３月24日の週のニューヨーク金市場はドル高が圧迫要因になったが、トランプ米大統領が自動車関税を発表すると、貿易戦争に対する懸念を受けて押し目を買われた。中心限月の６月限は一代高値3,124.4ドルを付けた。米大統領は、米国に輸入される乗用車やスポーツ用多目的車などのライトトラックに最大25％の関税を課す計画を発表した。これに対してカナダや欧州連合（ＥＵ）加盟各国は報復措置を検討している。また４月２日には相互関税の発表を控えている。国際通貨基金（ＩＭＦ）のジュリー・コザック報道官は、25％の自動車関税を含む米大統領の関税計画の影響を評価し続けているとしつつ、基本予測では米国の景気後退を見込んでいないと述べた。米国の消費者はインフレへの対策が不十分、関税に重点を置きすぎているとし、貿易戦争に対する懸念が強い。
　米国とロシアの代表団は24日にサウジアラビアの首都リヤドでウクライナ情勢に関する会合を開催した。米ロの共同声明が予定されたが、発表はなく、個別の合意が伝えられた。米ホワイトハウスは、黒海における船舶の安全な航行を確保し、両国のエネルギー施設に対する攻撃禁止の履行に向け、ウクライナおよびロシアと個別に合意したと発表した。ロシア大統領府は、西側諸国が穀物と肥料の輸出に関連する制裁措置を解除することを条件に、黒海における安全な航行を確保することで合意したと明らかにした。欧州連合（ＥＵ）の執行機関である欧州委員会は、ＥＵの対ロシア制裁措置について、解除または修正にはロシア軍がウクライナから完全に撤退する必要があるとの見解を示した。トランプ米大統領は、ロシアのプーチン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領を排除して新たな指導者を置くやり方を示唆したことに対し、「頭にきている」と述べ、ウクライナ停戦が成立しない場合にはロシアの石油を対象に「二次的な関税」を検討するだろうと述べた。
　３月の米消費者信頼感指数は92.9と前月から7.2ポイント低下し、４年以上ぶりの低水準となった。低下は４カ月連続で事前予想の94.0も下回った。第４四半期の米国内総生産（ＧＤＰ）確報値は年率換算で前期比2.4％増と、改定値の2.3％から上方改定された。米国の企業利益は、堅調な需要と価格決定力を背景に第４四半期に過去最高を記録した。２月の米個人消費支出（ＰＣＥ）価格指数は前年比2.5％上昇した。１月の伸びと同じで事前予想と一致し、インフレ高止まりが示された。今週は３月の米雇用統計の発表がある。
　３月28日のニューヨークの金ＥＴＦ（上場投信）の現物保有高は前週末比1.43トン増の931.94トンとなった。貿易戦争に対する懸念を受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会（ＣＦＴＣ）の建玉明細報告によると、３月25日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは24万9,796枚となり、前週の25万7,932枚から縮小した。今回は手じまい売りが5,082枚、新規売りが3,054枚出て、8,136枚買い越し幅を縮小した。

　ニューヨーク・プラチナ７月限は米大統領の自動車関税発表をきっかけとした金急伸を受けて買い優勢となり、20日以来の高値1,012.0ドルを付けたが、リスク回避の動きを受けて上げ一服となった。３月の米ミシガン大消費者心理指数確報値は57.0と前月の64.7から低下した。速報値は57.9。１年先のインフレ期待は５％に上昇し、2022年以来の高水準となった。株安に振れ、リスク回避の動きとなった。米大統領は４月２日に相互関税を発動する方針であり、各国の反応を確認したい。
　プラチナＥＴＦ（上場投信）の現物保有高は、27日のロンドンで18.94トン（前週末18.97トン）、28日のニューヨークで33.36トン（同33.36トン）、27日の南アで10.56トン（同10.59トン）となった。一方、米商品先物取引委員会（ＣＦＴＣ）の建玉明細報告によると、３月25日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは１万3,558枚となり、前週の２万0,507枚から縮小した。

　ニューヨーク金は米大統領の自動車関税発表を受けて貿易戦争に対する懸念から、安全資産として買われた。中心限月の６月限は一代高値3,124.4ドルを付けた。また米大統領は４月２日に相互関税を発表する。ウクライナ会合でディールが成立しなければロシア産石油に関税を賦課するとしており、地政学的リスクも逃避買いを促す可能性がある。