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アルゼンチン・ショックに端を発する新興国通貨の下落と今後の見通し
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アルゼンチン・ペソ急落の背景
1月23日以降、市場ではリスク回避の動きが広がり、アルゼンチン・ペソが急落するなど新興国通貨の変動率が大きくなっている。下落率が大きかったアルゼンチン・ペソは22日のNY市場終値と比較して対ドルで23日に13%も下落した。にわかに市場がリスク回避モードとなった背景には以下に挙げた3点の要因など複数の要因が重なったことがあると考えられる。
【1】米国のテーパリング(QE3の買取規模縮小)開始に伴う新興国からの資金流出懸念
【2】中国の景気減速懸念
【3】アルゼンチン当局の為替介入見送り
昨年の5月にバーナンキFRB議長が量的緩和第3弾(QE3)縮小(テーパリング)を示唆して以降、新興国通貨は資金流出懸念から対ドルで弱含む状況が続いている。
そのような環境の中、23日にHSBC/マークイットが発表した1月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は49.6と前月の50.5から低下し、景況の改善・悪化の節目となる50を6カ月ぶりに下回るなど景気減速を示唆するものであった。
それと同日に、アルゼンチン中央銀行が自国通貨を支える目的で実施してきた米ドル売り、アルゼンチン・ペソ買いの為替介入を見送ったことで市場参加者の不安心理が一気に噴出し、今回の急落に繋がった。
その後、24日にアルゼンチン当局は為替介入を再開し、為替規制強化の方針が示唆されたことで、アルゼンチン・ペソ急落に端を発する変動は早々に収束の可能性が高い。
また、アルゼンチンには2001年のデフォルト以来、海外の投資家からの資金はほとんど流入しておらず、市場で懸念されているようなアルゼンチンに起因した世界的な新興国ショックには至らないと考えている。
しかし、今回の急落でトルコ、インドネシア、インド、ブラジル、南アフリカといった「フラジャイル・ファイブ(脆弱な5通貨=Fragile 5)」とも称される国の通貨に改めて世界の投資家の注目が集まった点については注視しておく必要がある。
- (出所)BloombergよりSBI証券作成
- (注)2013年11月1日の各国の為替レートを100として指数化。
フラジャイル・ファイブ経済危機発生可能性は?
「フラジャイル・ファイブ」とは、ブラジルレアル、インドルピー、インドネシアルピア、トルコリラ、南アフリカランドの5通貨を指しており、FRBのテーパリングに伴って下落が進みやすい新興国通貨の総称として、米投資銀行モルガン・スタンレーが名づけたものである。これらの5通貨がFRBのテーパリングに伴って下落が進みやすいと考えられている背景にはこれらの国に共通する以下の要因が挙げられている。
【1】高い経常収支の赤字
【2】高いインフレ率
【3】減速する経済成長率
【4】成長資金を国外に頼る脆弱なマクロ経済構造
確かにこれらの要因は、資金流出により発生する経済危機と密接に関係している。そのため、新興国からの資金引き揚げを連想させるFRBのテーパリングに反応して通貨が下落しやすいと考えられている。
しかし、だからといってすぐにこれらの国において経済危機が発生するかというと現状ではそのリスクは低いと考えている。
経済危機が発生するリスクを考える際に資金引き揚げに対する耐久力を併せてみる必要がある。 国際通貨基金(IMF)では保有外貨準備の目安として(1)短期対外債務以上、(2)輸入額の3ヵ月分以上が望ましいとしている。フラジャイル・ファイブ各国の状況を見ると(1)についてはトルコ以外全ての国で基準を満たしており、(2)については全ての国で基準を満たしているため、早々に経済危機に陥る状況にはないと考えられる。
(単位)百万ドル
|
外貨準備(1) |
短期対外債務(2) |
輸入額(3) |
経常収支 |
(1)/(2) |
(1)/(3) |
|---|---|---|---|---|---|---|
ブラジル |
379,568 |
33,552 |
19,968 |
-81,374 |
11.2 |
18.8 |
インド |
292,082 |
94,761 |
38,937 |
-76,899 |
3.1 |
7.5 |
インドネシア |
99,387 |
47,096 |
15,563 |
-32,088 |
2.1 |
6.4 |
南アフリカ |
45,500 |
25,525 |
8,552 |
-23,399 |
1.8 |
5.3 |
トルコ |
102,411 |
125,153 |
20,695 |
-60,838 |
0.8 |
4.9 |
アルゼンチン |
28,530 |
32,949 |
6,167 |
-3,545 |
0.9 |
4.6 |
- (出所)Bloomberg、世界銀行よりSBI証券作成
(注)外貨準備はブラジル、アルゼンチンが2014年1月29日、南アフリカとトルコが2013年12月末、インドが2014年1月17日、トルコが2014年1月24日時点のもの。短期対外債務は2013年3Q末のもの。輸入額は直近発表値までの過去12ヶ月間の平均値。経常収支は直近発表値までの1年間の合計値。
高まる金利面での魅力
FRBのテーパリングは当面継続する見込みであり、フラジャイル・ファイブはすぐに危機的状況に陥るリスクは低いと考えられるものの、今後も変動率の高い状況が続きそうである。このように相場下落が続くとネガティブ要因ばかりが目に付き極端に弱気になりがちであるが、そのような時こそポジティブな要因にも目を凝らしておくことも重要である。
例えば、通貨下落を受けてインド、トルコ、南アフリカの各国の中央銀行は政策金利の引き上げを行っており、これらの国の金利は上昇している。
また、ブラジル中央銀行も足元のインフレ抑制のために2013年4月から継続的な利上げを実施しており金利は高い状況が続いている。フラジャイル・ファイブ各国の債券は金利面では魅力が高まっていると言え、このようなことに、今から気を配っておくことは危機が過ぎ去ったあとの投資収益に繋がりそうである。
(出所)bloombergよりSBI証券作成
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