2026-05-11 02:26:42

米国期末在庫に修正なし、来月以降の大豆需給に注目~2026年3月度米農務省需給報告より

更新:2026/3/17

提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)

3月10日に米農務省より月例需給報告が発表された。ポイントを以下列記するが、今回は米国期末在庫に修正がなく、世界需給も全般に小幅な修正に留まるなど、市場へのインパクトは限定的であった。

◆米国トウモロコシ需給
前月見通しから修正はなく、期末在庫は2,127百万ブッシェル、在庫率は12.9%である。輸出あるいは国内エタノール需要は順調に推移していると考えられるが、修正は加えられなかった。国内飼料需要については引き続き達成可能性について今後の推移が注目されるが、来月度報告では今月末に四半期在庫が発表される関係もあり、飼料需要について精査が加わると思われる。

(出所:USDA)

◆トウモロコシ世界需給
トウモロコシのグローバル需給では、南米生産量が見直された。アルゼンチンが直近での乾燥傾向を反映して▲1百万トン下方修正の一方で、ブラジルは二期作目の作付け遅れはあるも、作付面積増などが反映されて+1百万トン上方修正となり、結果、南米合計は変化なしであった。両国からの合計輸出見通しは修正なしであった。その他、ウクライナの生産量を同国最新統計に従い+1.7百万トン上方修正したが輸出見通しは据え置いた。生産量増に加えブラジル等での昨年度からの繰り越し在庫見直しがあり(+1.47百万トン)、結果今年度期末在庫は+3.77百万トン上方修正の292.75百万トンとなった。需給率、在庫率は各々微増の99.8%、22.5%となる。

(出所:USDA)

◆米国大豆需給
米国の大豆需給では期末在庫は前月見通しから据え置かれた。但し、需要面で搾油需要を+5百万ブッシェル上方修正、その分供給サイドは輸入で+5百万ブッシェル増を見込み、結果期末在庫の増減はなかった。搾油需要は好調なミール需要が支えているとしている。大豆油については現在までの実績からバイオ燃料向け需要を800百万ポンド下方修正しているが、農務省は補足として、今後の需要は近々発表されるバイオ燃料混合義務に関する最終決定次第であるとしている。また搾油実績から油分低下が見られ、搾油量増にも拘わらず大豆油生産量は小幅下方修正している点も、今後の需給上要注意である。輸出については中国の追加需要次第の環境は変わりなく、今回は農務省からは特段のコメントは付けられていない。結果期末在庫は前月の通り350百万ブッシェル、在庫率8.2%であった。

(出所:USDA)

◆大豆世界需給
グローバル需給ではトウモロコシ同様にアルゼンチンの乾燥傾向を反映して同国生産量を▲0.5百万トン下方修正、48.0百万トンとした。但し輸出については主要輸出国の見通しは据え置かれている。また中国の輸入見通しも112.0百万トンで据え置きとなっている。結果、期末在庫は前月から▲0.2百万トンの微減で、在庫率は29.5%で変化なしである。

(出所:USDA)

◆小麦のハイライト
小麦も米国需給は前月から修正なしであった。需要面での上方修正により、期末在庫の減少が予想されていた事から、市場には幾分弱気のインパクトとなった。小麦の年度は最終の四半期に入り、来月以降実績に基づく期末在庫の着地点が意識され始めるが、主要生産国の豊作を受けて輸出需要の大幅な増加は望み薄であり、米国需給は現状レベルでの推移が現実的であろう。但し南部プレーンズでの乾燥傾向など新穀生産量については未だ不確定要素は多く、小麦相場の見通しは新穀含めた需給に移って行くと考える。

(出所:USDA)

世界需給では豪州の最終生産量が同国政府統計に基づき▲1百万トン下方修正の36.0百万トンとした。但しこの数字でも史上3番目の大豊作である。その他ではウクライナやカザフスタンで生産量上方修正され、グローバルでは前月比微増となっている。輸出市場ではEUが域内飼料需要増から輸出を減少させる見通しであり、この分はアルゼンチンの輸出見通しを+1.5百万トン上方修正している。結果期末在庫は276.96百万トンで前月から微減であるが5年ぶりに高水準に変わりはない。在庫率は33.6%で▲0.1%減、需給率は▲0.1%減の102.1%となる。

(出所:USDA)

◆今後の相場展開~大豆需給のひっ迫が焦点となってくるか?
先月の需給報告同様に本報告も市場に大きなインパクトを与える内容ではなかった。足元は中東情勢を受けた原油市場の乱高下に影響され、穀物市場も幅を持っての上下となっている。今暫くは同様に原油市場に左右される展開となろうが、中東情勢が解決まで行かなくとも比較的平静に戻る前提で今後の穀物相場を眺める。先月の本レポートで注目点を三点挙げた。現時点の状況を付記すると、以下の通り。

@中国による米国産大豆追加買付→トランプ大統領は中国がコミットしたと豪語しているが、未だ実現せず。
A米農務省主催のアウトルックフォーラムで報告される春作物の作付面積予想→大豆面積増、トウモロコシ面積減は概ね想定の範囲内。
B米国バイオディーゼル混合義務量に関する環境保護庁の最終決定→月内と言われる最終決定待ち。

Aを除けば現時点でも注目点に変わりはない。@については月末の米中首脳会談でなんらか言及があるのか?Bは内容次第ながら強気インパクトの強さ、がポイントとなろう。特にBについては市場で織り込みが始まっており、大豆油市場では年初来の上げ相場で70セントを伺う動きとなっている。3月後半は引き続き大豆、大豆製品主導でセンチメントは上向きと予想する。

3月末には3月1日現在の四半期在庫報告、作付意向面積報告が発表され、4月以降は大豆、トウモロコシでは作付けを控えて本格的な天候相場に入って行く。今年は作付開始にあたり原油価格高騰に起因する肥料価格の上昇が農家の作付け行動に影響を与えるかが、新たな変数として要注意である。

小麦はプレーンズでの乾燥傾向が悪化しない限り、グローバルでの需給の弱さが頭を押さえ、反発はショート筋の買い戻しに留まると予想する。

(出所:CFTC、CBOT)

※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
3月11日記

檜垣 元一郎

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎

1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。

その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。

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