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アセット・アロケーションの初歩
アセット・アロケーションの初歩
2018/5/29
今回はアセット・アロケーションの初歩について書きます。
アセット・アロケーションとは?
アセット・アロケーションとは「資産配分」を指します。我々は株式投資と聞くとすぐに「次に上がる株を買うこと」と考えがちです。そういう考えでも構わないのですが、未来は誰にもわからないわけですから実際の投資では想定外のことが次々に起こります。アセット・アロケーションは投資に「バランス感覚」を持ち込むことでムリ・ムラ・ムダをなるべく抑えようという試みに他なりません。
「ポートフォリオのパフォーマンスの大半はアセット・アロケーションで決まる」そう書くと(なんだ、退屈だな)と皆さんは思うかも知れません。しかし実際に投資にあたってはアセット・アロケーションがあなたのポートフォリオの成績のかなりの部分を決定してしまいます。だからアセット・アロケーションは軽視すべきではありません。
「クールな頭で現実的な想定の下で判断せよ」アセット・アロケーションは(よし、うんと儲けてやるぞ!)と熱くなってやるものではありません。むしろその正反対のクールな態度でやるものです。一例としてアメリカの投資のプロたちが運用している年金基金の過去10年間の平均パフォーマンスは年率6.4%でした。
年金は受益者たちの老後の生活にかかわるとても大事なお金を扱っている関係で保守的な運用をしています。ここで言う保守的とは、具体的にはポートフォリオの中身は株式だけではなく元本が保証されている債券なども一部組み入れられているということです。年金基金の平均パフォーマンスが6.4%と、同期間の株式市場のリターンより低くなっているのはそのためです。でもそれは石橋を叩いて渡るような慎重な態度からわざとそういう選択をしたのです。
いま機関投資家の年金ポートフォリオのリターンが年率6.4%なのだから、我々も(年率100%を目指す!)というような非現実的な期待を持つのは滑稽と言うべきでしょう。つまり「期待もほどほどに!」ということです。
あなたがリアリストであればあるほど、アセット・アロケーションはこなれたものになりますし大きな失敗のリスクは軽減できます。
アセット・アロケーションに出来る事
アセット・アロケーションに出来る事は要約すれば次の四点に尽きます。
1.複数のアセット・クラス(投資対象の種類のこと)に分散すれば全体的なポートフォリオのリスクは軽減できる。
2.ひとつのアセット・クラス(=たとえば株式部分)の中でもさらに銘柄を分散すれば、ひと銘柄の株式だけを保有する際にこうむりやすい業績リスクやイベント・リスクを回避しやすい。
3.ETFやインデックス・ファンドなどのロー・コストな投資商品を上手く活用することでコストを低く抑えることが出来る。
4.1年に1回程度ポートフォリオを見直し、異常なほどパフォーマンスが良好だったセクターなどがあればそれをリバランス(=少し減らし、他へ回すこと)すれば全体のリスクを補正できる。
このうち最後のリバランスがいちばん難しく、多くの読者にとって納得の行かない部分だと思います。なぜならひとつのセクターやアセット・クラスが上昇し始めたら、往々にしてそのようなアウト・パフォーマンスは継続するものだからです。これは真実だと思います。
だからリバランスは余り神経質に、小刻みに行うべきではありません。
長期的な展望に立ち(このセクターはパフォーマンスが良く、随分お世話になったけど、その結果として自分のポートフォリオに占める割合が突出して高くなってしまい、結果としてポートフォリオ全体が偏ったものになってしまっている)と言う風に感じた時だけ、そこを軽くすると良いでしょう。
あなたが20~30代なら定年退職するまでに長い年月があります。株式市場は時として大幅に下落することがありますから、あなたの一生のうち、一度や二度は暴落も覚悟すべきでしょう。その場合でも、あなたが未だ若く、今後も長年に渡り投資し続けられるのであれば株式市場は戻ってきます。だから余り心配する必要はありません。
逆にあなたが60歳くらいで定年退職が近いなら、余り時間は残されていません。そのタイミングで暴落が来て、虎の子の資産を吹き飛ばしてしまうとそれを挽回することは時間的にムリです。
だからあなたが高齢になるほどポートフォリオ全体のリスクは低く抑えるのが基本動作になります。
それでは具体的にどのようにしてポートフォリオ全体のリスクを調整するか?ということですが、それは債券をどれだけ組み込むかによって行われます。下は大まかなイメージです。
|
株式 |
債券 |
|---|---|---|
若い人のポートフォリオ |
80% |
20% |
中年のポートフォリオ |
70% |
30% |
老人のポートフォリオ |
60% |
40% |
つぎに株式部分ですが例えば下のような配分が考えられると思います。
地域 |
比率 |
|---|---|
米国株 |
50% |
日本株 |
20% |
その他先進国 |
15% |
新興国 |
15% |
債券部分に関しては投資適格債の方が安全ですので、それを70%、高利回り債を30%程度にすると良いと思います。
リスク、コスト
皆さんの中には(リスクは少なければ少ないほど良い)と感じる人が居るかもしれません。
その気持ちは良くわかります。でもリターンはリスクと関連しているのでリスクをゼロにしてしまうとリターンもたいへん不満足なものになってしまいます。
さらにインフレを加味した場合、完全にノー・リスクという投資対象は存在しません。
だから「ゼロ・リスクを目指す!」というのは非現実的な目標なのです。
ポートフォリオからリスクを完全に除去することは出来ないけれど、幸いにしてリスクを許容範囲内に収める工夫は出来ます。
最後に重要な点としてポートフォリオを頻繁に入れ替え過ぎると手数料で損します。
また投資口座の性格によっては実現益を出してしまった分に関しては税金を払わなければいけなくなります。だから不必要にトレードを繰り返すことは控えてください。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。
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