2026-05-11 02:23:03

米国再生可能燃料基準(2026~27年度)公表

更新:2026/4/2

提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)

米国環境保護局(EPA)より3月27日に最終の添加義務基準が発表された。本基準は昨年6月にEPAが案として発表し、公聴会等を経ての最終形であるが、昨年秋口の政府機関閉鎖などの影響を受けて最終基準の発表が遅れていたものである。
最終数字は下表の通りで(数字の単位は10億RIN=再生可能燃料識別番号、1RIN=エタノール1ガロン)、再生可能燃料全体では6月の提案から+7.5%増となっているが、大豆油需給に影響するバイオマスディーゼルは2026年度で71.2億RINから88.6億RINと+24.4%増になっている。因みに2025年度義務量比較では53.6億RINから+65.3%増となっている。また2028年以降は輸入原料由来の燃料へのRIN付与を国産原料の半分とする方針が決定されている。
因みに下表には数字としての表記はないが、三段目及び四段目の先進バイオ燃料合計と再生可能燃料合計の差分がトウモロコシ由来の従来バイオエタノール基準であり、こちらは2026年/2027年共に150億RINで据え置きであることが分かる。

(出所:EPA)

*以下数量単位はガロンに統一する。バイオディーゼルの基準量は概算で2026年度88.6億RIN=69.7億ガロン、2027年度89.5億RIN=70.5億ガロンを便宜的に使用する。

上記に表記がないが、2025年度のバイオディーゼル混合義務量は53.6億RIN=33.5億ガロンである。26年度が69.7億ガロンであるため義務量の増加分は36.2億ガロンとなる。2025年度バイオディーゼル生産量は37.3億ガロンであったので、ここから30億ガロン超の増産が必要となってくる。課題の一つとして原料調達が挙げられるが、増加分を大豆油で賄った場合といった仮説が現実的ではないので、本稿ではEPA自身が行なっている本義務基準改正に伴う影響分析に基づき、原料調達分析部分について解説を加える。

まず、昨年度実績を原料別割合で見ると、FOG(廃食油、動物性油脂等)42%、大豆油30%、菜種油15%、蒸留コーン油12%などとなっている。FOGは米国内から産出される廃油と中国/東南アジア等からの輸入合計、菜種油はごく一部米国産があるが太宗はカナダ産、コーン油はエタノール製造の副産物である。言うまでもないが大豆油は100%国内製造である。

下表はバイオディーゼル増産による原料手当てについてEPAが考察した、今年度調達可能な原料群と数字である。なお、下表ではバイオディーゼルと再生可能ディーゼルに分けて掲載しているが、混合義務量は両者合計であり、RINの扱いも共通であることから、以下合算数字で分析する。

(出所:EPA)

補足に記載の通り、本表は北米でディーゼル原料として調達可能な数字であるので、域外からの輸入あるいは食用大豆油からの転用は考慮していない。2026年度合計数字は49.9億ガロンであり、義務量である69.7億ガロンには達しない計算である。

次表は60億ガロン超のバイオディーゼル生産実現のための推察である。最上段の数字は生産能力であり、2026年度は2025年11月時点での能力、2027年度は現在建設中あるいは拡大中の能力を加えたもので、各々約90%の稼働率を前提としている。

(出所:EPA)

本表の実現には、幾つかの不確実性を伴う前提があることはEPAも認めている。連邦レベルあるいは州レベルでバイオディーゼル生産者に植物油からの製造に対する強力なインセンティブを与えることにより、生産能力の拡張を可能にする他、稼働率を最大限(90%+)に維持すること等が必要となる。
その上で、原料については大豆油40%、FOG24%、蒸留コーン油15%、菜種油21%と置いている。大豆油については搾油能力向上に加えて、南米からの大豆油輸入の可能性も言及している(2028年度以降輸入原料に対するRINの扱いが不利になることから輸入油を食用に廻し、国産大豆油をディーゼル用に転用する案を提示している)。また、カナダ産菜種油増加については、将来的な菜種増産+搾油能力増が前提となっている。一方で、カナダ産菜種油が海外産原料として取り扱われる点は同様に2028年度以降要注意である。

さて、新基準が示された後の展開であるが、原料ミックスでも示されている様に、大量のバイオディーゼル供給にはやはり大豆油がカギを握ると言って過言ではないと考える。農家票を意識した政権が大豆の需要を喚起、価格上昇を狙っていることは明白であるが、いずれにしても大豆油の需要増は間違いなく、結果として、大豆の搾油需要が伸びると考えられる。短中期には搾油業者が物理的な生産能力増強も含めて、搾油量をどの程度まで伸ばせるかがポイントの一つとなろう。一方で、EPAの分析では触れていないが、搾油量の増加はミールの供給増も意味する。輸出も含めミール需要は旺盛と伝えられているが、やはり国内の飼料需要の動向次第ながら、ミール価格の低迷は搾油増への足かせとなりかねない。

3月31日に今春の作付意向面積が発表された。報告によると大豆の作付意向は84,700千エーカーで、昨年実績比+3,485千エーカー増となっている。大豆の作付面積増は想定の範囲内であるが、市場の事前予想、あるいは2月に農務省がアウトルックフォーラムで示した推定の85,000千エーカーも下回る数字であった。但し、作付意向の調査は3月1-2週に実施されており、イランへの攻撃は開始され、原油相場は上昇を始めていたが、農家が手当てする肥料あるいは農機具の燃料価格上昇は織り込めていないタイミングである。従い、肥料価格の高騰等が更なるトウモロコシから大豆への作付け転換を促す可能性は残る。
一方で、作付面積報告を前提に昨年並みの単収が確保されても大豆の増産幅は+183百万ブッシェル程度である。仮に増産分全量が搾油に廻っても大豆油の増産は20億ポンド(≒2.6億ガロン)程度であり、不足分を埋めるには至らない。従い、今後中長期にわたり今回決定した再生可能燃料基準を満たす必要性から大豆搾油量の増加が必須となれば、大豆需給は継続的に逼迫する可能性があり、価格レベルが一段上がるリスクは大きい。

(4月1日記)

檜垣 元一郎

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎

1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。

その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。

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