2026年下半期農産品価格大胆予想
更新:2026/7/6
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)
2026年上半期の農産品セクターは、グローバルベースでの豊作あるいは生産量回復を背景に緩い需給環境となった。大きな天候障害もなく、需給環境自体は予想時点でのシナリオに準ずる形で推移したが、投機筋の売り先行スタンスが強く、下げ幅が全般に拡大した。期間中、中東情勢を背景とした原油価格等の乱高下により、都度、振り回される場面もあったが、概ね影響は短期にとどまり、再度需給が注目されて弱含む商品が多かった。まずは本年1月配信の上半期価格予想と結果を略総括した上で、2026年下半期の価格動向を予想する。(総括部分の価格は当該先物市場9月限ベース、粗糖のみ10月限)
【小麦】
(12/31引け値)545.75 (1月執筆時7/1予想) 620.00(7/1引け値)600.00
大豊作を背景としたグローバル需給の緩和および価格の下落は想定通り。また、底値を付けた後の反発、600セント台回復も予想通りであった。加えて、米国冬小麦生産地帯の乾燥傾向という想定外の強材料もあったが、期間後半の大豆、トウモロコシ下落により、グローバルでの需給の緩い小麦は高値維持できず、再度下落基調に。
【トウモロコシ】
(12/31)448.50 (1月予想) 475.00 (7/1引け値)422.75
米国の史上最高の生産見通しを受け、25/26年度需給緩和見通しの環境下で、輸出需要の堅調は想定通り。また、昨年度からの反動で新穀の作付面積減も具現しているが、肥料高等の影響による一段の作付け転換(減反)は具現していない。一方、作付け時期から生育段階初期は天候に恵まれ、順調な作柄推移となっており、投機筋は売り先行のスタンスに。
【大豆】
(12/31)1,060.00 (1月予想) 1,250.00(7/1引け値)1,135.50
今年度以降のバイオディーゼル混合義務が発表され、昨年の提案以上の大幅増となった。大豆油需要には追い風であり、期間前半は上昇基調となったが、中国向け輸出需要の後退、また、新穀の作付面積増など弱材料も多く、期間後半は利益確定売り等で反落基調になった。
【粗糖】
(12/31)15.02 (1月予想) 16.00(7/1引け値)14.99
グローバルベースでの生産増、需給緩和は予定通りながら、供給過剰幅が想定以上であり、投機筋の売り先行スタンスは強かった。中東情勢は想定外ながら原油価格の上昇自体は想定シナリオで、外部要因による相応の買い材料もでていたが、反発は限定的であった。
【コーヒー】
(12/31)320.15 (1月予想) 275.00(7/1引け値)309.90
ブラジルのアラビカ種生産量回復見通し、ベトナムでのロブスタ種生産回復からコーヒー全体の需給緩和を大きな背景としたトレードはシナリオ通りであり、価格推移もほぼ想定通りであったが、期間最後の二営業日で+32.10セントの急伸となった。
【ココア】
(12/31)6,132 (1月予想) 5,500(7/1引け値)5,092
高値に起因する需要減退から期間前半に急落した。期間後半は底値を探る動きを見せているものの、需要の回復が遅れており、価格の反発も限定的であった。
本年下半期予想にあたっての取り巻く諸環境の現状は、@米国での大豆・トウモロコシの良好な作柄、A中国による米国産大豆買い付けは限定的、B2025/26年度バイオディーゼル混合義務量引き上げによる大豆油需要増、Cコーヒー・ココア(カカオ豆)・サトウキビ主要産地での比較的良好な天候推移などが挙げられる。一方、不透明要素は@エルニーニョの発生と史上最大級への発達見通し、A2025/26年度バイオディーゼル混合義務に基づく実際の大豆油需要動向、B継続する宇露紛争に起因する黒海情勢、C期間後半の南米での新穀大豆・トウモロコシ作付動向等が挙げられる。
特に、今年後半は勢力の強いエルニーニョ年となるので、過去の事象に基づくと、インド/南アジア/豪州等での旱魃可能性、近年も発生した西アフリカでの旱魃再発が期間前半でのリスク要因となる。また、期間後半では、南米、特にブラジル南部からアルゼンチンでの多雨可能性が指摘されている。もちろん、エルニーニョ発生が上記異常気象を必ず引き起こす訳ではなく、逆に想定外の地域での異常気象発生も十分あり得る事は含んでおく必要がある。
