修正は比較的小幅に留まる。トウモロコシ需給はタイト化か緩和か?~2026年2月度米農務省需給報告より
更新:2026/2/16
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)
2月10日に米農務省より月例需給報告が発表された。2月の報告は米国生産量の見直しは無く、需要面でも修正は例年比較的小幅に留まることが多い。今年も例外ではなかった中で、最も修正が大きかった点は米国需給でのトウモロコシの輸出需要に更なる上方修正が加えられた程度である。米国需給では小麦は微調整、大豆は修正なしであった。以下グローバル含め需給報告のポイントを報告する。
◆米国トウモロコシ需給
今月の見直しでは好調な成約のペースを背景に輸出需要を+100百万ブッシェル上方修正、3,300百万ブッシェルとした。最新の週間成約報告では1月29日現在、船積済を含む輸出成約の合計は58.735百万トン、約2,312百万ブッシェルであるので、年度5か月経過時点で年間予測の70%が成約済となっている。因みに昨年2月需給報告時には66%の進捗率であった。今後約1,000百万ブッシェルの成約が必要となって来るが、南米の作柄良好が伝えられる中で、どこまで伸ばせるかがポイントとなる。一方飼料需要は据え置きであるが、1月末に牛の飼養頭数減などが報告されており、飼料需要が最終的に前年比10%超増加となるかは疑問が残る。1月度も指摘しているが、トウモロコシ米国需給は報告の数字比較で緩んでいる可能性がある事は念頭に入れておきたい。結果、期末在庫は▲100百万ブッシェル減の2,127百万ブッシェル、在庫率は13.6%から12.9%に減少する見通しである。
(出所:USDA)
◆トウモロコシ世界需給
トウモロコシのグローバル需給では、生産量は微修正に留まった。トレードは+1.4百万トン増の見通しで、米国からの輸出増の一方でウクライナが国内流通の問題から減少見通しとなる点が指摘されている。期末在庫は288.98百万トンで▲2百万トンの下方修正となり、結果需給率、在庫率は各々微減の99.6%、22.2%となる。
(出所:USDA)
◆米国大豆需給
米国の大豆需給は前月見通しから全て据え置かれた。市場は輸出需要の上方修正が期待されて期末在庫の小幅減少が予想されていたが、据え置きと言うことで数字自体はやや弱気の内容であった。しかしながら農務省は冒頭の補足説明の中で中国による追加買付の可能性、また中国の輸入量は変わらない見通しである事から、米国の輸出が増加した場合は他国のシェアが減少する事を言及している。やや異例に見えるが、発表後の2日間は市場では追加買付への期待感が高まる結果となっている。結果期末在庫は前月の通り350百万ブッシェル、在庫率8.2%であった。
(出所:USDA)
◆大豆世界需給
グローバル需給では引き続き南米での良好な天候推移を反映してブラジルの生産量見通しを+2.0百万トン、パラグアイを+0.5百万トンそれぞれ上方修正した。但しトレード面での修正はなく、中国の輸入見通しも112百万トンで据え置かれている。ブラジルでの収穫作業は序盤戦であるが、今の所順調と伝えられており、今後中国が政治的に米国産の買付に動くかが世界需給を見る上でもポイントとなろう。生産量増と一部需要増が相殺され、期末在庫は前月から+1.1百万トン上方修正の126.51百万トンとなり、在庫率は+0.3%の29.5%となる。
(出所:USDA)
◆小麦のハイライト
小麦の米国需給は小麦挽砕量の減少を反映し、国内需要を▲5百万ブッシェル下方修正、その分が期末在庫の上方修正に繋がり、期末在庫は+5百万ブッシェルの931百万ブッシェルであった。輸出などで需要面での若干の上方修正、結果期末在庫の下方修正が予想されていた事から先月に続く期末在庫の上方修正は弱気と捉えられている。
(出所:USDA)
世界需給も大幅な修正はなかったが、アルゼンチンの生産量が27.8百万トンと前月から更に+0.3百万トンの上方修正となった。他方トルコの生産量が▲0.5百万トン下方修正されており、グローバルでの生産量は前月見通しから微減となっている。需要面は東南アジアや北アフリカなどの輸入国で若干の増加が見込まれ、輸出量の増加に繋がっている。豊作見通しが確定してきたアルゼンチンの輸出見通しが+2百万トン上方修正され、EUからの輸出減を一部埋める形を見ている。結果期末在庫は▲1.24百万トン減の277.51百万トンとしている。輸出市場では今後もアルゼンチンの動向が鍵となろう。期末在庫減により在庫率は33.7%で▲0.1%減、需給率は横ばいの102.2%、となる。
(出所:USDA)
◆今後の相場展開~焦点は大豆需要と米国での春作物の作付意向。
今回の需給報告自体は大きなインパクトを与える内容ではなく、市場は次の材料を模索する動きとなる。今後のいくつかの注目点を挙げると、時系列的には@中国による米国産大豆追加買付の有無、また買い付けに出た場合の成約規模A来週開催される米農務省主催のアウトルックフォーラムで報告される今春の春作物の作付け面積予想とそれに基づく需給予測B米国バイオディーゼル混合義務量に関する環境保護庁の最終決定、等が挙げられる。いずれも大豆に関連するトッピクスであり、@とBは内容により強気インパクトを与える可能性がある。実際大豆油市場は混合義務量決定への期待に加え、米印首脳会談での合意を受けてインドによる大豆油買付増加期待も相まって期近ベースで約定最高値を更新する動きとなっている。中長期での大豆強気の見方は維持する。
小麦、トウモロコシについては基本的に需給が緩い状況が背景にあり、今暫く戻りは売られ易い環境であるが、大豆の動き次第で買い戻しの動きが強まるリスクが常に内在する。
(出所:CFTC、CBOT)
※穀物価格指数=2025年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(2月12日記)
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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