タイト化の方向性が見えた新穀需給~2026年5月度米農務省需給報告より
更新:2026/5/15
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)
5月12日に米農務省より月例需給報告が発表された。ポイントを以下列記するが、今回は初めて新穀需給見通しが示されたほか、冬小麦については実地調査をベースとした生産量見通しが発表された。冬小麦については既に週間作柄報告で悪化が伝わっているが、予想以上の減収見通しとなった。これを受けて5月12日市場ではシカゴ小麦、カンザス小麦の一部限月はストップ高まで上昇した。
◆米国トウモロコシ需給
旧穀は食用・種子・工業用需要を前月から▲15百万ブッシェル下方修正し、その分、期末在庫を上方修正した。旧穀期末在庫は2,142百万ブッシェル、在庫率は13.0%となる。一方、新穀の生産量は、例年通り3月末の作付意向面積、トレンド単収を用いるため、理論値ではあるが15,995百万ブッシェルで、前年度比▲1,025百万ブッシェル減となる。需要面は、旧穀比で飼料用、輸出用合計で▲250百万ブッシェル減と、エタノール需要は今年度同レベルとしているが、E15ガソリンの通年使用が可能となる関係で、エタノール需要が増加する可能性は排除しない。これらを受けた新穀期末在庫は、1,957百万ブッシェルで、今年度末から▲185百万ブッシェルの取り崩しとなり、在庫率は13.0%から12.1%に減少する。
(出所:USDA)
◆トウモロコシ世界需給
グローバルでの新穀生産量見通しは、米国が上記通り大幅減産で▲26.05百万トン減の一方で、ブラジル+7百万トン、アルゼンチン+3百万トン、中国+6百万トン等の増産見通しではあるものの、▲17.3百万トン減の1,295.38百万トンとしている。南米の作付けは半年後であるので、あくまで見込みであるが作付面積増、単収増を前提としているほか、中国も作付面積増を想定している。全般に生産量減少となる中で、飼料需要が+10.1百万トン増など需要も旺盛と見ている。結果としてグローバルの期末在庫は、▲19.4百万トン減の277.5百万トンの見通しである。需給率98.5%で今年度の供給過多から需要過多へ移行の見通し、また在庫率は21.2%となる。
(出所:USDA)
◆米国大豆需給
米国の大豆旧穀需給では、需要面で搾油を+20百万ブッシェル増、輸出を▲10百万ブッシェル減と見直し、期末在庫は、▲10百万ブッシェル下方修正の340百万ブッシェルとなった。新穀は生産量が同様に理論値ながら4,435百万ブッシェルで、旧穀比+173百万ブッシェル増となる。注目の新穀搾油需要は今年度比+120百万ブッシェル増の2,750百万ブッシェルとした。因みに搾油増により増産となる大豆油は、バイオディーゼル用が17,800百万ポンドで生産量の54%を占め、食用を上回る。また、大豆油需給で輸入を+285百万ポンド増、輸出を▲800百万ポンド減と机上でも大豆油のやり繰りに苦心していることが伺える。結果、新穀大豆の期末在庫は310百万ブッシェルで、旧穀から▲30百万ブッシェルの取り崩しとなる。在庫率は、旧穀の8.0%から6.9%に減少、一段とタイト化が進む想定である。
(出所:USDA)
◆大豆世界需給
グローバル需給では、米国生産量が+4.71百万トン増となるほか、ブラジル+6百万トン、アルゼンチン+2百万トンの増産見通しである。一方、中国の輸入量は、+2百万トン増の114百万トンとなる予想で、輸出市場に占めるシェアはパラグアイ含めた南米三国合計で69.2%、米国23.5%となり、一段と南米に頼る構図となる。結果、グローバル期末在庫は124.78百万トン、在庫率は旧穀比+1.8%増の31.1%となる見通しである。
(出所:USDA)
◆小麦のハイライト
小麦の米国需給では、実地調査ベースでの冬小麦の生産量を1,048百万ブッシェルと予想した。昨年比▲25%の減少であるが、プレーンズが主生産地である硬質冬小麦の減産が大きい。今週始まっているカンザス州でのクロップツアーでも一部で霜害あるいは病害も報告されており、全米では作付面積に占める収穫面積の比率が67.9%まで落ち込む見通しである。因みに、昨年は76.9%、一昨年は78.1%であった。これを受けて米国の新穀国内需給は、全小麦の生産量が前年比▲424百万ブッシェル、輸出向けなどの需要減を勘案しても期末在庫は762百万ブッシェル、旧穀期末在庫から▲173百万ブッシェル取り崩しとなる見通しである。期末在庫率は依然40.7%で、数字上は潤沢と言えるものの、品種により需給が大きく変化している点は要注意である。
(出所:USDA)
グローバル需給では、旧穀が主要輸出国でほぼ例外なく記録的な大豊作であったことから、新穀は反動でトレンド近くまで戻る可能性があること、また、昨今の肥料、農薬、エネルギー高を映した作付面積減可能性も含めて各国で減産見通しとなっており、合計で▲24.8百万トンの減産を予想している。一方、インドが+3百万トン増を見込むほか、中東・北アフリカでは合計で+8.5百万トン程度の増産を見ている。モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどの地中海沿岸が潤沢な降水量に恵まれたことが主因である。これら各国は小麦輸入国であり、新穀の生産量減少傾向の中、トレード量の減少に繋がると見ている。結果としてバランスシート上は、下表通り、新穀生産量減を旧穀からの繰り越しで賄い、期末在庫は275.04百万トンで、旧穀期末在庫から▲4.2百万トンの取り崩しにとどまる。新穀の在庫率は33.5%で旧穀比▲1.0%減、一方、需給率は99.5%でわずかながら需要過多となる。
(出所:USDA)
◆今後の相場展開~大豆新穀は強気、小麦は需給の弱さが若干見直される。
以上を総合すると、今月の需給報告は、小麦、大豆が強気、トウモロコシについては中立と捉えられた。弱気一辺倒に傾いていた小麦は、米国プレーンズでの旱魃の影響が予想以上に大きい。今月の需給報告は、実地調査ベースとはいえ、実施したのはカンザス、オクラホマ、テキサスの主要三州のみであり、来月以降の報告で残りの州も加わってくる形である。足元の天候推移を考慮すると、大幅な作柄改善は見込みにくく、更なる生産量の下方修正もあり得る。また、世界需給も要注意であり、まずは南半球の冬小麦作付け動向を注視したい。
大豆は、予想通り大豆油のバイオディーゼル用需要の増加を織り込んで搾油需要を上乗せした。ガロンベースでは、旧穀の18.7億ガロンから新穀で約23.4億ガロンまで上積みされる計算である。とはいえ、カナダ産菜種油、食廃油、動物油脂等を加えても今年度、来年度のバイオディーゼル混合義務量を満たす原料供給が可能であるか、疑問は依然残る。今後の搾油動向、バイオ燃料生産動向を踏まえた需給報告が更に重要となる。中長期での強気見通しは継続する。
トウモロコシは、まだ需給タイトと言える状況にまで至っておらず、今後の新穀作付け動向および結果としての6月末の作付面積報告が今後の方向性を決めよう。
5月12日気象庁発表の最新のエルニーニョ監視速報によると、ペルー沖海水温は着実に上昇しており、夏以降秋にかけてエルニーニョ現象発生確率を90%とし、発生がほぼ確実視されている。今後、各地での異常気象発生有無をモニターする重要性は増してくるだろう。
(出所:CFTC、CBOT)
※穀物価格指数=2025年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(5月13日記)
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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