2026-05-11 18:37:48

特段のサプライズではないが、改めて小麦の弱さが確認される~2026年4月度米農務省需給報告より

更新:2026/4/14

提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)

4月9日に米農務省より月例需給報告が発表された。ポイントを以下列記するが、今回は先月に続き比較的市場へのインパクトは限定的であった。

◆米国トウモロコシ需給
前月見通しから修正は無く、期末在庫は2,127百万ブッシェル、在庫率は12.9%である。3月末の四半期在庫報告を受けて国内飼料需要は堅調との判断から、飼料需要の修正は見送られた。3月20日発表の牛肥育頭数報告で、2月の導入が前年同期比+4%増となっていた点なども判断材料となっている。輸出あるいは国内エタノール需要も順調に推移との判断であった。

(出所:USDA)

◆トウモロコシ世界需給
トウモロコシのグローバル需給では、生産量がインド(+3.2百万トン)、南アフリカ(+0.8百万トン)、ロシア(+0.3百万トン)等、上方修正された。インドは同国公式統計を採用、また南アフリカは生育シーズン通して潤沢な降雨量と適度な気温推移が単収増に繋がっていると評価されている。結果として、グローバルの生産量は+3.6百万トン上方修正、期末在庫は+2.1百万トン増の294.8百万トンとなった。需給率、在庫率は各々微増の100.1%、22.6%となる。

(出所:USDA)

◆米国大豆需給
米国の大豆需給では、期末在庫は今月も前月見通しから据え置かれた。ただし、需要面で搾油需要を+35百万ブッシェル増、輸出需要を▲35百万ブッシェル減と需要内訳を修正した。搾油需要増は、引き続き好調なミール需要が支えているとしている。大豆油の増産分は食用が上方修正されており、バイオ燃料向け需要は据え置かれている。3月27日にEPA(米環境保護局)より今年度並びに来年度のバイオ燃料混合義務基準の最終版が発表され、昨年6月に公表された素案を上回る義務量となっている。現時点では、8月まで残り5か月となった今穀物年度での大豆油の急激な需要増はないと見ている模様である。来月から合わせ発表される新穀の需給で、どの程度の需要量を見るか注目される。結果、期末在庫は前月の通り350百万ブッシェル、在庫率8.2%であった。

(出所:USDA)

◆大豆世界需給
グローバル需給では、パラグアイの生産量を+0.2百万トン上方修正した以外は小幅修正にとどまり、グローバルでの生産量は、427.4百万トンとした。主要国での国内搾油需要の増加を考慮し、期末在庫は124.8百万トンで▲0.5百万トン下方修正した。貿易面での大きな修正もなく、主要輸出国の見通し並びに中国の輸入見通しも据え置きとなっている。結果、期末在庫率は▲0.2%減の29.3%となった。

(出所:USDA)

◆小麦のハイライト
小麦の米国需給は、微修正であった。デュラム小麦の輸入増による供給増と種子用需要の減少が影響して、期末在庫は、前月比+7百万ブッシェル増の938百万ブッシェルとなった。今期の需要面では輸出商談が既に6月以降の新穀に移りつつあり、旧穀の大幅上方修正は望めない状況となっているなど、今期期末在庫は、今回の需給見通しに近い数字での着地となろう。一方、今後焦点となる冬小麦新穀については、今月から発表が再開されている週間作柄レポートでは乾燥の影響で冬小麦の状況が思わしくなく、新穀生産量は今後の焦点となってくるだろう。

(出所:USDA)

世界需給では、EUあるいはロシアでの生産増が見込まれ、グローバルでは、前月から+2.0百万トン増の844.0百万トンとした。一方、需要面ではインドの食用需要落ち込みが目立ち、需要合計が▲4.7百万トン減少する見通しを立てている。トレード面では、ウクライナからの輸出減(▲1百万トン)をロシアの輸出増(+1百万トン)で埋める図式が示されている。長期化するロシアによるウクライナ侵攻でウクライナの小麦生産量は据え置きながら、輸出に滞りが出るとの見方である。結果として、期末在庫は283.12百万トンで、前月から+6.16百万トンの上方修正となった。在庫率は34.5%で+0.9%増、需給率は+0.8%増の102.9%となる。

(出所:USDA)

◆今後の相場展開~小麦需給の弱さが目立つが潜在的には強気要因が内在
以上を総合すると、今月の需給報告は大豆、トウモロコシについては中立と捉えられ、小麦はやや弱気と受け止められた。需給のみを考慮すると小麦は一段下押しされるリスクが高いが、足元は引き続き中東情勢に出口が見えず、原油相場が乱高下していることから穀物市場も振り回される展開が続いている。また、中長期には原油由来での肥料や燃料価格高騰が穀物生産のコスト増に繋がることから、今後作付けが開始される南半球での冬小麦、北半球での春作物に作付面積、単収両面からどの程度影響が出るかがポイントの一つとなろう。作付面積については2-3か月後、最終生産量は秋口以降まで答えは出ないが、少なくとも小麦やトウモロコシといったイネ科作物に影響が大きくなるリスクは内在する。

一方、大豆はEPAの発表を受けて、今後の大豆油の需要動向が鍵となることは言うまでもない。また、5月には延期となっている米中首脳会談が予定されており、中国向け大豆需要を巡る期待感が今後出てくると思われる。ただし、こちらは商談のタイミング的には、南米産大豆比較で大量の米国産を中国が買い付ける経済合理性に欠けることから、大型商談に結び付く可能性は低いと見る。

また、現在、平常状態にあるペルー沖海水温が今後上昇する確率が高まっているとの予報が日米気象当局から発出されている。エルニーニョ現象=異常気象発生と即断することはできないので、現状では、今後の海水温の推移および主要生産地域での天候推移をよく見ておく必要はある。

(出所:CFTC、CBOT)

※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(4月13日記)

檜垣 元一郎

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎

1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。

その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。

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