債利回りは4.4%です。

すると10年債利回りが株式益回りを上回っていることになります。

ちなみに来年、つまり2025年の予想EPSである275.16を代入すると計算結果は4.6%となり、この場合は株式益回りが10年債利回りより高い数字になります。

両者の「差」をリスクプレミアムといいます;

株式益回り - 10年債利回り = リスクプレミアム(Equity Risk Premium)

歴史的には米国の株式市場のリスクプレミアムは3%から5%の範囲内に収まることが殆どです。言い換えれば10年債利回りが2%とすれば株式益回りは5%から7%が普通なのです。

いま上の例に戻ると;

4.02 - 4.40 = -0.38

となり、リスクプレミアムがマイナスになってしまっています。

現在のようにリスクプレミアムが0またはマイナスになった過去のケースでは、株式市場は遅かれ早かれ長期調整に入るケースが多かったです。

1966〜69年にかけては10年債利回りが上昇することでリスクプレミアムが0になり、連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めを行いました。株式市場は横ばい相場から下落に転じ、株価指数は約30%下落、米国はリセッション入りしました。

1999〜2000年にかけてはドットコムブームで株価指数が上昇したことでリスクプレミアムが0になり、2000年3月にITバブルが崩壊するとS&P500指数は約-50%、ナスダック総合指数は約-80%の下落を記録しました。

2007年のケースでは10年債利回りが5%に迫る一方、株式市場は楽観的だったのでリスクプレミアムはほぼ0となり、その後2008年にリーマン・ショックが起き、S&P500指数は-57%の下落を演じました。

2021年には10年債利回りが1%前後と低水準だったのに対し株式益回りもコロナ後の不景気で企業の利益が吹き飛んだ関係でそれ以上に低下し、リスクプレミアムは0に近づきました。それにもかかわらず株式市場では「レバナス・ブーム」が囃され、その反動で2022年のナスダック総合指数は-33.1%を記録しました。

株式益回りは「売り時!」を測るタイミングツールとしての利用価値は余り無いと思いますが、大掴みに、いま株式市場はバリュエーション的に魅力があるのか、それとも無いのか? を体感する尺度として一定の利用価値があります。

現在の株式益回りから計算されるリスクプレミアムが0になってしまっているということは、度を越した楽観論には懐疑的になったほうがいいということを示唆していると思います。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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