金は米中の通商協議などを確認
更新:2025/6/9
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金は米FRB議長の行方も焦点
6月2日の週のニューヨーク金市場は、弱い米経済指標や米大統領が鉄鋼やアルミニウムに対する関税を50%に引き上げることを表明したことが支援要因になったが、米中首脳の電話会談などを受けて利食い売りが出て上げ一服となった。中心限月となる8月限は5月8日以来の高値3,427.7ドルを付けた。
トランプ米大統領は、輸入鉄鋼・アルミニウムに課す追加関税を2倍の50%に引き上げる計画を表明した。3日に大統領令に署名し、4日に発動した。ただ英国は適用対象外となった。カナダ首相府は、米政権が新たに発表した鉄鋼とアルミニウムへの追加関税や他の輸入関税の適用除外を得るため「集中的かつ活発な」交渉を行っていると表明した。一方、米大統領と中国の習近平国家主席は電話会談を行い、両国間で高まる貿易摩擦やレアアース(希土類)を巡り議論した。ただ主要課題は今後の協議に委ねられる形となった。米中は9日にロンドンで通商問題を巡り協議する見通しとなった。
5月の米ISM製造業景況指数は6カ月ぶりの低水準となる48.5に低下した。低下は3カ月連続。関税の影響でサプライヤーの納入に時間がかかっており、一部商品の供給不足が迫っている可能性を示唆している。事前予想は49.3。米ISM非製造業総合指数は49.9と4月の51.6から低下、2024年6月以来の低水準となった。事前予想は52.0。一方、5月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は13万9,000人増加で前月から減速したが、市場予想を上回り、金の圧迫要因になった。失業率は3カ月連続で4.2%となった。市場予想は非農業部門雇用者数が13万人増、失業率は4.2%だった。トランプ米大統領は6日、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長に関する決定が近く明らかになると発言、良い議長なら金利を下げるだろうと述べた。米大統領は、利下げを行っていないとしてパウエル米FRB議長を非難していた。パウエル米FRB議長の任期は2026年5月までであり、次期議長の早期指名となれば金融市場の混乱につながる可能性がある。
ロシアのプーチン大統領はトランプ米大統領と電話会談を行い、ウクライナによるロシア空軍基地への大規模なドローン(無人機)攻撃のほか、ロシア西部2州への攻撃に対してロシアは対応せざるを得ないと伝えた。米大統領は「良い会話だったが、即座に平和につながる会話ではなかった」とした。一方、国連安全保障理事会は、パレスチナ自治区ガザ地区での即時・無条件停戦と、ガザ地区全域への人道支援の制限解除などを求める決議案の採決を行ったが、米国が拒否権を発動したため、否決された。ドロシー・シア米国連大使代理は採決前「イスラム組織ハマスを非難せず、ハマスに武装解除とガザ地区からの撤退を求めないいかなる措置も米国は支持しないと明言してきた」とした。地政学的リスクが残ることは金の支援要因である。
6月6日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末4.01トン増の934.21トンとなった。弱い米経済指標やドル安を受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月3日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは18万7,905枚となり、前週の17万4,184枚から拡大した。今回は新規買いが1万2,895枚、買い戻しが826枚入って、1万3,721枚買い越し幅を拡大した。
NYプラチナは一代高値を更新
ニューヨーク・プラチナ7月限はドル安や金堅調、米中の貿易交渉に対する期待感を受けて買い優勢となり、一代高値1,182.7ドルを付けた。欧州中央銀行(ECB)理事会で利下げが決定されたことも支援要因である。ラガルドECB総裁は記者会見で「0.25%ポイントの利下げと現在の金利経路を踏まえると、われわれは良好な状況にあると確信している」と述べた。さらに「新型コロナウイルスやウクライナ戦争、エネルギー危機など複合的なショックに対応した金融政策サイクルは終わりに近づいていると思う」と述べた。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、5日のロンドンで19.27トン(前週末19.06トン)、6日のニューヨークで34.59トン(同33.61トン)、5日の南アで11.00トン(同11.00トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月3日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万0,049枚となり、前週の2万5,343枚から縮小した。
ニューヨーク金はレンジ相場を継続
ニューヨーク金は弱い米経済指標や米大統領が鉄鋼やアルミニウムに対する関税を50%に引き上げることを表明したことが支援要因になったが、米中首脳の電話会談などを受けて利食い売りが出て上げ一服となった。中心限月の8月限は5月8日以来の高値3,427.7ドルを付けたが、4月以降の3,151.0〜3,539.3ドルのレンジ相場を継続した。今週は9日の米中の通商協議などが焦点である。
6月9日からの週の注目ポイント
9日 | オーストラリア、スイス休場 |
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国内総生産(1-3月期2次速報) |
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国際収支・経常収支(4月) |
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中国消費者物価指数(5月) |
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中国生産者物価指数(5月) |
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中国貿易収支(5月) |
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米卸売在庫(4月確報値) |
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10日 | 英雇用統計(5月) |
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11日 | 企業物価指数(5月) |
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米消費者物価指数(5月) |
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米財政収支(5月) |
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12日 | 英貿易収支(4月) |
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英鉱工業生産指数(4月) |
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米新規失業保険申請件数 |
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米生産者物価指数(5月) |
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13日 | 独消費者物価指数(5月確報) |
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ユーロ圏鉱工業生産(4月) |
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ユーロ圏貿易収支(4月) |
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米ミシガン大消費者信頼感指数(6月速報値) |
※重要度を3段階で表示
金 (現物1oz.あたり) 日足 6ヵ月

<参照>SBI証券>マーケットデータより
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