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2019年の国内株式
太陽光発電の余剰電力買取制度が終了する2019年 化学業界は「モビリティ」と「再生医療」に注目
2019年の化学セクターの展望は?
日本の化学業界にとって、2018年は中国の環境規制による設備停止や国内需要拡大により収益が拡大した1年でした。一方、2019年は米中貿易摩擦の余波で、中国を中心に合成樹脂などはアジア地域の買い控えが広がり、需給が緩和する可能性が考えられます。この環境下、化学メーカーはより高付加価値で技術優位性がある事業へのシフトにより、収益をさらに高めていくことが求められます。2018年前半に原油高の影響をより大きく受けた中堅化学メーカーは、2019年に原油価格低下による採算改善が期待されます。加えて、中堅化学メーカーは高シェア・ニッチ市場の製品の比率が高いため、汎用の石油化学製品の需給緩和影響も軽微と考えます。
2019年のキーワードは?
「2019年問題」です。これは、2009年11月に開始された太陽光発電の余剰電力買取制度において、定められていた10年の買い取り期間が終了し始めるのが19年で、しかも同制度以前の買い取り制度も同じタイミングで終了するという問題のことです。このため、「2019年問題」は、別名「FIT(固定価格買取制度)切れ問題」とも呼ばれています。2019年時点での買い取り終了件数は約56万件にのぼり、20年以降も毎年20万-30万件の規模で買い取り終了が続くため、FIT終了ユーザー数は2025年度までの累計で約200万件となります。 この「2019年問題」が生じた場合、買取そのものが継続したとしても、今までよりも買取価格が大幅に安くなることが予想されます。そのため、発電した電気を安い価格で売るよりも、自分たちで使おうとする人が増え、電気を蓄積できる「蓄電池」に注目が集まると考えられます。
化学業界における注目テーマは?
「モビリティ」と「再生医療」が注目テーマとみています。大手化学メーカーは、そろって「モビリティ」(自動車)向けの事業拡大に取り組んでいます。世界的な環境規制強化のなか、電気自動車(EV)の需要拡大や自動車の軽量化が加速しています。 化学メーカーはEV向けのリチウムイオン電池材料や省燃費タイヤなどを生産していますが、いずれも日本メーカーが市場を占有しています。軽量化素材としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)の需要拡大が見込まれます。「再生医療」とは、幹細胞等を用いて、臓器や組織の欠損や機能障害・不全に対し、それらの臓器や組織を再生し、失われた人体機能の回復を目指す医療です。既存の医薬品では治療が難しいものや、治療法が確立されていない疾患に対して新たな治療法となる可能性があります。この分野では、細胞培養技術などで化学メーカーが注目されそうです。
澤砥 正美 (さわと まさみ)
SBI証券 企業調査部(化学・合繊業界担当 シニアアナリスト)
1984年にサンダーバード国際経営大学院卒業後、5年間米国化学大手企業の日本法人であるデュポン・ジャパンにて、日本の化学大手企業との合弁事業の設立・運営および化学品の開発・マーケティングに従事。その後1990年から化学業界のアナリストに転じる。クレディ・リヨネ、BZW、HSBC、クレディ・スイスなどの外資系証券会社にて、27年間にわたり化学・合繊業界調査および企業分析に携わる。クレディ・スイス証券では、化学業界20社および繊維業界3社の調査を担当したほか、公益社団法人 日本証券アナリスト協会 ディスクロージャー研究会における化学・合繊専門部会の部会長として化学・合繊業界のディスクロージャー評価の向上にも尽力。日経アナリストランキングやInstitutional Investorsランキングでは、常に上位の評価を得る(2007年日経アナリストランキング化学部門4位、Institutional Investorsランキング化学部門3位)。2017年6月より現職。主力銘柄のカバーに加え、アナリストカバレッジの少ない中小型銘柄の調査も担当。最近では、リチウムイオン電池材料、有機EL材料、自動車軽量化素材およびライフサイエンス分野のリサーチにも注力している。
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