天候要因は正確な予測が不可能であり、かつ、現時点では、特段の異常は見られないことから平年並みの天候パターンを前提とした下期の価格推移予想は以下の通り。
また世界を揺るがせた中東情勢は収束方向には動いているものの、完全な解決までは程遠いと思われ、上期同様に天候、作柄を超えた突発的な世界情勢、地政学的リスクの具現が農産品市場を大きく動かす可能性も高く、引き続き大幅な価格変動が起こるシナリオもリスク要因として追記しておく。
予想価格の基準は次の通り。
小麦 CBOT軟質冬小麦先物3月限(¢/bu)
トウモロコシ CBOTトウモロコシ先物3月限(¢/bu)
大豆 CBOT大豆先物3月限(¢/bu)
粗糖 ICE US粗糖先物3月限(¢/lb)
コーヒー ICE USアラビカコーヒー先物3月限(¢/lb)
ココア ICE USココア先物3月限($/t)
現在値 2026/7/1引値
7/1予想値 2026/12/31引値
【小麦】
(現在値)627.00 (12/31) 650.00
旱魃による米国冬小麦の減産、昨年の大豊作からの反動で南半球主要輸出国では作付面積減となっており、グローバルでの緩い需給環境は平時の天候をベースとしても引き締まる方向が想定できる。天候要因では、エルニーニョの影響有無を含め豪州の作柄に注目したい。黒海情勢は、引き続き不透明ながら、今までの積み出しの実績等を考慮すると同地域の地政学リスクが価格に与えるリスクは従前の想定より小さい。
【トウモロコシ】
(現在値)457.75 (12/31) 475.00
米国需給は作付面積の減少、好調な輸出需要、国内エタノール需要の微増見通し等から、昨年比で幾分引き締まる想定であるが、平年作前提では急激な引き締まりとはならない。南米、特にアルゼンチンでの新穀作付け時期の天候がリスク要因として残るが、具現する場合でも期間終盤となろう。当面、米国の作柄を眺めつつ、天候異変がない限りは方向感が出にくい相場を見込む。
【大豆】
(現在値)1171.00 (12/31) 1250.00
米国バイオディーゼル混合義務量の大幅増加により大豆油需要=大豆搾油需要は堅調な推移が見込まれる。中国は政策的に一定量の米国産大豆買い付けを行うと考えられることから、米国の新穀需給は基本的に逼迫感が強い状態が続く見通し。エルニーニョの影響により東南アジアでのパーム油生産に障害がでると、一気に植物油市場の需給ひっ迫が具現する点は大きなリスク要因となる。期間後半は、南米の作付け動向が焦点となるが、順調な天候推移、作付けが大前提となることから、こちらも天候要因が大きなリスク要因となる。
(出所:CBOT)
【粗糖】
(現在値)16.69 (12/31) 17.00
世界的な需給緩和状況は、基本的に継続する。中東情勢の落ち着きに起因した原油価格の下落は、精糖比率増に繋がり、弱材料として働く。下期の最大のリスクは、インドのモンスーン期の降水量であり、6月実績は既に平年比60%程度との報道もある。今後も少なめ、あるいは、一部地域での旱魃に発展したら粗糖価格の上値リスクは増大する。
【コーヒー】
(現在値)289.55 (12/31) 325.00
ロブスタ種含めたブラジル、ベトナムでの生産量回復は現時点でかなり織り込まれており、既に投機筋はショートの買い戻しに動いている。足元から秋口にかけてのブラジルでの多雨傾向、ベトナムでの乾燥傾向など下期も主産地での天候がリスク要因となる。
【ココア】
(現在値)5,278 (12/31) 6,700
上期に価格下落は見たものの需要回復のペースは鈍い。現在の需給状況継続前提では、今一度、下値を探る動きが出てくると思われる。一方、西アフリカ主産地は、平年でも雨量が少ない乾季のシーズンにエルニーニョの影響がでると、2年前の急騰劇の再現リスクも内包する。
(出所:ICE)
(7月2日記)
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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