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2018年の国内株式 重要セクター:化学・合繊
独自技術による高シェア自社開発製品での
収益拡大が見込まれる中堅化学株に注目
シェールガスの影響は限定的で、シリコンウエハーの需給ひっ迫続く
2017年に最高益を更新した化学企業の業績好調は、2018年も継続する見通し。
中国の環境規制強化による石油化学設備の稼働停止は長期化すると予想されるほか、米国でのシェールガス由来のエチレン生産設備の立ち上がりも2018年後半となろう。このため、総合化学の石油化学事業における採算は高止まりが予想され、最高益更新が見込まれる。半導体向けシリコンウエハーは2017年後半からの値上げが本格的に浸透し、ウエハーメーカーの業績はコンセンサスを上回ろう。
最終ユーザーである自動車業界向けには、自動車の電動化と軽量化に向けた素材需要(リチウムイオン電池材料や炭素繊維・エンジニアリングプラスチック)の拡大が見込まれる。エレクトロニクス業界向けには、シリコンウエハーに加え、有機EL材料(フレキシブルディスプレイ向けポリイミド)の本格拡大が期待される。
ライフサイエンスへの取り組みが本格化する年に
2018年の化学業界においての注目テーマは、2017年に続き「シリコンウエハー」・「自動車電動化・軽量化」・「有機EL」であるが、これに加え「ライフサイエンス」への取り組みが本格化する年になろう。
抗体医薬・核酸医薬など次世代医薬品開発において、日本の化学メーカーの高分子技術に基づく製品開発が活発化することが予想される。半導体・液晶産業において、アジア企業の存在感が高まるなか、日本の化学メーカーは中長期の収益の柱をライフサイエンス事業にシフトしつつある。
農薬事業でも、グローバルの食糧需要増加に対応するべく、中長期で新剤のパイプラインが出揃いつつある。
高シェア自社開発製品
2017年に汎用石油化学の市況上昇により最高益を更新し、株価パフォーマンスも好調に推移した大手化学株に替わって、2018年は独自技術による高シェア自社開発製品での収益拡大が見込まれる中堅化学株に注目したい。
ニッチ市場で高シェアな製品を持つ中堅化学企業は、原料コストの比率が低いため、原油価格が上昇する局面でも採算が悪化しにくい。また、高付加価値な先端材料が多いため、需要が安定している。加えて独自技術に基づく自社開発製品のため、中国などアジアメーカーとの競争の可能性も低い。
特に中期的に需要拡大が見込まれる有機ELや自動車材料における高シェア・ニッチ市場向けの素材を手がける企業に注目している。
澤砥 正美 (さわと まさみ)
SBI証券 投資調査部(化学・合繊業界担当 シニアアナリスト)
1984年にサンダーバード国際経営大学院卒業後、5年間米国化学大手企業の日本法人であるデュポン・ジャパンにて、日本の化学大手企業との合弁事業の設立・運営および化学品の開発・マーケティングに従事。その後1990年から化学業界のアナリストに転じる。クレディ・リヨネ、BZW、HSBC、クレディ・スイスなどの外資系証券会社にて、27年間にわたり化学・合繊業界調査および企業分析に携わる。クレディ・スイス証券では、化学業界20社および繊維業界3社の調査を担当したほか、公益社団法人 日本証券アナリスト協会 ディスクロージャー研究会における化学・合繊専門部会の部会長として化学・合繊業界のディスクロージャー評価の向上にも尽力。日経アナリストランキングやInstitutional Investorsランキングでは、常に上位の評価を得る(2007年日経アナリストランキング化学部門4位、Institutional Investorsランキング化学部門3位)。2017年6月より現職。主力銘柄のカバーに加え、アナリストカバレッジの少ない中小型銘柄の調査も担当。最近では、リチウムイオン電池材料、有機EL材料、自動車軽量化素材およびライフサイエンス分野のリサーチにも注力している。